2024年4月
2023年12月、筑波研究所に卵巣がんの患者様4名をお招きし、座談会を行いました。当日は、創薬開発に携わる研究員を中心に、総勢52名の社員が参加しました。
今回の座談会は「がん患者様をもっと知ろう」と名付けられたhhc活動の一環で開催されたものです。「副作用で苦しむことのないがん治療の実現」に向けた本活動は2017年から行っており、2023年で6年目になります。
この活動は、医薬品の副作用研究を日常業務としている非臨床安全性チームからはじまりました。非臨床安全性チームで日々副作用をどのようにコントロールし、抗がん剤の治療効果を最大化させるかを考える中で、患者様が抱える副作用や関連症状への想いを知り、安全性研究を活かしたアプローチで患者様の憂慮を解決できないか、と考えたことが立ち上げのきっかけです。
活動開始からの約6年間、今回実施した卵巣がんの患者様との座談会に加え、乳がんや肝がんの患者様と直接対話する機会や、その他にも様々な状況下の患者様にインタビューや調査にご協力いただく機会を持ってきました。その中で浮かび上がってきた課題は、「心臓への影響や間質性肺炎などの生死にかかわるような重大な副作用ばかりでなく、しびれや脱毛など長期間続く副作用に悩まされていること」「しびれ、だるさ(倦怠感)など副作用を可視化できる指標がないこと」「副作用に関する正しい情報へのアクセス、医療者・患者様視点でのわかりやすい情報提供に課題があること」などです。安全性研究の立場として生死にかかわる副作用に注目しがちだったのが、患者様の日々の憂慮は他のところにもあると、理解を深めることができました。
その中の、「副作用を可視化する指標がないこと」について社内の創薬研究者や医療機関担当のチームに共有したところ、自分たちが取り組まなければならない課題であると認識が一致し、すぐに協働での活動が始まりました。しびれ(末梢神経障害)については、患者様に加え、医師との面談も実施し、医療従事者側の憂慮も共有いただきました。終末期が近い患者さまに対してもしびれや脱毛等の副作用が生じる薬剤を使い続けることへの医師の葛藤を知り、患者様と医療従事者双方の憂慮を解決するには、副作用のないがん治療薬の開発を行うしかない、という共通認識が醸成されました。現在は、副作用の指標となるバイオマーカーの研究や副作用のスクリーニング方法の開発を並行して行うなど,副作用のないがん治療薬の実現をめざしてエーザイの研究・開発に関わるメンバーが一丸となって取り組んでいます。
本活動を立ち上げた関は言います。
「患者様の憂慮を起点に、関係部署が知恵を絞り、協働できることがエーザイらしさだと感じます。hhc活動として始めた活動が実際の研究開発業務に組み込まれた時点で、ある意味hhc活動としては“卒業”です。私たちはまた新たな憂慮を患者様との共同化から見出し、その解決に向けて取り組み続けたいと思います。」
エーザイは、hhc共同化活動を通じて感じ得たがん患者様の憂慮を、これからの創薬活動に活かし、今後もがんの予防・治癒および副作用で苦しむことのないがん治療の提供をめざしてまいります。