エーザイ株式会社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.
エーザイ創製の抗がん剤「レンビマ®」に関してがん領域における戦略的提携に合意

  • ●チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ」の単剤療法ならびに抗PD-1抗体「キイトルーダ®」の併用療法について、複数のがん種に対する共同開発・共同販促を行います。
    ●「レンビマ」に関する売上収益はエーザイが計上し、開発およびマーケティング費用ならびに粗利益を、両社で折半します。
    ●「レンビマ」と「キイトルーダ」の腎細胞がんに対する併用療法については、米国FDAからブレイクスルーセラピーの指定を受けています。本提携により、両社の共同開発を他の6がん種における11の適応取得に向けて拡大します。
    ●「レンビマ」に関する豊富なリアルワールドエビデンスを有するエーザイと、強固なコマーシャル・メディカル体制を有するMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.が、現在取得している適応に加え今後取得をめざす適応において、全世界の患者様アクセスを促進します。


エーザイ株式会社
Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(NYSE:MRK、Chairman and CEO:Kenneth C. Frazier、北米以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)を全世界で共同開発・共同販促する戦略的提携について合意したことをお知らせいたします。本契約に基づき、両社は、「レンビマ」の単剤療法、ならびにMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における、共同開発と共同販促を行います。

「レンビマ」に関する単剤療法ならびに併用療法に関するグローバルの売上収益はエーザイが計上し、両社は粗利益を折半します。「レンビマ」は、甲状腺がんに対する単剤療法および腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で承認を取得しており、さらに肝細胞がんに対する単剤療法について、日本、米国、欧州、中国などにおいて承認申請を行っています。
 腎細胞がんを対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」あるいはエベロリムスとの併用療法に関する臨床第Ⅲ相試験(307試験)をエーザイが実施中です。さらに、進行性または転移性腎細胞がんの適応に対する「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法について、2017年12月に米国食品医薬品局(FDA)より、ブレイクスルーセラピーの指定を受けています。本指定は両社が共同で実施中の複数の固形がんを対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験(111試験/KEYNOTE-146試験)の中間結果に基づくものです。子宮内膜がんと腎細胞がんを対象とする中間結果では、治療歴やPD-L1発現の有無など患者様背景に関わらず奏効率における顕著な相乗効果が示唆されています。

本提携により、エーザイとMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は、「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法に関して、6がん種(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)における治療歴に応じた11の適応取得を目的とした臨床試験に加え、複数のがん種に対するバスケット型試験を共同して速やかに開始します。
 エーザイ株式会社の代表執行役CEOの内藤晴夫は、「“Cancer Evolution”の時代において、「レンビマ」のポテンシャルを最大化し、革新的治療法の創出を一日も早くもたらすため、抗PD-1抗体「キイトルーダ」を有するメルクとこのたび提携しました。これまで治癒が見込めなかった難治性がんに対しても、新たな選択肢を提供することで、患者様とそのご家族のベネフィット向上により貢献してまいります。」と述べています。

Merck Research LaboratoriesのPresidentであるDr. Roger M. Perlmutter は、「当社はエーザイと共に、現在の適応症に対する「レンビマ」の価値を最大限に引き出すとともに、「キイトルーダ」との併用により、さらに幅広い種類のがんに対する追加承認をめざします。「キイトルーダ」と「レンビマ」との併用療法における相乗効果は、強固な科学的根拠に裏付けられています。また、私たちは、すでに腎細胞がんに対するブレークスルーセラピー指定を米国FDAより受領しています。私たちは、今回の提携を通じて、がん領域のポートフォリオを拡大することにより、全世界でより多くのがん患者様を支援できる機会が得られる事をうれしく思います。」と述べています。

「レンビマ」に関する売上収益はエーザイが計上し、開発およびマーケティング費用ならびに粗利益を、両社で折半します。
 本提携により、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.はエーザイに対し、契約一時金として3億米ドル(約320億円、1ドル=106円換算)、特定のライセンスオプション権行使に対して2020年度までに最大6.5億米ドル(約690億円)を支払います。また、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.はエーザイに対し、研究開発費の償還として4.5億米ドル(約480億円)を支払います。さらに、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は、開発マイルストンとして最大3.85億米ドル(約410億円)および販売マイルストンとして最大39.7億米ドル(約4,210億円)を支払います。すべての開発・販売マイルストンを達成した場合には、契約一時金、ライセンスオプション権行使に対する一時金を含め、最大で総額57.6億米ドル(約6,110億円)が、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.からエーザイに支払われる予定です。
なお、本提携に伴うエーザイの業績への影響は、エーザイが本日公表の平成30年3月期(平成29年4月1日~平成30年3月31日)の通期業績予想(IFRS)の修正に関するお知らせに反映しています。

以 上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. Relations

    Pamela Eisele: +1-(267) 305-3558
    Ann Bush: +1-(908) 740-6677

<参考資料> 

1. ブレイクスルーセラピー指定の基となる「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法による臨床第Ib/II相試験(111試験/ KEYNOTE-146試験)について
 米国および欧州(EU)で実施されている111試験/ KEYNOTE-146試験は、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、非盲検の臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験です。臨床第Ⅰb 相パートでは、最大耐性量の決定を主要目的とし、標準治療後に進行した、または適切な治療法がない切除不能な固形がん(子宮内膜がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、尿路上皮がん)の患者様を対象にしています。臨床第Ⅱ相パートでは、0-2レジメンの全身化学治療歴のある固形がんの患者様を対象に、臨床第Ⅰb 相パートの結果により決定した推奨用量を投与します。主要評価項目として投与24週時点の奏効率、副次評価項目として奏効率、病勢コントロール率、無増悪生存期間、奏効期間などが評価されます。現在、本試験は臨床第Ⅱ相パートが進行中であり、特に子宮内膜がんコホートへの症例登録を拡大しています。
 本試験の進行性または転移性腎細胞がんコホートについて、2017年3月1日時点における解析(主治医判定、n=30)1の結果、第Ⅱ相パートの主要評価項目である治療後24 週間時点の奏効率は63%(95% 信頼区間:CI=44-80)であり、93%(n=28/30)の患者様において治療開始時からの腫瘍径の縮小が認められました。腫瘍縮小効果は治療歴の有無、PD-L1 発現の有無にかかわらず認められました。本コホートにおいて高頻度に観察された有害事象(上位6 つ)は、下痢、疲労、甲状腺機能低下症、口内炎、高血圧、悪心でした。
 同じく子宮内膜がんコホートについて、2016年12月1日時点の解析(n=23)2の結果、治療後24 週間時点の奏効率は、独立画像判定では52.2%(95% CI=30.6-73.2)、主治医判定では47.8%(95% CI=26.8-69.4)でした。また、マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability:MSI)の状態に関わらず腫瘍の縮小が観察されました。傷ついた遺伝子の修復機能異常のバイオマーカーであるMSIが低頻度または陰性となる患者様は、一般的に抗PD-1抗体が効きにくいとされています3。なお、本コホートにおいて高頻度に観察された有害事象(上位5つ)は、高血圧、疲労、関節痛、下痢、悪心でした。
なお、日本において同様の臨床第Ⅰb 相試験(115試験/KEYNOTE- 523試験)が切除不能な固形がんを対象として進行中です。さらに、日本と米国において肝細胞がんを対象とした併用療法に関する臨床第Ⅰb 相試験(116試験/KEYNOTE-524試験)が進行中です。

 

2. 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について
 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生、腫瘍悪性化、および腫瘍免疫調整に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、エーザイ創製の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。
 現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など40カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。
さらに「レンビマ」の肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国、欧州 (同年7月)、中国(同年10月)、および台湾(同年12月)などにおいて承認申請を行いました。
本剤について、進行中の主な臨床試験は以下の8本です。
・腎細胞がん(一次治療)を対象とした、「キイトルーダ」あるいはエベロリムスとの併用療法に関する臨床第Ⅲ相試験(307試験)が、日本、米国、欧州において進行中です。
・甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験(308試験)が、中国において進行中です。
・胆道がんを対象としたフェーズⅡ試験 (215試験)が、日本において進行中です。
・RET 転座を有する非小細胞肺がんを対象としたフェーズⅡ試験(209試験)が、日本、米国、欧州、アジアにおいて進行中です。
・「キイトルーダ」との併用による固形がん(腎細胞がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験(111試験/KEYNOTE-146試験)が、米国、欧州において進行中です。中間結果に基づき、進行性または転移性腎細胞がんの適応に対する併用療法について、米国FDAより、ブレイクスルーセラピーの指定を受けています。
・「キイトルーダ」との併用による固形がん(腎細胞がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb相試験(115試験/KEYNOTE- 523試験)が、日本において進行中です。
・「キイトルーダ」との併用による肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb 相試験(116試験/KEYNOTE-524試験)が、日本と米国において進行中です。
・ ニボルマブとの併用による肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb 相試験が、日本において進行中です。

 

3. エーザイ株式会社について
 エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する 「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「がん」「神経領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
 また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。
 エーザイ株式会社の詳細情報は、http://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

4. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.について
 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は1世紀以上にわたり、バイオ医薬品のグローバルリーダー企業として人々の生命を救い、生活を改善するために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの製造に取り組んできました。Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、米国およびカナダ以外の地域ではMSDの名称で知られています。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じてお客様と協力し、世界140カ国以上で事業を展開して革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は今も、がん、生活習慣病、新種の動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染病をはじめとして、世界中で人々の命やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。詳細については当社ウェブサイトwww.merck.com やMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のTwitter、Facebook、YouTube、LinkedInをご参照ください。

 

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の将来に関する記述
 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(以下、当社)が発行した本リリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、当社の経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

  

 リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、当社による将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対する当社の特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。

  

 当社は、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、当社に関するForm 10-Kの2017年度年次報告書およびSECのインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できる米国証券取引委員会(SEC)に対するこの他の書類で確認できます。

 

1. Lee CH, et al. A Phase 1b/2 Trial of Lenvatinib + Pembrolizumab in Patients With Renal Cell Carcinoma. ESMO Congress Abstract, 2017; #847O
2. Makker V, et al. A phase Ib/II trial of lenvatinib (LEN) plus pembrolizumab (Pembro) in patients (Pts) with endometrial carcinoma. ASCO Meeting Abstract, 2017; #5598
3. Dung T. Le. et al, PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency, The New England Journal of Medicine 372:2509-2520, 2015.