主に狂犬病ウイルスを保有する犬に媒介され感染する病気であり、人と哺乳類のすべてが感染対象となります。アジアとアフリカで30億人以上の人々が感染リスクにさらされています。ワクチンで予防できますが、感染後発症すると死に至ることもあるため、直ちに治療が必要です。
感染原因
狂犬病は、狂犬病ウイルスを病原体とし、哺乳類によって媒介されて人に感染する病気です。人およびすべての哺乳類が感染し、発症する可能性があります。
人の場合、狂犬病ウイルスを保有する野生の犬やアライグマ、スカンク、こうもり、キツネなどに咬まれたり、引っ掻かれたりことで感染する場合がほとんどです。また、体内で唾液や脳・神経の細胞にウイルスが存在するため、感染者や動物の排出物や組織に接触した場合も感染することがあります。
病原体:狂犬病ウイルス
媒介動物:哺乳類(主に犬、アライグマ、スカンク、こうもり、キツネなど)
症状
狂犬病ウイルスは中枢神経に感染し、最終的には脳を侵し死に至ります。
感染初期は、発熱、頭痛、不快感といった非特異的な症状が現れます。また、咬まれた部分は、ちくちくうずいたり、焼き付くような感覚(知覚異常)を覚えます。
3日~5日間でウイルスは感染部位から脳に拡大して広く障害をおこし、不眠、不安感、混乱、軽度あるいは部分的な麻痺、興奮状態、幻覚、動揺、過流涎(唾液が過剰に出ること)、嚥下障害、恐水症といった症状が起きます。これらの症状を発症すると数日間で心肺停止によりほぼ死に至ります。
治療方法
診断方法
複数の検査をして診断します。具体的には、唾液、血清、髄液、皮膚などの生検標本を対象として行います。
唾液:ウイルス分離検査をした後、ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)でウイルスの存在有無を確認します。
血清・髄液:狂犬病ウイルスの抗体を確認するために使用します。
皮膚:皮膚神経に狂犬病ウイルスの抗原があるかどうかを調べるために行います。
治療方法
狂犬病に感染した場合は一刻も早く治療する必要があります。
応急処置として、咬まれたら数時間以内に石鹸、水、洗浄剤、ポビドンヨードなどで患部を15分以上洗浄することが重要です。これにより感染リスクを低下させることができます。感染後には、免疫グロブリンを1回と狂犬病ワクチンを14日間にわたって4回接種します。免疫グロブリンと1回目のワクチンは感染後すぐに接種し、残り3回のワクチンは感染後の3日目、7日目、14日目に分けて接種します。
すでにワクチンを接種したことがある場合には、感染日と3日目の2回のワクチンを接種すれば問題ありません。この場合には、免疫グロブリンは必要ありません。
予防方法
狂犬病はワクチンで予防することができます。狂犬病ウイルスを保有しやすい動物(主に犬)にワクチン接種することも有効な予防方法です。
感染リスクのある地域
狂犬病は世界150カ国で発生しています。特にアジアとアフリカで多く、死亡者の95%以上がその地域に集中しています。
推定感染者数
アジアとアフリカで30億人以上の人たちが狂犬病のリスクにさらされています。多くはワクチンや免疫グロブリンが入手しづらい地方に住んでいる人たちです。
狂犬病は年齢を問わずリスクがありますが、特に15歳以下の子供は感染しやすく、治療を行っている患者の40%が5〜14歳の子供(多くが男子)です。また、毎年1500万人以上の人々が感染後ワクチンを接種しています。
推定死亡者数
狂犬病による死亡者数は、アジアとアフリカに集中しており、年間5万5千人以上になると推定されます。
参照情報:
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/