真のShared Decision Making/患者様中心の医療の実現に向けて 「腎がん市民公開講座」における患者様と医師の本音のコミュニケーション

2024年7月

 腎がん啓発月間にあたる2024年3月、都内にて再発転移治療中の腎がん患者会「avec」の皆様と日本医科大学付属病院泌尿器科教授の木村剛先生をお招きし、腎がん市民公開講座を開催しました。患者様、先生、そしてエーザイのメディカル本部の社員を中心に合計23名が参加しました。

     

 本活動は、医療従事者への医学的・科学的専門性の高い情報提供を担う、当社メディカル本部によるhhc活動の一環です。患者様中心の医療への貢献に向けて、当社が提供する薬剤の適応症である子宮体がんおよび腎細胞がんについて、患者様がどのような経験をされ、どのような憂慮をお持ちなのかを理解したいという想いから、医師から患者様をご紹介いただき、2021年から毎年実施しています。

     

 過去3年間の患者様との対話を通じて得た気づきは、「患者様自身がイメージする治療ゴールと医師から提案されるゴールには相違があること」「患者様が抱えている不安は多岐にわたり、医師だけでなく看護師や薬剤師も積極的に治療や副作用マネジメントに関与してほしいという要望があること」でした。しかしながら、日本では腎がんに関して、こうした患者様が抱える思いや不安を明らかにした研究や報告は存在しませんでした。この課題について木村先生から「研究テーマとして深掘りすべきであり、学会発表や論文を通じて国内外に広く周知すると良い」とアドバイスを受け、患者様と医師に加え、看護師、薬剤師の方々にも広くアンケートにご協力をいただく横断的観察研究1へと発展し、本年6月に学術誌に論文掲載されました。

       

1. Kimura G, Fujii Y, Osawa T, et al. Cross-sectional study of therapy-related expectations/concerns of patients with metastatic renal cell carcinoma and physicians in Japan. Cancer Med. 2024; 13:e7196. doi:10.1002/cam4.7196

       

     

 今回の市民公開講座では、アンケート結果の共有の後、患者様と医師との間の認識の差について、それぞれの立場で感じるところをディスカッションしました。

 木村先生からは、「今日のような場では、本音で話してほしい。薬は飲み始めが重要で、何かあると治療を続けられなくなる可能性があるため、副作用も含めてとにかく感じていることを教えてほしいというのが、医師の本音」「本当の意味でShared Decision Making(共有意思決定:患者と医師の双方が医学的な意思決定に関与するプロセス)を実現するためには、患者様にも正しい知識を持っていただきたい。そのための一手として患者会を有効活用してほしい」というお話がありました。

 これに対して、患者様からは、「最初は全く知識がなく、薬物治療に対して恐怖しかなかった。患者自身が自分の置かれている状況を冷静に把握し、知識をもつことはとても大事。患者会などを通じて理解を深めていくことで、最初とは捉え方が異なってきている」というコメントがあり、治療ゴールの定め方などが、患者様が知識を持つことで医師の提案に近い形に変わっていく可能性があることが対話を通じて浮き彫りになりました。

      

 医師が1人の患者様に割ける時間にはどうしても限りがあり、患者様が必要とする情報を医師だけですべて伝えるのは難しいのが現実です。ある患者様からは、「日々、副作用も含めた自分の症状についてメモをとり、医師の診察時に正確により簡潔に伝えるよう心がけている」という話がありました。そういったコミュニケーション上の工夫に加え、医師だけでなく看護師や薬剤師にも相談できる環境を作ること、患者様自身が積極的に学び正しい知識を持つことがShared Decision Makingの実現には不可欠であり、そのためにも、製薬会社がウェブサイトや患者様向けパンフレット等で分かりやすい説明を行うことが重要であることを改めて認識する機会となりました。

     

    

 今回の市民公開講座の企画を担ったエーザイメディカル本部の光田吉秀は、「患者様にはより積極的に治療に向き合うことで、より満足いく治療を受けていただきたいと考えています。今回の活動を通して、医師や患者様の本音を知るとともに、われわれ製薬会社に対する要望や期待も肌で感じ、身が引き締まる思いです。真の意味での患者様中心の医療の実現に向けて、これからも努力を続けていきます」と語ります。

 エーザイは、hhc活動を通じて感じ得たがん患者様や医療従事者の憂慮を、これからの活動に活かし、今後も患者様中心の医療の実現を目指してまいります。

     

SNSでシェアする

  • X
  • Facebook
  • Linkedin