製品の安定供給

方針

高い品質のエーザイ製品を、世界中のより多くの患者様へ

医薬品企業は、患者様・生活者の皆様の生命に直接関わる製品を扱っており、高い品質が保証された医薬品を安定して生産し、必要とする患者様に確実にお届けすることは、私たちの社会に対する責務です。エーザイでは次のような品質方針を掲げ、高い倫理観と使命感をもって、高い品質の医薬品を世界中で必要とする方々にお届けしています。

エーザイグループ 品質方針

「我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている。」

マテリアリティ・目標・課題・アクション・実績

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マテリアリティ目標課題アクション実績
製品の安定供給 安定操業および安定供給体制の強化 特定地域からの原料調達依存 代替サプライヤーの追加検討
  • 特定の製品、特に重要性の高い製品を中心として、代替調達が可能なサプライヤーを確保する取り組みを推進
あらゆる有事を想定した安定供給体制の確立

適切な在庫の確保

代替輸送経路の確保

  • 原材料の調達、生産、物流に支障をきたすような状況が発生した場合でも、製品を安定的に供給するため、原材料および製品の在庫や代替輸送経路を適切に確保
  • 商用電源の停止に備え、必要な電力を確保するための自家用発電設備を、海外を含めたすべての工場に設置
持続可能で強固な安定供給システムの構築
  • 自社工場の製造・分析業務を一部自動化、遠隔化する取り組みを推進
医薬品アクセスの改善
  • アフォーダブルプライス(患者様が購入しやすい価格)実現に向けた取り組み
  • リンパ系フィラリア症の制圧に向けて、バイザッグ工場(インド)にて治療薬「DEC錠(ジエチルカルバマジンクエン酸塩)」を製造し、蔓延国に向けて無償で提供
偽造医薬品への対策
  • DEC錠の各ボトルラベルに固有のID番号および2次元バーコードを印刷、カートンおよびパレットにもシリアル番号を印字
サステナビリティに関する取り組み

脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガス排出量の削減

規制の変化や技術の進歩等、環境変化を踏まえたカーボンニュートラルの推進

各工場における、

  • CO2排出量削減に向けた取り組み
  • 再生可能エネルギーの導入拡大
  • 省エネ設備、太陽光発電設備の導入や化石燃料から電気への燃料転換の推進
  • バイオマスプラスチック容器の採用

お取引先との連携による、社会および環境に配慮したサステナブル調達の推進

CSR(Corporate Social Responsibility)調達推進による持続的・安定的な調達体制の構築

  • お取引先とのエンゲージメント
  • お取引先の人権、労働、安全衛生、環境および倫理などのサステナビリティへの取り組みを把握

国内外のお取引先に対し、

  • 当社が加盟するPSCI (Pharmaceutical Supply Chain Initiative)のサプライヤー行動規範に準拠した「ビジネスパートナーのための行動指針」遵守に関する同意と署名書の提出を依頼
  • 第三者機関(EcoVadis)プラットフォームを用いたお取引先のサステナビリティ評価を実施

グローバルな生産体制

当社では、より患者様志向の医薬品生産・物流を目指して、製品の生産・供給を行うだけでなく、患者様のデマンド(需要)を積極的に捉え、生産活動・製品改良を進めるデマンドチェーン体制をグローバルに展開しています。
現在、当社グループは日本・米国・英国・中国・インド・インドネシアに生産拠点を有しています。グローバルな連携と地域に密着した細やかな対応により、世界各国において高い品質を有する医薬品の安定供給を実現しています。

グローバル生産拠点
各工場の機能

取り組み

サステナブル調達

当社では、サプライチェーン全体で社会および環境に配慮した活動に取り組んでおり、その一つとしてサステナブル調達を推進しています。サステナブル調達は、取引先の人権、労働、安全衛生、環境および倫理などのサステナビリティへの取り組みを把握し、お取引先とのエンゲージメントを通じて、その向上を実現することを目的としています。サステナブル調達に関する詳細は「サステナブル調達」ページをご覧ください。

カーボンニュートラル

地球温暖化の原因となる温室効果ガス排出削減に向けた中期目標として、当社は「2030年までに当社の総電力エネルギーを再生可能エネルギーに100%切り替え、2040年度までにカーボンニュートラルを達成する」という目標を掲げています。製造部門では、当社国内外9つすべての医薬品製造工場において2040年度までの目標達成に向けたロードマップを作成し、省エネ設備や太陽光発電設備の導入、化石燃料から電気への燃料転換などCO2排出量削減に向けた取り組みに加え、再生可能エネルギーの導入拡大などを検討・推進しています。

バイオマスプラスチック(サトウキビ由来のポリエチレン)容器の採用

抗てんかん薬「フィコンパ®」(一般名:ぺランパネル水和物)について、2020年7月に発売した細粒剤の包装にバイオマスプラスチック容器を採用しました。本容器はバイオマスポリエチレンの含有率が90%以上であり、日本バイオプラスチック協会よりバイオマスプラスチック製品の表示(BPマーク)の認証を取得しています。これにより、従来の石油由来ポリエチレンと比較してCO2排出量を最大70%削減することが可能です。今後は他の製品への採用を検討し、更なる環境負荷低減に向けた活動を継続すると共に、国内外の規制の変化や革新的技術の発展をはじめとする環境変化を踏まえた取り組みを実施し、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて持続可能な社会づくりに貢献していきます。

バイオマスプラスチック容器

自動化、遠隔化を目指した次世代型工場

いかなる環境下でも患者様に医薬品を届けるために、当社は持続可能で強固な安定供給システムの構築に取り組んでいます。自社工場の製造・分析業務を自動化、遠隔化することにより、有事の際の従業員の出社制限に影響されない生産体制への転換をめざしています。

製剤化工程 連続生産システムの導入

2021年6月に国内で承認を取得した抗がん剤「タズベリク®」(一般名:タゼメトスタット臭化水素酸塩)に製剤化工程の連続生産システムを適用し、国内企業として初めて商業生産で実用化しました。連続生産は、原料投入、混合、造粒、乾燥などの工程をつなげ、製造過程の品質をリアルタイムでモニタリングしながら最終製品に仕上げます。稼働時間によって生産量を調整でき、省エネルギーで高い生産効率を達成できる革新的な医薬品製造技術です。

分析自動化ロボットの導入

製品中の成分や不純物を測定する際に必要な製品の完全な溶解や正確な希釈などの一連作業を自動化・遠隔モニタリングすることを目的に、抗がん剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)の製品品質を分析する自動化ロボットを外部メーカーと共に開発し、2022年3月に導入、2022年度より実用化しました。本設備の導入に伴い、夜間無人作業が可能になるなど試験能力の大幅な向上に加え、一貫した自動作業・自動記録、サンプル情報管理のデジタル化・自動化、生成されたデータのサーバーへの自動転送等、データインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の向上にも大いに寄与します。

医薬品アクセス向上に向けた取り組み

当社グループが掲げる医薬品アクセス向上に向けた取り組みにおいては、「アフォーダブルプライス(患者様が購入しやすい価格)」の実現が重要であり、バイザッグ工場(インド)はこの中心的役割を担っています。日本、米国、インドの当局より原薬および製剤の製造工場として、また、欧州、韓国の当局より原薬の製造工場として、GMP*承認を取得しており、新興国・開発途上国を含む世界に向けた生産工場としての体制を強化しています。

  • GMP:Good Manufacturing Practiceの略称であり、医薬品の製造管理および品質管理に関わる基準のことを指します。

リンパ系フィラリア症の制圧に向けた治療薬「DEC錠(ジエチルカルバマジンクエン酸塩)」の無償提供

当社は、世界保健機関(WHO)によるリンパ系フィラリア症制圧プログラム支援し、バイザッグ工場においてリンパ系フィラリア症の治療薬であるDEC錠の製剤開発を行い、2013年10月からはDEC錠の製造を行い、蔓延国に向けて無償で提供しています。世界の蔓延国の人々に安心して服用していだだくことを考慮し、ボトル包装のラベルは4カ国語(英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語)で表示されています。また、偽造医薬品の流通防止対策の一環として、DEC錠の各ボトルラベルには固有のID番号および2次元バーコードが印刷されており、追跡が可能です。カートンおよびパレットにもシリアル番号を印字しています。

DEC錠ボトルに貼られている、4カ国語によるラベル表示(左より英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語)

大規模災害やパンデミックへの備え

大規模災害などの非常事態発生時にも製品を安定して供給するため、当社ではネットワーク企業も含め事業継続計画(BCP)の策定を進めています。全社方針のもと、各機能、地域のBCPを体系化・整備し、グローバルに一貫して対応できる体制を整えました。
BCPでは、あらゆる有事を想定し、従業員の安全確保を最優先に、工場の操業継続、被害の最小化、早期復旧などの生産物流に関する事業活動の継続に向けた計画およびプロセスを規定しています。また、原材料の調達、生産、物流に支障をきたすような状況が発生した場合でも製品を安定的に供給するため、原材料および製品の在庫を適切に確保しています。加えて、特定の製品、特に緊急・重要性の高い製品を中心として、緊急時に代替稼働が可能なバックアップサイトを確保する取り組みを行うとともに、商用電源の停止に備え、必要な電力を確保するための自家用発電設備を海外を含めたすべての工場に設置しました。今後もより高度な安定供給体制の構築を進めます。