エーザイとPurdue Pharma、「レンボレキサント」とゾルピデム徐放性製剤の実薬対照試験で良好なトップライン結果を取得不眠障害に対する臨床第Ⅲ相試験を含む複数の臨床試験結果について

エーザイ株式会社
Purdue Pharma L.P.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とPurdue Pharma L.P.(本社:米国コネチカット州、President and CEO:Craig Landau、以下 Purdue Pharma)は、このたび、レンボレキサントの複数の臨床試験において、良好なトップライン結果を得たことをお知らせします。
 レンボレキサントは、睡眠と覚醒を調整する研究開発中の薬剤であり、複数の睡眠障害を対象とした臨床試験が進行中です。

臨床第Ⅲ相試験であるSUNRISE 1試験(304試験)の速報結果において、レンボレキサントは、評価した睡眠に関わる全てのパラメータについて、対照薬であるゾルピデム酒石酸徐放性製剤(以下、ゾルピデム徐放性製剤)およびプラセボに対して、主要評価項目および主な副次評価項目を達成しました。
 SUNRISE 1試験は、睡眠維持困難を伴う55歳以上の不眠障害患者様を対象とした試験です。本試験は、睡眠ポリグラフ検査法によるデータセットを用いて、特に高齢者における主訴である就床から入眠までの時間(睡眠潜時:主要評価項目)、および夜間後半部分の中途覚醒時間を含む睡眠維持時間のベースラインからの変化量(副次評価項目)などを、実薬との比較対照により評価した初めての臨床第Ⅲ相試験です。本試験の結果、レンボレキサント(5mg、10mg)は、主要評価項目ならびに主な副次評価項目について、ゾルピデム徐放性製剤(6.25mg)およびプラセボに対して有意に優れていることが検証されました。
 本試験における有害事象による中止率は、レンボレキサント群とプラセボ群において同様でした。本試験のレンボレキサント群で観察された主な有害事象は、頭痛と傾眠でした。なお、本試験結果の詳細な内容は、今後、2018年内の学会等で発表する予定です。

また、臨床第Ⅰ相試験(108試験)では、レンボレキサントについて、55歳以上の健康成人を対象に、アラームによる夜間覚醒時および翌朝起床後の姿勢安定性、注意力および記憶力の評価に加えて、中途覚醒後、再び眠りにつくまでの時間も評価しました。本試験の結果、レンボレキサント(5mg、10mg)群は、夜間覚醒時の姿勢安定性(主要評価項目)について、ゾルピデム徐放製剤6.25mg群に対して統計学的に有意に優れていることが示されました。本試験のレンボレキサント群で、2人以上で観察された有害事象は頭痛でした。

レンボレキサントの臨床試験におけるPrincipal InvestigatorでNational Sleep Foundation の 前Chairman of the Board でもあったRussell Rosenberg, Ph.D, D.ABSMは「不眠の問題を抱える患者様を約30年間治療してきた臨床医および研究者として、不眠の治療は、患者様がぐっすり眠れ、かつ、すっきり目覚められて初めて治療が成功したと言えます。また私は、患者様に不眠障害の治療を説明する上で、入眠と睡眠維持の利点のみならず、翌朝の持ち越し効果などのリスクに関しても説明することが重要と考えます。これらの試験は、すっきりとした目覚めが難しい高齢の患者様にとって、とりわけ重要であると考えます。」と述べています。

上記の2試験は、最近新たに蓄積された臨床第Ⅰ相試験(106試験)の良好な結果を含むレンボレキサントに関する科学的知見をさらに補強するものです。106試験は、成人と高齢者を対象に、ゾピクロン群(陽性対照)、プラセボ群を対照として、公道における自動車運転能力により、薬剤の潜在的な翌朝の持ち越し効果を評価した試験であり、主要評価項目を達成しました。本試験のレンボレキサント群で観察された主な有害事象は、傾眠と頭痛でした。
108試験と106試験の詳細な結果については、2018年6月5日より、米国メリーランド州ボルチモアで開催されるSLEEP 2018(米国睡眠学会第32回年次集会)において発表を予定しています。

エーザイニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「レンボレキサントを通じて、睡眠障害でお困りの患者様に、夜間中途覚醒を改善し、さらに起床後はもちろん、夜中に目覚めたとしても、支障をきたさない、睡眠と覚醒を調整する薬剤をお届けすることができると考えています。エーザイとPurdue Pharmaの研究者は、特にご高齢の方にとって、転倒や自動車事故のリスクについての不安を解決する、睡眠障害治療のより良い選択肢を提供できるように挑戦してきました。」と述べています。

また、Purdue PharmaのPresident 兼CEOであるCraig Landau, M.D.は、「私たちは、レンボレキサントを新しい治療薬として、睡眠障害の患者様にお届けできる自信を深めています。私たちは、この新しい治療薬を患者様にお届けするために、エーザイとのパートナーシップを通じて、引き続き、研究開発および製品化に注力していきます。」と述べています。

エーザイ創製のレンボレキサントは、脳内の覚醒中枢の活性化によって産生されるオレキシンの働きを抑制する不眠障害治療剤です。レンボレキサントは、患者様が眠れないという根本原因に直接的に作用すると考えられています。オレキシン神経伝達に作用するレンボレキサントは、外部刺激による覚醒能力を減退することなく、睡眠と覚醒を調整します。レンボレキサントは、エーザイとPurdue Pharmaが共同開発を行っており、不眠障害の試験に加えて、アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした第Ⅱ相試験臨床試験が進行中です。

両社は、レンボレキサントの開発研究を通じて、不眠障害およびアルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)という新たなアンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料>

1. レンボレキサント(開発コード:E2006)について

 レンボレキサント (開発コード:E2006)は、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。不眠障害では、オレキシンが関与する睡眠・覚醒の制御機構が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があり、当社ではレンボレキサントを不眠障害治療剤として臨床第Ⅲ相試験での開発を進めています。加えて、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

 

2. 不眠障害について

 人口調査によると、全世界において、予想より多くの睡眠障害の患者様が報告されています。不眠障害は、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴です。睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、疲労、集中困難、そして易刺激性を引き起こす可能性があります。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、約10%の方が不眠障害の症状を有しています1、2、3

 動物および人での試験結果によると、睡眠と炎症マーカーの間には関連性がある事が示唆されています4。また、睡眠と死亡率、多くの病気、病気のリスク因子に関しても、7-8時間の最適な睡眠時間と関連があると言われています5。不眠症について、女性は男性に比べて、約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります6

 高齢者に関しても、不眠症の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠症に至ることがあります5

 不眠症の原因は、生物学的、心理学的、社会的要因が組み合わさっています1。慢性的な睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中のみならず、気分や行動にも悪影響を含む、広い範囲での健康への影響との関連性が示唆されています4

 

3. SUNRISE 1試験(304試験)について

 SUNRISE 1試験は、北米と欧州において、55歳以上の不眠障害患者様約1000人(全症例の約45%は65歳以上)を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、実薬比較、並行群間比較臨床第Ⅲ相試験です。本試験では、レンボレキサント 5mg、10mg、ゾルピデム徐放性製剤6.25mg、またはプラセボが投与されました。主要評価項目として、1カ月投与後における睡眠潜時を、睡眠ポリグラフ検査法を用いて、レンボレキサント両投与群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、プラセボ群との比較におけるレンボレキサント両群の平均睡眠効率について、またゾルピデム徐放製剤群との比較におけるレンボレキサント両群の1カ月治療の最後の2日間における睡眠時間後半部分の中途覚醒時間を、睡眠ポリグラフ検査法を用いて客観的に評価しました。

 

4. 108試験について

 108試験は、米国において、55歳以上の健康な成人56人を対象に、アラームによる夜間覚醒時および翌朝起床後の、レンボレキサントの姿勢安定性および認知機能への影響を評価する、無作為化、二重盲検、4期クロスオーバー、並行群間比較臨床第Ⅰ相試験です。本試験では、レンボレキサント 5mg、10mg、ゾルピデム徐放性製剤6.25mg、またはプラセボが単回投与されました。主要評価項目として、ゾルピデム徐放製剤群との比較におけるレンボレキサント群の投与後約4時間後の夜間覚醒時の重心動揺計による姿勢安定性を評価しました。

 

5. 106 試験について

 106 試験は、公道での自動車運転能力を評価する、健康な成人および高齢者48人を対象に実施された、無作為化、二重盲検、プラセボおよび実薬対照、4 期クロスオーバー試験、並行群間比較臨床第Ⅰ相試験です。本試験では、レンボレキサント 2.5mg、5mg、10mg、またはプラセボが8日連続して就寝直前に投与されました。陽性対照薬としてのゾピクロン7.5mgは1日目および8日目に投与され、残りの6日間はプラセボが投与されました。本試験では、主要評価項目として、側線に沿って運転したときの車体の側線からのずれの標準偏差(Standard Deviation of Lateral Position: SDLP)を指標に自動車運転能力を朝に評価しました。

 

6. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、http://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

7. Purdue Pharma L.P.について

 Purdue Pharma L.P.とその米国における関連会社は、コネチカット州スタンフォード市に本社を置く、株式非上場企業です。Purdue Pharmaは、患者様とプロバイダーに、革新的な医薬品を提供することを目的とするネットワーク関連企業の一翼を担っています。当社のリーダーシップおよび従業員は、医療や生活にプラスの影響を与える高品質な製品や教育リソースの提供を通じて、医療従事者、患者様および介護者の方々に貢献することをめざしています。Purdue Pharmaの詳細情報は、http://www.purduepharma.com/をご覧ください。

         

 

  1. 1. Roth T. Insomnia: definition, prevalence, etiology, and consequences. J Clin Sleep Med. 2007; 3(5 Suppl): S7–S10
  2. 2. Ohayon MM, Reynolds CF 3rd. Epidemiological and clinical relevance of insomnia diagnosis algorithms according to the DSM-IV and the International Classification of Sleep Disorders        (ICSD). Sleep Med. 2009; 10(9): 952–960.
  3. 3. American Sleep Association. Sleep and Sleep Disorder Statistics. Accessed March 2, 2018.

https://www.sleepassociation.org/about-sleep/sleep-statistics/.

  1. 4. Ferrie JE et al. Sleep epidemiology—a rapidly growing field. International Journal of Epidemiology, Volume 40, Issue 6, 1 December 2011, Pages 1431–1437,  https://academic.oup.com/ije/article/40/6/1431/804651
  2. 5. Trenell MI et al. Sleep and metabolic control: waking to a problem? Clin Exp Pharmacol Physiol 2007, vol. 34 (pg. 1-9)
  3. 6. Avidan AY, Zee PC. (2006). Handbook of Sleep Medicine (pp.  36-69). Philadelphia, PA: Lipincot Wiliams & Wilkins.