DE&Iの実現に向けて

トップメッセージ

エーザイは「社会善を効率的に実現する」と定款に定め社として社会的課題にパブリックセクターを含む様々な人々と連携して取り組むことをビジネスの中心的命題としています。社会善として1.人々の健康憂慮の解消、2.医療較差の是正、3.患者様との共感に基く医療の3つを考えています。効率的の中味については資本・資金の調達、多彩なタレントが集合、Digitalを含む技術の活用、ビジネスモデルとしてのエコシステムモデルの採用を挙げています。これらを通して一貫しているコンセプトは他者との連携、協業の精神であり、まさにDE&Iによる効率性や創造性の獲得を目指そうとするものです。つまりエーザイにとってDE&Iを推進するということは、企業理念の実現にむけた活動そのものなのです。

多彩なタレントが集合すること(Diversity)は創造性を高め効率的に物事を進める上で最重要であり、社の内外において公平かつ透明性高く活躍の機会が存在すること(Equity)、さらに彼らがインパクトある目的を達成する上で不可欠の要素として機能する風土や環境があること(Equity and Inclusion)は、人財・タレントが集うために必須の要諦となっています。これはグローバルにインパクトある仕事を遂行する上で大前提となります。

われわれは、DE&Iとは異なる人々が集い、さらにお互いが相手が何を大切に思っているか(暗黙知)を知っている、その上で共に仕事をする意味、すなわち一人でやるより他者と共働した方がよいと考えている、目的とするものについて共感が得られている状況であると考えています。

このことは実は簡単ではなく、集団の中においては、少数派であったり弱い立場にある人々の考え方や意見は表出化されにくく、さまざまな面で多数派に有利に働く状況に陥りやすいことも理解しておかなくてはなりません。

何故自分と異なる意見を持ち、AではなくBを主張するのかをじっくりと逃げずに考え続けていく。時の経過で相手の主張の根拠が理解できることがあります。考え続けることと、時の力を信ずること、相手の考えも変わることがあることを知っていること、これらがダイバーシティの価値を享受する上で大切なポイントとなります。

異なる背景や立場、考えを持つ人々との協業によりわれわれの仕事は成り立っていることは論を俟ちません。たとえば、創薬はアカデミアとの連携が不可欠ですが、ビジネスマンとアカデミシャンの目的は異なるし、時間軸は違う、価値観も異なる場合があります。それらの違いを超えて新たな発想を生み出す、まさにDE&Iは創薬イノベーションの原点であります。

また、ビジネスはグローバル展開しています。国々の状況は異なり制度、文化、価値観など様々な面で異なっています。一カ国の人間がグローバルビジネスを円滑に行うことはあり得ません。必ず多国籍のマネジメントチームにより経営されなければなりません。臨床研究、レギュラトリー、メディカル、コマーシャル、生産の全ての活動においてDE&Iなしにわれわれは存在できないことは明らかです。

さらに、エーザイの将来のビジネスモデルである疾患別エコシステムでは他産業連携が重要な要素となっています。ここでは目的や利害が必ずしも一致しない相手との協業を企図することもあります。DE&Iを基軸として前に進む大きな推進力を得ていくことはエーザイの成長戦略の中心的課題であり、イノベーション創出の源泉です。

そして、エーザイにとってより根源的な観点では、患者様と生活者の皆様には年齢、性別、国籍などの別はないということです。かれらの喜怒哀楽を知るにはわれわれもジェンダーのバランスをはじめとする多様性を保有していることが強みになります。日常的にダイバーシティに富んだ体制で物事を考え、戦略を策定し、意思決定を行うことは、多様な患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽をしっかりと知り、そのベネフィット向上を最も効率よく実現する上で必須であります。

大きな創造性や解決力をもたらすDE&Iですが、その力を発揮するには「異なって当然、違って当たり前」とする知識が重要です。この知識を是非ともエーザイとしての組織知、社員の個人知としたいと考えています。エーザイはDE&Iを強みとするマネジメント体制でhhc理念を実現し、社会における存在意義を発揮してまいります。

代表執行役CEO

内藤晴夫