サステナブル調達

企業には、サプライチェーン全体で社会や環境に配慮したビジネス活動を行う責任があります。また、製品の安定供給を確保するためにも、サプライチェーンにおけるサステナビリティに関するリスクを特定し、軽減する努力を継続的に行う必要があります。当社は、共存共栄の精神の下、原材料の製造先、製造委託先、業務委託先、卸・商社などのお取引先との連携を強化し、持続可能な社会の実現への貢献、及び当社とお取引先双方の企業価値向上を目的として、担当執行役の実行責任の下「サステナブル調達」に取り組んでいます。

サステナブル調達プログラム

当社のサステナブル調達は、以下の4ステップからなるプログラムで実施しています。

①  お取引先への当社のサステナビリティに関する取り組み方針とサステナブル調達の説明*1

②  お取引先の行動規範である「ビジネス・パートナーのための行動指針」遵守に関するお取引先からの同意書の受領

③  EcoVadis第三者評価プラットフォームを使ったお取引先のサステナビリティ評価*2

④  面談による評価結果のフィードバックを通じたお取引先のサステナビリティ向上

 

  • *1

    お取引先との取引額や過去のプログラム実施履歴等、ビジネスリスクを鑑みて、説明対象を絞って実施しております。

  • *2

    EcoVadis社が提供する包括的な企業社会的責任評価サービスプラットフォーム。EcoVadisの評価プログラムは、「環境」、「労働・人権」、「倫理」、「持続可能な資材調達」に関する評価から構成され、当社の行動指針の項目をカバーする内容となっています。当社ではお取引先のアセスメントプログラムの一貫として、EcoVadisの評価プログラムを用いてセルフアセスメント(自己評価)を実施しています。サステナビリティの改善状況を継続的にモニタリングするため、EcoVadisのスコアよりリスクの程度を判断しています。一定のスコア以下のお取引先には、スコアの内容をフィードバックし、明らかになったサステナビリティの弱点の改善を依頼しています。お取引先には定期的なEcoVadisの再評価(低リスクと判断されるお取引先は3年後の再評価)をお願いしています。

PSCI (Pharmaceutical Supply Chain Initiative) への加入

サプライチェーンにおけるサステナビリティに関する課題は、業界全体として取り組み、情報や結果を共有することが、製薬企業とお取引先の双方において合理的です。サステナブル調達を進めるにあたり、当社は2021年1月に、医薬品業界におけるサプライチェーンのサステナブル調達の推進を目的とした非営利団体であるPSCIに加入しました。

ビジネス・パートナーのための行動指針

「ビジネス・パートナーのための行動指針」(以下「行動指針」と言います)は、お取引先に最低限遵守して頂きたい期待事項をまとめたものです。本行動指針は、責任あるサプライチェーン・マネジメントを行うため、PSCIが加盟企業の共通のサプライヤー行動規範として策定したPSCI Principlesに準拠しており、法令遵守、倫理、労働・人権、安全衛生、環境、マネジメントシステムに関する基準を設定しています。

サステナブル調達の推進

国内生産拠点のサプライチェーン

2020年度~2023年度の実績

当社の日本国内工場のサプライチェーンについては、2020年度より、国内外の主要な直接材の一次取引先(医薬品の原材料、製造委託先、業務委託先等を含む)、及び、一次取引先が卸・商社の場合には、さらに上流の二次取引先(原材料の製造会社)を対象として、サステナブル調達を開始しました。2023年度までの4年間で、お取引先説明会を5回開催し、国内のお取引先203社に参加頂きました。また、海外の主要なお取引先28社には個別に説明を行いました。これまでに、一次取引先135社(総取引額の75.7%)より行動指針への同意を書面にて受領しました。また、二次取引先(一次取引先が卸・商社の場合の原材料の製造会社)については、対象とした143社のうち、68社から行動指針への同意を受領しました。

EcoVadisサステナビリティ評価に参加したお取引先は、一次取引先95社(総取引額の73.1%)、二次取引先48社でした。評価の結果、総合スコア、人権スコア、環境スコア、倫理スコアで当社の規定する高リスクの企業はありませんでした。当社は、お取引先とのエンゲージメントを通じて、サプライチェーン全体のサステナビリティのレベルアップを図ることを目的としており、相互理解のもとで改善点を共有し、是正を促進するため、2020年度から2023年度の4年間で、31社との個別面談を実施しました。

2024年度の取組み計画

お取引先に、サステナビリティの重要性やエーザイの方針について理解を深めて頂くため、継続してサステナブル調達に関する説明会を開催する計画です。国際社会で高まるサステナビリティへの取り組みの要請及び、環境や人権の法制化の進展状況の説明については、社外専門家に講演をしていただく予定です。

また、国内のグループ企業も、サステナブル調達を2023年度より開始しました。

海外生産拠点のサプライチェーン

2022年度~2023年度の実績

当社海外工場のサプライチェーンについては、インドのバイザッグ工場、中国の蘇州工場そしてインドネシアのボゴール工場の直接材の主要な一次取引先に対してサステナブル調達を開始しました。バイザッグ工場のお取引先56社、蘇州工場のお取引先19社から行動指針の同意書を受領しました。日本本社で既に同意書を受領しているお取引先を含めると、バイザック工場は総取引額の約94.0%、蘇州工場は約59.9%そしてボゴール工場は89.4%をカバーしています(エーザイグループ内の取引は除く)。バイザッグ工場は31社、蘇州工場は12社そしてボゴール工場は1社のEcoVadis評価が完了しました。英国のハットフィールド工場の直接材一次お取引先に関しては、お取引先と契約時に行動指針への同意を頂いています。

2024年度の取組み計画

EcoVadisによる評価結果から、リスクが高いと見なされるお取引先がバイザッグ工場で2社、蘇州工場で1社確認されました。これらの企業を含め、総合スコアあるいは人権、環境等の個別スコアにおいて、当社の設定した基準に照らして、改善の必要性が高いと考えられるお取引先とは、2023年度に面談などを通じてエンゲージメントを強化し、是正して頂くことを優先課題として推進していきます。

また、イギリスのハットフィールド工場等の他の海外工場についても新たにサステナブル調達をスタートすることを計画しています。

間接材のサステナブル調達

エーザイグループの全調達活動を対象に2022年度に策定した「ENWグローバル調達スタンダード」の遵守すべき事項として定めた項目の実効性を高めるべく、2023年度は継続的に活動を進めました。間接材についても、取引額が一定の基準以上の場合には、お取引先に対し、新規契約もしくは契約更新時に「行動指針」への同意を順次要請しました。2024年度も調達スタンダードの遵守事項の実効性向上、間接材の行動指針への同意要請を引き続き継続していくことを計画しております。

取引先の選定・協働体制

持続可能なサプライチェーンの構築に向けて、当社では高品質製品の安定供給にご協力いただくお取引先(原料製造サプライヤー、生産委託者)の選定においては、技術、品質、製造能力、薬制対応、財務、コンプライアンス、地政学リスク等の観点から評価を実施しております。

また、供給契約の締結後においては、上述のサステナブル調達に関する取り組み等を通して、お取引先の皆さまと協働しながら高品質製品の安定供給に取り組んでおります。

お取引先様コンプライアンス通報窓口

エーザイでは、お取引先やその役員および従業員の方々にも、エーザイ関係者による不正行為や法令違反、さらにお取引先における当社事業に関わる不正行為や法令違反等について相談・通報いただけるようコンプライアンス通報窓口を設けています。