方針・基本的な考え
エーザイグループは、グローバルに展開するヘルスケア企業として「エーザイ・ネットワーク企業(ENW)環境方針」を定め、地球環境の保全を重視した企業活動を展開しています。ENW環境方針では、「3. 温室効果ガスの排出削減や省エネルギーを推進し、気候変動の緩和に貢献します。」と明記し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みをグローバルに推進しています。
2023年11月 にSBT1.5℃目標(Science Based Targets;科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標)について、SBTイニシアティブから承認を取得しました。また、2023年12月にJCI(気候変動 イニシアティブ)から、2050年までのネットゼロ達成にコミットするJCI Race to Zero Circle への参加承認を取得しました。さらに、当社は事業活動に用いる電力をすべて再生可能エネルギーに切り替えることをめざす。RE100イニシアティブに加盟しており、2030年度までの目標達成をめざしています。
当社グループのみならず、ビジネスパートナーとも連携を深め、中長期目標の達成に取り組んでいます。
目標・課題・アクション
※左右にスクロールできます
| 目標 | 課題 | アクション | 実績(2024年度) |
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気候変動の緩和
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*2 算定対象データの見直しや算定方法の変更等を行った結果
Science Based Targets:科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標
エーザイグループは、気候変動の緩和に寄与するため、下記に示す科学的根拠に基づく中長期的な温室効果ガス排出削減目標(SBT1.5℃目標*3)を設定し、事業活動に基づくCO2排出量の削減に取り組んでいます。
- 2030年度までにスコープ1+2を55%削減(2019年度比)
- 2030年度までにスコープ3、カテゴリー1を27.5%削減(2019年度比)
2050年ネットゼロに向けた活動
2024年度も引き続き、温室効果ガス排出削減に向けた取り組みをグローバルに推進しました。省エネルギーの継続、電化への切り替え、再生可能エネルギーの導入、国内営業車両のハイブリッド車/電気自動車の100%導入に向けた取り組み、ICPによる環境投資の着実な推進、サプライヤーへの働きかけ等、多角的な施策を展開しました。さらに、国際的な開示基準およびステークホルダーの要請に応えるべく、「気候変動緩和のための移行計画」の策定に着手しました。シナリオ分析、リスクと機会の評価、温室効果ガス(スコープ1、2、3)排出削減に向けた戦略とロードマップの構築、財務・投資計画との連動、ガバナンス体制の整備等、様々な観点を踏まえた具体的かつ実効性のある計画を策定し、2050年ネットゼロ目標の着実な達成に向けて戦略的な取り組みを推進しています。
ネットゼロに向けたロードマップ

体制・システム
環境マネジメント推進体制を構築し、グローバルな活動を推進するとともに、国内外における環境リスクの把握やその対策の確立に向けた活動強化に取り組んでいます。
環境マネジメント推進体制と環境監査https://www.eisai.co.jp/sustainability/environment/management/structure/index.html
具体的な取り組み
具体的な取り組みとして、川島工場(岐阜県)では、空調のエコモード運転や空調温水用ヒートポンプの高効率運転を実施するとともに、ZEB*4認証を受けたカフェテリア管理棟を使用しています。海外サイトでも、蘇州工場(中国)では、2025年2月よりボイラーの利用を停止し、代わりに自治体からパイプラインで供給される蒸気を導入し、2024年度実績として前年度と比較し約60トンのCO2排出量を削減しました。同工場では、2024年3月から省エネ管理システムの正式運用を開始しており、機器の稼働に伴うエネルギー消費データを取得し、分析することで機器の電力消費の最適化を行っています。また、欧州ナレッジセンター(英国)では、オフィスを含むサイト内に天然ガスに替わるバイオガスを導入し、2024年度実績として前年度と比較し約560トンのCO2排出量を削減しました。さらに、バイザッグサイト(インド)では、ボイラーの燃料を軽油から天然ガスに転換し、2024年度実績として前年度と比較し約760トンのCO2排出量を削減しました。これからも、国内外の工場・研究所を中心に再生可能エネルギーを継続的に導入しています。
エーザイ株式会社の営業部門では、医療従事者とデジタル機器を用いたリモート面談による情報提供を進め、営業活動には公共交通機関の利用を推奨しています。2024年度末に、国内営業車両はハイブリッド車/電気自動車への100%切り替えを果たしました。
なお、エーザイグループでは、CO2排出削減量を金額換算・見える化し、投資効果額として投資判断基準に組み込むことで、CO2排出量削減に向けた効果的な投資を推進するインターナルカーボンプライシング(ICP:社内炭素価格)制度を2022年度に導入し、継続的に活用しています。欧州の炭素税や排出権取引価格を参考に1トンあたり11,000円(80ユーロ[2022年当時])に設定し、設備投資提案時に環境価値として評価しています。
*4 ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物
(出典:環境省ZEB PORTAL https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html#phraseology)
データ
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Science Based Targets:科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標
2019 年度以降、SBT 2.0℃目標(2016年度比で2030 年度までに温室効果ガス(GHG)排出量を30% 削減)を掲げ、2022 年度まで3 年連続で目標を達成しました。これにより、GHG 排出量削減は2016 年度比で60% を超える水準まで到達しました。そのため、さらに厳しいSBT1.5℃目標を設定し、2023 年11 月にはSBT イニシアティブから承認を取得しました。新たな目標の達成に向け、全社一丸となって取り組みを推進しています。
2024年度のスコープ(1+2)排出量は49,587トンであり、前年度比96.7%でした。当社で定めたSBT1.5℃目標達成に向けたロードマップにおける2024年度排出量計画比では99.8%となり、目標を達成しました。

注) 2019年度のスコープ(1+2)の排出量実績とSBT1.5℃目標の基準年(2019年度)のスコープ(1+2)の排出量は異なります。SBT1.5℃目標の基準年の排出量は、2023年度以降のバウンダリの調整などで102,512トンとなっています。


営業車両における取組
2024年度、営業車両由来のCO2排出量は、12,464トンと前年度比7.6%増加しました。国内では、エーザイ株式会社とEAファーマ株式会社においてガソリン車のハイブリッド(HV)/電化(EV)化率100%を達成し、排出量の増加を最小限にとどめました。一方、主力のがん・脳神経用薬の使用拡大が続く米国市場では営業活動の活発化により15.6%の排出増加となりました。また、アジア・ラテンアメリカにおいても営業強化により18.9%増加しました。他方、EMEAでは、ディーゼル車からHV車への転換を進めた結果、排出量を12.0%削減することができました。
今後も、グローバルでガソリン車のHV化率向上を計画的に進め、CO2排出量削減を推進します。

エーザイ株式会社では、営業車両においてハイブリッド車(HV車)への切り替えを進めています。2024年度は、さらなる導入を進め96.1%(年度平均)まで導入率が上昇しました。電気自動車の導入も開始しており、HV車との合計で営業車両の100%が環境対応車となっています。一方で、営業車両由来のCO2排出量は1,736トンと前年度比10.0%増加しました。新製品の営業活動強化もあり、環境対応車の導入を進めるとともに、医療従事者への情報提供にデジタル機器を用いたリモート面談方式も引き続き活用し、車両使用によるCO2排出量の削減に努めています。

スコープ3の削減に向けて
スコープ3、カテゴリ1の「購入した製品・サービスに基づく排出量」については、2022年度のSBT1.5℃目標設定に際して、より正確な集計方法に変更しました。また、2024年度は更なる算定方法の精緻化を目的に、算定対象データの見直しや算定方法の変更などを行いました。その結果、2024年度の排出量は2019年度比で80.9%、前年度比で46.4%増加しました。当社のScope3排出量911,173トンに占めるカテゴリ1の割合は91%です。今後は、サプライヤーとの連携を強化するとともに、サプライヤーによるCO2排出量削減に関する1次データを集計に反映するなど、より実態を反映した集計方法を確立し、スコープ3の排出量削減を推進します。

注)2019年度のスコープ3の排出量実績とSBT1.5℃目標の基準年(2019年度)のスコープ3の排出量は異なります。SBT1.5℃目標の基準年のスコープ3排出量は、2023年度以降のバウンダリの調整などで548,122トンとなっています。

再生可能エネルギー導入実績
エーザイグループでは再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。2024年度は、バイザッグサイト(インド)における自家発電方式の大型太陽光発電設備の本格稼働を含む各事業所の取り組みや、PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)電力の活用、非化石証書(国内)や再エネ証書(海外)の購入等による再生可能エネルギー導入の取り組みを積極的に推進しました。これらの取り組みにより、エーザイグループにおける事業活動に使用する電力への再生可能エネルギー導入率は、98.7%(外部購入電力に限る)*と高水準を維持しました。
*非化石燃料使用によるコジェネ発電分を含むと導入率は98.2%となる。

CDPコーポレート質問書
CDPは、世界の機関投資家の要請を受け、企業の「環境リスク(気候変動、水セキュリティ、森林減少)に対する取り組み」を評価し、情報開示する国際的NGOです。エーザイグループは、2015年より、「CDP気候変動レポート」に回答しています。2024年に回答した「CDPコーポレート質問書2024」では、気候変動、水セキュリティともに、8段階評価(「A」、「A-」~「D」、[D-])のうち最高評価である「A」評価(リーダーシップレベル)を獲得しました。さらには、サプライチェーンの環境に配慮したビジネス展開やサプライヤーへの働きかけが高く評価され、「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」にも選定されました。

