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- 2018年1月9日
エーザイ株式会社
MSD株式会社
[東京、ニュージャージー・ケニルワース] エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(NYSE:MRK、米国とカナダ以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)とMSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法による進行性または転移性腎細胞がんの適応に対して、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピーの指定を受けましたのでお知らせします。
「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法の開発は両社提携のもとで実施しています。なお、本指定は、「レンビマ」については2回目、また「キイトルーダ」については12回目のブレークスルーセラピー指定となります。
ブレイクスルーセラピーとは、重篤なあるいは命にかかわる疾患に関する薬剤の開発および審査の促進を目的とした米国FDAの制度です。この指定を受けるためには、一つ以上の臨床的に重要な評価項目において、既存の治療法と比較し、当該薬剤の顕著な改善を示す予備的臨床エビデンスが必要です。ブレイクスルーセラピーの指定を受けることのベネフィットとしては、効率的な開発計画のための助言、審査迅速化のための当局内担当者へのアクセス、そして、プライオリティーレビューのみならず、審査資料の段階的提出・審査(ローリング・サブミッション)などの制度が利用可能になります。
今回のブレイクスルーセラピーの指定は、臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験(111試験)のうち、腎細胞がんコホートに関するものです1。固形がんを対象とした111試験は、「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、非盲検の臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験であり、米国および欧州(EU)で実施されています。
エーザイ株式会社の執行役 オンコロジービジネスグループ チーフメディスンクリエーションオフィサーである大和隆志博士は、「進行性または転移性の腎細胞がんの患者様における「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法に対するFDAによるブレークスルーセラピーの指定は、我々を大変勇気づけるものです。患者様を第一とするヒューマン・ヘルスケア企業として、新たな治療選択肢を必要とする患者様に提供できるように、臨床試験を迅速に進めるべく、MSDおよびFDAと緊密に協力していきます。」と述べています。
MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーの Dr. Roy Baynesは、「進行性または転移性腎細胞がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法へのFDAのブレークスルーセラピー指定は、同疾患の患者様に対する、潜在的に重要な治療選択肢提供に向けた取り組みの加速につながります。私たちは、がんとその治療に関して「キイトルーダ」の潜在能力を完全に把握することに全力を注いでおり、エーザイ株式会社との提携は、より多くの患者様を支援するという私たちのコミットメントを実現するための取り組みの一つです。」と述べています。
以上
本件に関する報道関係お問い合わせ先
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エーザイ株式会社
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MSD株式会社
111試験について
米国および欧州(EU)で実施されている111試験は、「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、非盲検の臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験です。臨床第Ⅰb相パートでは、最大耐性量の決定を主要目的とし、標準治療後に進行した、または適切な治療法がない固形がん(腎細胞がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)の患者様を対象に、「レンビマ」は24mg/日の用量を経口投与し、「キイトルーダ」は3週ごと200mgを静脈内投与します。なお、「レンビマ」は患者様の状態により適宜減量します。臨床第Ⅱ相パートでは、化学療法による0-2レジメンの全身化学治療歴のある固形がんの患者様を対象に、臨床第Ⅰb相パートの結果、推奨用量に決定した「レンビマ」20mg/日、「キイトルーダ」3週ごと200mgを投与します。臨床第Ⅱ相パートの主要評価項目として、投与24週時点の奏効率、副次評価項目として奏効率、病勢コントロール率、無増悪生存期間、奏効期間などが評価されます。現在、本試験は臨床第Ⅱ相パートが進行中であり、特に子宮内膜がんコホートへの症例登録を拡大しています。
腎細胞がんについて
腎がんの罹患者数は、2012年において世界で約33万8千人、米国では約5万8千人、欧州では約11万5千人、日本では約1万7千人と推定されています2。米国においては、2017年の新規患者数は約6万3千990人になると推定されています3。腎細胞がんの患者様のうち、約25-30%が診断時に転移性病変を有していると推定されています4。
腎細胞がんは、腎臓にできる悪性腫瘍の約90%以上を占め5、また、腎尿細管内の悪性細胞に由来する病気です3。腎細胞がんと診断される平均年齢は64歳であり、また女性より男性に多く発症するとされています6。手術が難しい進行性や転移性の腎細胞がんでは、分子標的薬による治療が標準ですが7、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病です3。
「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について
「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、エーザイ創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。
現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など40カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。
さらに本剤は、肝細胞がんに係る適応について、標準治療薬であるソラフェニブと有効性と安全性を比較する国際共同臨床第Ⅲ相試験(304)試験において、全生存期間について、ソラフェニブに対する統計学的な非劣性を証明し、主要評価項目を達成しました。「レンビマ」の肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国、欧州(同年7月)、中国(同年10月)、および台湾(同年12月)において承認申請を行いました。
なお、本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいは「キイトルーダ」との併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験(307試験)が進行中です。
「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)について
「キイトルーダ」は、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するリガンドPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗PD-1抗体です。「キイトルーダ」はPD-1(受容体)に結合してこの受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、腫瘍細胞のPD-1経路を介する抗腫瘍免疫応答の阻害を解除します。
「キイトルーダ」は、国内で根治切除不能な悪性黒色腫、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌の効能・効果で承認を取得しており、2017年2月15日に発売を開始しました。さらに、乳がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。
「キイトルーダ」は、米国を含む50カ国以上で承認を取得しており、世界では650以上の臨床試験において30種類以上のがんの検討が行われています。
エーザイ株式会社について
エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。
エーザイ株式会社の詳細情報は、http://www.eisai.co.jpをご覧ください。
MSDについて
MSDは1世紀以上にわたり、バイオ医薬品のグローバルリーダー企業として人々の生命を救い、生活を改善するために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの製造に取り組んできました。MSDはMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が各国(米国とカナダ以外)で事業を行う際に使用している名称です。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じてお客様と協力し、世界140カ国以上で事業を展開して革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。MSDは今も、がん、生活習慣病、新種の動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染病をはじめとして、世界中で人々の命やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebook、YouTubeをご参照ください。
- 1
Lee CH, et al. A Phase 1b/2 Trial of Lenvatinib + Pembrolizumab in Patients With Renal Cell Carcinoma. ESMO Congress Abstract, 2017; #847O
- 2
GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/
- 3
“Cancer Stat Facts: Kidney and Renal Pelvis Cancer.” Surveillance, Epidemiology, and End Results Program (SEER), National Cancer Institute, https://seer.cancer.gov/statfacts/html/kidrp.html.
- 4
Gupta, Kiran. “Epidemiologic and Socioeconomic Burden of Metastatic Renal Cell Carcinoma (MRCC): A Literature Review.”Cancer Treatment Reviews, vol. 34, no. 3, May 2008, http://www.cancertreatmentreviews.com/article/S0305-7372(07)00187-9/fulltext.
- 5
Eble J.N, et al. Pathology and Genetics of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs, World Health Organisation classification of tumours. (International Agency for Research on Cancer, Lyon, France in 2004)
- 6
“What Are the Key Statistics About Kidney Cancer?” About Kidney Cancer, American Cancer Society, Aug. 2017, https://www.cancer.org/cancer/kidney-cancer/about/key-statistics.html.
- 7
Stukalin, Igor. “Contemporary Treatment of Metastatic Renal Cell Carcinoma.”Oncology Reviews, vol. 10, no. 1, 2016, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4943094/#.