小児がんの臨床試験への参加に際しての課題について、エマニュエルがん財団との座談会を実施

2024年5月

2023年12月、エーザイUSのレギュラトリー部門のメンバーは、小児がんの臨床試験へのアクセスの実態と患者様の体験について理解するため、エマニュエルがん財団とのオンライン座談会を開催しました。座談会には、エマニュエルがん財団から三組のご家族をお招きし、臨床試験を担当するエーザイのがん研究者が参加しました。患者様ご本人とそのご家族からは、診断、治療、臨床試験へのアクセスに関する課題についての経験を共有いただきました。

臨床試験に関して患者様とそのご家族が直面する主な課題は次のとおりです。

  • インフォームド・コンセント(説明を受け納得した上での同意)をはじめとする臨床試験のプロセスに対する理解
  • 受けられる治療の選択肢の特定
  • 臨床試験への参加の流れの把握
  • 臨床試験への参加資格要件

座談会では、患者様とそのご家族の双方に、臨床試験のプロセスや、診断された疾患に対する治療の選択肢を理解することについての、不安や不十分だと思う点についてお話をいただきました。ある患者様の保護者は、子どもに適切な臨床試験を見つける方法がわからず、家族で一緒に過ごせたはずの何日・何時間もの大切な時間を、インターネットで治療の選択肢を調べることに費やさなければなりませんでした。また、当社のがん研究者から、医療従事者にとっての様々な課題を共有しましたが、そのうちの大きな課題のひとつは、インフォームド・コンセントや臨床試験のプロセスなど、患者様とそのご家族に提供される情報量が多く、複雑であり、それらを管理することの難しさでした。

 

加えて、小児がんの臨床試験が実施される施設は自宅から遠く離れていることが多く、患者様のご家族は臨床試験に参加するための手配に苦労されていました。交通費、ホテル滞在費、駐車場代、食費、保育料などの費用がかさみ、すでにストレスの多い状況にさらなる追い打ちをかけられていました。

 

さらに、臨床試験への参加資格も課題となっていました。ほとんどの場合、年齢や併用療法により小児患者は臨床試験の対象にはならず、場合によっては、がんの種類が非常にまれなため、臨床試験の選択肢自体がないこともあります。

 

この座談会の後、私たちのチームは座談会で挙げられた課題や憂慮について振り返り、臨床試験を実施する製薬企業として何ができるかを話し合いました。その中で、小児患者様とそのご家族が医療従事者との話し合いを円滑に進めるためのツール(補足的な説明文や図解)を作成することとしました。臨床試験参加までの段階ごとの説明や治療の実施についての図解による説明に加え、保護者や患者様が臨床試験に対して抱いている質問や懸念を記録するための欄も設けます。これらは、16歳以下の子どもが十分に理解できる言葉遣いやイラストであることを念頭に作成し、今後エーザイの全ての小児臨床試験にも応用していくことを想定しています。

  

チームメンバーの一人であるマリア・ガリガンは、「患者様やそのご家族にとって、臨床試験にアクセスすることや、彼らのお子さんの疾患に臨床試験がどのような役割を果たすのかを理解することがいかに難しいかを学びました。患者様とそのご家族と医師との間のコミュニケーションを円滑に進めるためのツールを提供することができれば、臨床試験への理解が進み、臨床試験への参加を選択することができます。患者様とそのご家族の憂慮を理解することで、小児がんの臨床試験の計画と実施に役立てていきます」と述べています。

患者様やそのご家族は、治療の選択肢が限られていたり、合併症に悩まされるなどさまざまな困難に直面してきたのにも関わらず、自分たちの経験を他の患者様やそのご家族を助けるために共有したいという強い思いでこの活動に参加してくださいました。参加者の皆様の前を向く力と、がんという同じ病に罹患する他の子どもたちに対する献身的な姿勢によってこの活動が支えられています。

エーザイは、今回の臨床試験についての座談会などのhhc活動を通じて得た知見を活かし、今後もがんの予防と治療に向けた取り組みを続けてまいります。

  

  

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