デング熱・チクングニア熱

デングウイルスを病原体とし、蚊(主にネッタイシマカやヒトスジシマカ)に媒介されて感染する病気です。感染しても無症状の場合もありますが、重症型の「デング出血熱」を発症すると、主に幼い子供が死に至ることもあります。毎年3億9千万人がデングウイルスに感染していると推定されます。128カ国における39億人が感染のリスクがあると言われています。

感染原因

デング熱は、蚊(主にネッタイシマカやヒトスジシマカ)が媒介昆虫となり、デングウイルスが人に感染する病気です。人から人に直接感染することはありません。デングウイルスには4種類ありますが、いずれもその症状は非常に似ています。

病原体:デングウイルス

<透過型電子顕微鏡で撮影されたデングウイルス>
Frederick Murphy
CDC

媒介昆虫:蚊(主にネッタイシマカやヒトスジシマカ)

<蚊(※写真はネッタイシマカ)>
James Gathany
CDC

症状

デングウイルスに感染すると、無症状のままか、デング熱、デング出血熱のいずれかの症状が現れます。通常、初めての感染の場合は、幼い子供ほど症状は穏やかです。

デング熱の症状

高熱、ひどい頭痛、ひどい眼の奥の痛み、関節痛、筋肉と骨の痛み、発疹、出血傾向(鼻や歯茎からの出血、点状の出血、あざ状の内出血)、白血球の減少等
高熱が2~7日間続いた後、熱が下がってから3~7日後に下記のような症状が出たら、デング出血熱の可能性が高いため直ちに治療する必要があります。放置すると死に至ることもあります。

デング出血熱の症状

ひどい腹痛または執拗な嘔吐、皮膚の赤い斑点、鼻や歯茎の出血、吐血、タール状の黒い便、眠気や興奮状態、肌の血色が悪くなったり肌が冷えたり湿っぽくなる、呼吸困難等

治療方法

デング熱の症状が現れた後、すぐに治療をすれば重症化は避けられます。特定の薬剤はなく治療は症状によって異なり、一般的には出血のリスクを増加させるアスピリン系の鎮痛薬は避け、アセトアミノフェン系の鎮痛薬を投薬します。また、体を休めて充分な水分を摂ります。熱が下がってから24時間経って、具合が一層悪くなった場合(嘔吐、激しい腹痛など)には、すぐに医師の診断を受ける必要があります。
デング出血熱の場合も特定の薬剤はありませんが、初期症状には補液療法(水分を補給する療法)が効果的です。

予防方法

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が発表したデータによると、2013年時点で予防ワクチンはありません。予防方法としては、蚊が産卵する水溜まりを作らないこと、および蚊に刺されないようにすることなどが挙げられます。
生活環境の中で水を溜めている場所(たとえばペット用の飲み水や花瓶の水など)は、蚊が産卵している可能性があるので、少なくとも週1回は新しい水に替える必要があります。また、蚊に刺されるのを避けるために、殺虫剤や殺虫成分を練りこんだ蚊帳の使用も有効な予防方法になります。

感染リスクのある地域

2013年にCDCが発表したデータによると、世界人口の約3割以上が居住する熱帯・亜熱帯地域はデング熱の感染リスクが高く、流行地域はプエルトリコ、ラテンアメリカ、東南アジアです。加えて、サモアやグアムでは季節的な流行が見られます。

推定感染者数

毎年3億9千万人が感染しており、そのうちに9600万人は程度の差はありますが明らかな臨床症状を呈するに至ります。報告された症例数は2010年の220万例から、2015年には320万例にまで増加しました。

推定死亡者数

重症型の「デング出血熱」で入院する年間推定50万人の感染者のうち、多くは子供であり、感染者の約2.5%が死亡しています。

参照情報:

WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/

CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/

監修
慶應義塾大学 名誉教授 竹内 勤
聖路加国際大学 名誉教授 遠藤 弘良