チーフHRオフィサー(CHRO)メッセージ
エーザイはヒューマンヘルスケア理念のもと「People(患者様と生活者の皆様)の生ききるを支える企業」を目指しています。その実現に向けて、2019年にエーザイ健康宣言を発出し、従業員とご家族の健康が最重要であると位置づけ、従業員とご家族、さらには当社に関わる方々の健康維持・増進、疾病予防に取り組むことを定めました。

また、2022年の定時株主総会において定款の記載を変更し、人財価値の増大に向けて、「安定的な雇用の確保」に加えて、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」という人的資本経営の根幹となる概念を追加しました。これを契機として「社員の健康を含めたウェルビーイング」、「多様な働き方」、「社員の成長」、そして「組織、事業の成長」を柱とした「統合人事戦略」を策定し、従業員の健康の維持・増進への取り組みを強化しています。当社に集う従業員が心身健康であり、かつ最適な働き方や成長機会を活用することで、個のエナジーを解き放ち、組織のシナジーを生み出して事業の飛躍的成長につなげ、最終的には、社会的インパクトの最大化に貢献することを目指しています。

健康経営に対するエーザイの考え方
エーザイの健康宣言では「からだとこころの健康」「WorkとLifeの健康」「Socialの健康」の3つを重点戦略事項と定めています。従業員とご家族の健康維持・増進を目的として、健診受診後の二次検査受診率の向上や人間ドックの対象年齢の拡大、不妊治療と就労の両立支援、認知症保険の導入とともに、諸施策や福利厚生の充実によって働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。また、Human Capital Reportを活用した人的資本経営の積極的な情報開示を通じて社内外の繋がりを感じられるよう、対話を活性化していきます。
当社では、企業理念の実現による中長期的な企業価値の最大化に向けた社会善を効率的に実現するため、改めてマテリアリティを特定し、中期的目標を掲げています。このうち、健康経営の推進は、高エンゲージメント従業員の比率を現状の85%から2025年度に90%に上昇する、人財投資効率を2023年度の81%から2030年度に87%に上昇する、という人財価値の最大化に向けた2つの目標達成に大きく寄与すると考えます。一方、ヘルスリテラシーレベルを把握したうえでの各種施策の推進も重要と捉え、2023年度より、年1回、ヘルスリテラシーに関する全社アンケートを実施しています。リテラシー向上を通じて、いきいきと自分らしく生きる「からだ」と「こころ」の健康を保つことが重要と考えています。
健康経営の推進体制

エーザイでは、健康経営を管轄するCHROを最終責任者とした健康推進体制を構築し、全社戦略と連動した人的資本経営を推し進めています。健康を幅広くWell-beingの視点で捉え、経営課題の解決と不可分であるとの認識のもと、図示した中核の体制をコアとしながらGrowth & Operating Committeeへの定期的な進捗報告、広く従業員からの意見を収集し全社を巻き込み推進しています。それらはコラボヘルスの観点でエーザイ健康保険組合、産業医を含めた健康管理室と連携し、毎月、健康推進協議会にて従業員の健康指標の定期的な把握、さらには事業主の活動と健康保険組合の保険事業やデータヘルスに関する分析結果などを共有し、一体的な推進をめざして取り組んでいます。
加えて、「従業員の健康維持・増進」と「働き方改革」への取り組みは一体不可分であり、ワークライフベストをコンセプトとする就労環境整備とともに、従業員の健康管理、タイムマネジメント、長時間労働の是正等も進めています。直近では、社内の取組みにとどまらず、2023年度に国内製薬企業として初めてHuman Capital Reportを発出・開示したことを契機に、取引先との健康経営に関する情報交換会を開催しています。
(ワークライフベスト:ワークとライフを共に最適なものにするという社内標語)
戦略
健康経営を推進するにあたっては、目標と健康課題を解決するための施策および目標達成に必要な指標を示した「戦略マップ」を策定しています。

目標・指標

健康宣言における3つの重点戦略事項を中心に目標と指標を掲げています。Physicalにおいてはエーザイ健康保険組合と連携し、各種健診の充実、禁煙補助、健康イベントの実施、予防接種等、健康に対する積極的な費用投入をはかっています。2024年度に導入した健康予測シュミレーションを活用し、生活習慣病予防/喫煙率低下へ取り組むことで、医療費の抑制に一定の効果を上げていきます。Well-beingに関しては高ストレスの最大要因である人間関係をマネジメント研修の強化によって高ストレス者・総合健康リスク値の低減をはかり、健康充実度向上をはかっていきます。メンタルヘルスケアは従来からの復職プログラムの運用にて安心して復職できるシステムを継続し、睡眠については不眠症治療薬の担当部署と連携して充実度を高めていきます。Workにおいては長時間勤務の是正をはかるとともに、ハイブリッドワークや有給休暇取得を推進すべくバカンス休暇制度の取得を全社で推進していきます。さらに65歳以降勤務など新たな制度構築に積極的にチャレンジしていきます。Lifeにおいては運動促進イベントの実施や、キャリア支援として育児・介護関連諸制度の取得率アップ、社内外越境やリフレッシュ休暇の促進を目指しています。
社内外とのつながりを感じる環境では、従業員一人ひとりが社内だけでなく、ご家族、地域社会との関係など社外を含めたつながりを感じることができる機会提供を通じて心身の健康につとめていきます。
健康推進施策
業務パフォーマンス指標
*E-HCI(Eisai Human Capital Index):効率的な社会的インパクト創出に寄与する人的資本経営の評価指標による

健康予測シミュレーション
「生活習慣を変えると未来がかわる」をコンセプトとした健康予測(疾病発症予測)シミュレーションを従業員に提供しています。現時点の健康診断結果と生活習慣に基づいた疾病発症予測と、食事・睡眠・運動などの生活習慣を改善した場合の健康予測シミュレーションとなります。本シミュレーションも活用し、従業員の行動変容を促し健康の維持増進に繋げていきます。

データ
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
定期健康診断受診率 | 99.0% | 99.9% | 100.0% | |
糖代謝異常者率 | 2.10% | 0.70% | 0.80% | |
血圧有所見者率 | 0.20% | 0.10% | 0.30% | |
適正体重維持者率 | 68.7% | 69.6% | 68.1% | |
睡眠による十分な休養が取れている社員の割合 | 73.0% | 73.1% | 70.4% | |
運動習慣者比率 | 26.5% | 27.6% | 27.9% | 1回30分以上、運動をしている社員の比率 |
喫煙率 | 11.8% | 10.9% | 10.3% | |
特定保健指導参加率 | 6.8% | 76.4% | 64.0% | |
精密検査受診率 | 78.6% | 72.9% | 89.6% | |
のうKNOW実施人数(延べ) | ー | 1,322 | 986 | |
健康投資額 | ー | 1,290 | 1,378 | 単位:万円 |
1人あたりの医療費 | 167,000 | 175,000 | 196,000 | 単位:円 |
ストレスチェック受検率 | 96.8% | 97.3% | 97.3% | |
高ストレス者率 | 9.3% | 8.3% | 9.4% | |
総合健康リスク値 | 86 | 83 | 84 | |
アブセンティーズム(休職者割合) |
1.21% |
1.18% | 1.17% | |
プレゼンティーズム | ー | 86.0% | 83.2% | SPQ(1項目の設問)形式による全社調査結果 ※回答率はそれそれ67%、98% |
エンゲージメント(士気) |
79 |
79 | 81 |
可視化ツールによる士気に関するエンゲージメントスコアの平均値 |
従業員満足度 | 2.8 | 2.8 |
2.8 |
ストレスチェックにおける仕事の満足度 |
ヘルスリテラシーアンケート回答率 | ー | 59.8% | 66.6% | |
健康に関するイベント・セミナー参加者数 | ー |
555 |
818 | |
女性の健康関連セミナ参加率 |
13.0% |
10.0% |
95.8% | |
年次有給休暇の平均取得日数 |
11.2 |
13.3 | 12.8 | |
平均月間総実労働時間 |
163 |
178 | 169 | |
長期欠勤・休職者数 | 40 | 38 | 37 | 連続1ヵ月以上の長期欠勤・休職者数 |
労災発生件数 |
21 | 11 | 8 | |
離職率 | 4.0% | 4.4% | 4.4% |
社外からの表彰
当社は、従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に取り組んでいる企業として、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「健康経営銘柄2025」に初めて選定されました。また、経済産業省と日本健康会議が実施する「健康経営優良法人(大規模法人部門)2025 ~ホワイト500~」は 6回目の認定となります。

人的資本調査2024において、人的資本リーダーズ・人的資本経営品質(ゴールド)に2年連続ダブル選出

経済産業省・東京証券取引所によるなでしこ銘柄に2年連続選定(2025年3月)
