エーザイでインドネシア医学生のインターンシップ受け入れ

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2016年8月

エーザイでは、企業理念であるhhcに基づき、患者様やご家族の皆様への貢献をめざした様々な「hhc活動」を世界各地で実施しています。また、エーザイは、自社製のリンパ系フィラリア症(LF)治療薬「DEC錠(ジエチルカルバマジンクエン酸塩)」の世界保健機関(WHO)への無償提供を2013年10月より開始しております。顧みられない熱帯病(NTD)の一つであり、東南アジアを中心に世界で1億2千万人以上の人々が感染し約14億人が感染リスクにさらされているリンパ系フィラリア症に対して、エーザイは、DEC錠のWHOへの供給と共に、LF制圧支援のためのhhc活動として、蔓延国インドネシアから国立ガジャマダ大学医学部のMs. Sania Rifa Zaharadinaをインターンシップ生として受け入れましたので、その活動をご紹介します。

インドネシア人医学生へのアイセック・インターンシップ研修を実施(2015-2016年)

今回のインターンシップは、LF制圧プログラムを蔓延国の医学部生の視点から広く社会に広め、学生のLF制圧プログラムへの積極的な活動参加を推進することを目的として受け入れたものです。受け入れにあたっては、国際学生インターンシップを支援するNPOのアイセック*1とのコラボレーションを通して行いました。LF制圧支援を目的としたインターンシップは、研修生にとっては、特に地方や貧困層で蔓延する感染症を対象とした疾患予防を学び、自らの社会貢献を考える機会となります。

Ms. Saniaはインドネシアのスマトラ島南部の都市パレンバン出身で、2015年度のアイセック・インターンシップ研修生として、2015年9月下旬から10月初旬にかけてインドネシアでの約5日間の研修に参加し、その後2016年1月より2月中旬まで約6週間日本に滞在して、東京本社を拠点とした研修を受けました。

インドネシアでは、エーザイ社内でLF制圧支援に取り組むDEC Project Manager*2の会議に3名の同大学の医学生らと共に参加し、アジアを中心とした各国で実施されているLF制圧支援の取り組みについて理解を深めるとともに、社会課題の解決策を考えるワークショップに参加しました。また、ボゴール工場で2名のLF患者様のお話を聴きLFと共に生きる現状や課題を知り、インドネシア保健省とWHOが共催したLF制圧月間“BELKAGA”に参加し、DEC錠を用いたLF制圧のための薬剤集団投与(MDA)に関して理解を深めました。

Ms. Sania Rifa Zaharadina
ボゴール工場でのLF患者様との交流の様子
インドネシアにおけるワークショップでの発表の様子

日本では、公益社団法人グローバルヘルス技術振興財団(GHIT財団)や国際協力機構(JICA)を訪問し、リンパ系フィラリア症を中心とした顧みられない熱帯病に関する各機関の取り組みに関して理解を深めました。また、都内の病院を訪問し最新医療施設を見学し、医師から日本の医療やリンパ浮腫の治療に関して学び、看護師から感染症対策に関して学ぶなど、日本の医療に関して理解を深めました。同時に、エーザイ本社の関連部署による講義や、筑波研究所、川島工場の見学を通して製薬企業の業務概要を学んだり、地域の患者様や社員、日本の学生達との交流も行いました。

GHIT財団で国際保健分野の官民パートナーシップの取り組みを学ぶ様子

帰国後のアクションプラン

Ms. Saniaは、LFは顧みられない熱帯病のひとつですが、その名の通り顧みられないまま放置してはいけない、優先事項として考えなければならない課題であると考えています。そこで、インドネシアと日本での研修を通して、WHO、インドネシア保健省、NPO、JICAなど様々なパートナーによるLF制圧支援活動の概要を学び、得た広範な知識と経験をもとに、以下のアクションプランを作成しました。

  • 1.
    医学部における、医学、看護学、栄養学3つの専攻の学生から構成されるガジャマダ大学の「地域コミュニティと家族の健康ケアに関する専門職横断教育プログラム(CFHC-IPE)」とパートナーシップを組み、専門家によるLF関連の講義を取り入れる、LFに関する疾患啓発動画を視聴する、インターンシップの経験を共有する場を作る、LF患者様やLF支援ボランティアのカドレと交流するよう呼びかける、CFHCチームの家族に疾患啓発パンフレットを配布するなどの働きかけを行う。
  • 2.
    画像共有アプリケーションサービス「インスタグラム」を活用し、LF制圧啓発のための様々な写真や短い動画の投稿を若い世代を中心に呼びかける。
Ms. Saniaと共にインドネシアでの研修に参加したガジャマダ大学の学生

帰国後は、MDAに参加したガジャマダ大学医学生らチームメンバーと共に、研修で学んだhhcや「患者様中心の医療の実践」を念頭に、これらのアクションプランを実行に移し、LFの予防と疾患啓発活動を実践していきます。高い志と専門性、そして国際性を兼ね備えた若きリーダーとして、新たなリーダーシップを発揮し、インドネシアのLF制圧促進に寄与することが期待されています。

エーザイでのインターンシップを経験しての感想

Ms. Saniaは、一連の研修を終えた後の感想を次のように語っています。

『日本での6週間のインターンシップ研修は、私にとって初めての海外渡航でした。とてもワクワクすると同時にとても緊張しました。実はこの研修に参加するには大学の授業を2週間休まなければならなかったため、帰国後の授業についていけるか不安で、参加を決心するのはとても葛藤がありました。参加を決心した後も、自分の意思決定が本当に価値のあるものだったのかどうか自問自答しました。ところが実際に研修が始まると、価値が有るかどうかという問いは吹き飛び、値段がつけられないくらい貴重な経験であることがわかったのです。私は新しいことに興味があるので、研修はいつも本当に楽しく、多くを学ぶことができました。このアイセック・インターンシップは、私の人生で最高の経験でした。ご多忙な中、私のために様々なプレゼンテーションをしてくださった皆様に深く感謝申し上げると同時に、このような一生思い出に残る素晴らしい機会を与えてくださったエーザイに心より御礼申し上げます。』

エーザイは、世界中の医薬品アクセスの向上活動の一環として、WHOのLF制圧への取り組みや、開発途上国におけるヘルスケアを担う人財のキャパシティビルディング(人材開発)支援に貢献したいと考えています。そして今後も様々な活動を通じて、開発途上国の医薬品アクセス向上を支援し、世界のヘルスケアに貢献していきます。

アイセック*1について

「アイセック(AIESEC: Association Internationale des Etudiants en Sciences Economiques et Commerciales)」は、オランダのロッテルダムに本部を置き、世界126以上の国と地域に10万人以上の会員を有する学生による国際的非営利組織です。将来のグローバルリーダーを育成することを目的とし、海外インターンシップの受け入れや送り出しを運営しています。

DEC Project Manager*2について

DEC Project Managerとは、LF制圧活動を考え、実行する担当者を指します。アジアのLF蔓延国にある販売子会社の社員を中心に任命されています。