人権の尊重

エーザイネットワークの取組み

企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)を実現するためのビジネス活動のグローバルな社内規範として定めた「エーザイネットワーク(ENW)企業行動憲章」は、いかなる国や地域において事業を展開する場合にも人権を尊重することを明示しています。ENW企業行動憲章に則り、人権尊重に根ざした事業活動を行っていくために、当社は20193月に「エーザイネットワーク(ENW)人権方針」を制定しました。ENWは、人権方針に則り、企業の人権尊重責任を果していく活動を展開しています

人権方針の策定

企業は、従来にまして人権尊重に深くコミットし、貢献することが求められます。当社は、国際基準に沿った人権についての取り組みを進めるため、2018年10月に人権に関係する様々な関連部署の担当者で構成される人権プロジェクトを発足させました。人権方針は、OECD多国籍企業行動指針等が示すグローバル企業に求められる国際的なガイドラインに基づくとともに、自社の顕在的・潜在的人権リスクを検討・分析し、社外専門家の助言を受けるプロセスを経て作成されたもので、業務執行の最高意思決定機関である執行役会の承認と取締役会の了承を得て、2019年3月に発行されました。

人権方針において、エーザイは「世界人権宣言」、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、「経済、社会的及び文化的権利に関する国際規約」および国際労働機関の「労働における基本原則及び権利に関する宣言」を尊重し、国連グローバル・コンパクト署名企業に求められる10原則を支持するとともに、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権デュー・デリジェンスの取り組みを実施していくことを表明しています。また、サプライヤーを含めたビジネス・パートナーにも方針の遵守への期待を表明しています。

エーザイネットワーク(ENW)人権方針

ガバナンス体制

人権方針に基づく人権尊重の活動を行うために、組織横断型の「ビジネスと人権」プロジェクトを設置しました。本プロジェクトは、各組織で活動を行うワーキンググループとその活動をリードするプロジェクト管理事務局(サステナビリティ部、総務・環境安全部、人財開発本部、コンプライアンス・リスク管理推進部の担当メンバー)から構成されます。取組みの進捗は、人権方針運用責任者のチーフタレントオフィサー、チーフコンプライアンスオフィサー、総務・環境安全担当執行役、ステークホルダーコミュニケーション担当執行役で構成される「ビジネスと人権」運営委員会に報告し、指示を受けます。

エーザイには、1980年に「人権啓発推進委員会」が設置されており、主に国内における差別、ハラスメントなどの人権問題に対する啓発活動を中心に扱ってきました。「ビジネスと人権」運営委員会は、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づくグローバルな人権尊重のトレンドに迅速に対応するために新しく設置された委員会です。

人権デュー・デリジェンス

当社は、2018年度にリスク評価を実施して、エーザイの事業活動に関係する優先度の高い人権課題を抽出しました。人権問題の発生可能性とその影響度を指標にして、医薬品業界におけるこれまでの人権問題の発生事例を分析した結果、「医薬品アクセス」、「患者様の人権」、「臨床試験参加者の人権」、「製品の安全性・品質」、「サプライヤーを含めた取引先の人権」、「倫理的なマーケティング」を当社の事業活動に関係する重要な人権課題として位置付けました。

これらの課題について、関連する組織が業務に関係する潜在的な影響のリスク評価を行い、公表されている先行好事例とのギャップ分析から、「サプライヤーを含めた取引先の人権」取り組むべき優先課題としました。

また、当社の主要なステークホルダーである患者様と生活者の皆様の人権に対しては、「医薬品アクセス」が重要な課題であると認識しており、継続して改善を推進しています。従業員の人権については、ディーセント・ワークのための環境や制度の整備に取り組んでいます。

2019年度は、人権方針の定める主要なステークホルダーに対して、表に示されるような重点課題の特定とリスク軽減の取り組みを行いました。

次年度の計画では、引き続き「サプライチェーン上の人権課題」、「医薬品アクセス」改善に重点的に取り組むとともに、従業員の人権については、LGBTへの対応を予定しています。

2019年度の人権課題への取り組み

※左右にスクロールできます

ステークホルダー重点課題対応

患者様と生活者の皆様

医薬品アクセス改善 

ーリンパ系フィラリア症蔓延国へのDEC錠の提供(2020年3月末までに28カ国に19.9億錠を供給)と疾患啓発活動*1

ー低中所得国における非感染性疾患の予防・診断・治療へのアクセス向上を目的としたIFPMAのグローバルイニシアティブであるAccess Acceleratedへの継続参画

ーイベント・講演会による感染症の啓発活動支援*2

従業員

・健康維持・増進活動の推進*3

  

・治療と仕事の両立支援*3

ー健康診断100%受診、全事業所内禁煙、ヘルスリテラシーの向上を推進する「エーザイ健康宣言」を発効

ー2020年2月「健康経営優良法人」大規模法人部門に3年連続で選定される

ーがんなどの病気になった社員を対象に、闘病しながら就労できる環境を整備する「復職支援プログラム」を設立。「治療と仕事の両立支援ガイド」を作成

取引先様

サプライチェーンにおける人権尊重・労働環境

ー取引先様の人権・労働安全、環境への配慮を含むサステナビリティ評価を行うため、組織横断型のサステナブル調達プロジェクトを設立し取り組みを開始

ー評価システムとしてEcoVadisを採用

教育・研修

企業の人権尊重責任を果たしていくためには、人権尊重が企業文化として定着することが重要と考えています。

2019年度は、以下の教育・研修活動により、人権尊重の浸透を図りました。

  • 経営トップ層対象「人権」研修講演会開催

  • 役員、従業員対象「ビジネスと人権」e-learningの実施
  • 従業員対象人権啓発研修の実施
  • 新入社員、組織長対象の階層別人権啓発研修の実施
  • 「人権の広場」の電子配信
  • 人権標語募集

人権の尊重が企業文化として定着するためには、経営トップ層の理解が必要であることから、取締役、国内外の執行役を対象として、「国際社会で必要とされる人権尊重責任」をテーマにして、社外専門家による研修講演会を実施し、40名の取締役および執行役のうち36名が参加しました。また、企業の人権尊重責任について理解することを目的として、国内の従業員を対象とした「ビジネスと人権」についてのe-learningを実施しました。

総務・環境安全担当執行役を委員長とする人権啓発推進委員会は、人権啓発研修、「人権の広場」の電子配信、人権標語募集などの啓発活動を実施しています。2019年度は、「国際規則に準じた新たな人権体制を構築し、人権尊重責任を果たせるグローバル企業を目指す」を基本方針としました。これまで重視してきた職場における差別やハラスメント等の防止に加えて、国際規範である「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく社の取り組みを浸透させることを目的とします。人権啓発研修では、「国際基準の人権」をキーワードとして「グローバルにおける人権課題」の紹介と、「人権デュー・デリジェンスの仕組み」について講演を行いました。国内のENWを対象に人権啓発研修を29回開催し、6,220人が参加しました。また、新入社員や新任組織長を対象とした階層別研修のプログラムにも人権研修を組み入れています。

英国現代奴隷法への対応

英国で施行された英国現代奴隷法(UK Modern Slavery Act 2015)に基づき、Eisai Europe Ltd.は、20196月にステートメントを開示しています。

Eisai's Modern Slavery and Human Trafficking Statement

サプライチェーンにおける人権

エーザイは、「ビジネス・パートナーのための行動指針」のなかで、国際的に認知されているすべての人権を尊重することをサプライヤーを含むビジネスパートナーに求めています。また、ビジネス・パートナーまたはそのサプライチェーンにおける、児童労働、強制労働、人身売買、奴隷労働および人の尊厳と敬意の保持に反するいかなる行為も許容しない姿勢を明確にしています。

当社は、取引先様とともに、社会・環境における共有価値の向上を図ることを目的として、持続可能な調達への取り組みを進めています。児童労働、強制労働のみならず、労働、安全衛生、環境配慮等のサステナビリティ要件も、直接的、間接的に人権に関係していることから、取引先様における人権課題を抽出するにあたっては、取引先様のサステナビリティ要件を可能な限り客観的に把握・評価することが重要になります。また、特定されたリスクを軽減していくためには、評価結果に基づいた取引先様との親密なエンゲージメントを行う必要があります。

2018年度は、国内工場が調達する製品の主要な一次サプライヤーに対して、行動指針の遵守状況の書面調査を行いました。主要なサプライヤー135社に対して実施し、111社から回答を回収しました。アンケートの分析からは、特に人権上のリスクが認められるサプライヤーはありませんでした。

2019年度は、サステナブル調達プロジェクトを立ち上げ、より客観性の高いサプライヤーのサステナビリティ評価とエンゲージメントの実施方法について検討しました。

検討の結果、取引先様のサステナビリティ評価は、これまで行ってきた独自の行動指針の遵守状況の書面調査を改め、2020年度からは、EcoVadisサステナビリティ評価システムを採用することとしました。

2020年度は、次の計画を予定しています。

  • サプライヤー様との新規契約や契約更新の際に、「ビジネス・パートナーのための行動指針」への賛同を求める
  • 直接材一次サプライヤー40社について、EcoVadisのシステムを利用したサステナビリティ評価を実施する

  • 取引先への評価のフィードバックとエンゲージメントを通じ、サプライチェーン全体のサステナビリティの向上をはかる

  • PSCI(Pharmaceutical Supply Chain Initiative)に加入する
  • サプライヤーとの良好なエンゲージメントを図っていくために、監査能力の向上をはかる

エンゲージメント

エーザイは、国内外の最新の人権課題の情報を収集し、企業間で人権課題の情報を共有し、課題を解決していくためには、企業間で協力し合い、人権NPO、人権NGOと連携することが重要と考えています。エーザイは、「東京人権啓発企業連絡会」に加盟し、グローバルな動向、問題点、トピックスなどを議論する会議1、講演2、イベント3などに積極的に参画しています。

また、エーザイは、グローバルNPOであるBSR(Business for Social Responsibility)や一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加盟しており、これらの団体におけるセミナーや人権関連の分科会活動に参加することで、人権のグローバルな最新動向の把握、日本における「ビジネスと人権」に関する国別行動計画の進展状況、人権デュー・デリジェンスの実施例、人権の社内浸透の好事例などを学習しました。

  • ※1
    「反差別国際運動日本委員会総会」、「世界人権宣言記念東京集会」
  • ※2
    「ヒューマンライツセミナー」、「人権啓発トップ層研修会」
  • ※3
    「ヒューマンライツ・フェスタ東京」

サステナビリティ