2011年6月29日掲載
米国のエーザイ拠点でコロンビア人医師が研修を開始
Dr. Laureno Mestra(コロンビア出身)は2011-2012年のTDRフェロー(研修生)として、2011年6月よりEisai Inc.(エーザイ米国拠点 ニュージャージー州Woodcliff Lake)で研修を開始しました。世界中での医薬品アクセスの向上への活動の一環として、エーザイはTDRに関わり、開発途上国におけるヘルスケアの能力強化に貢献することを願っています。TDRフェローは製薬企業において 臨床研究の研修に参加することにより、医薬品開発の全体像を学び、開発途上国の臨床研究の土壌育成と拡大に貢献していくことが期待されます。
TDR(熱帯医学特別研究訓練プログラム)は、世界保健機構(WHO)を拠点として運営されています。TDRにおいては開発途上国の研究者が臨床研究・開発分野でフェローとして製薬企業に招かれ、臨床開発や臨床試験のマネジメントスキルを学びます。帰国後も、熱帯感染症の診断と治療のグローバルな研究開発の分野で指導的な役割を担うことが期待されます。
エーザイにおける第一回TDRフェローはナイジェリア出身のDr. Glory Ogunfowokanで、2010年4月に米国のEisai Inc.で研修を開始し、2011年3月に帰国しました。Dr. Ogunfowokanはエーザイでシャーガス病治療薬、脳性マラリア治療の補助療法、侵襲性真菌感染症治療薬の開発に携わりました。ナイジェリアに帰国後はエーザイで得た知識と経験を活用し、研究者チームを率いて新たな研究領域を開拓し、マラリア、結核、HIV感染などの予防・治療薬・ワクチンの開発を行うことを目指しています。
エーザイにおける第二回TDRフェローはコロンビア出身のDr. Mestraで、コロンビアでも一般的な疾患である非定型慢性シャーガス病を対象に、DNDi(「顧みられない病気のための新薬イニシアティブ」)がエーザイからの新薬候補を用い実施するフェーズ2試験の支援にも関わります。加えて、抗マラリア薬の開発初期段階にも関与する予定で、このような経験は、コロンビアでの臨床診療業務や臨床研究に直接役立つことが期待されています。
Dr. Mestraはコロンビアで医学教育を受け、内科と疫学を専門とし、メデジンのCES大学で臨床研究の教授を務めています。


—Eisai Inc. Senior Director(感染症薬開発))
- 第二回TDRフェロー(2011-2012年)
Dr. Mestra(コロンビア):臨床研究分野での関心と研修への抱負 - 第一回TDRフェロー(2010-2011年)
Dr. Ogunfowokan(ナイジェリア):エーザイでの研修内容とナイジェリア帰国後の計画
TDRへのエーザイの関わり
「熱帯医学特別研究訓練プログラム(TDR)」は、貧困層や不利な状況にある人々で見られる主要な疾患を対象とする、世界中のさまざまな連携活動間の調整を図るグローバルなプログラムです。1975年に発足したTDRは、世界保健機関(WHO)を拠点として運営されており、国連児童基金(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、およびWHOの出資を受けています。
2009年にTDRは12ヶ月にわたる第1回 臨床研究・開発に関するキャリア開発フェローシップに、疾病流行国の研究者を招きました。これら発展途上国においても質の高い臨床研究・開発を推進するために、人材開発を行うことがこのプログラムの目的です。プログラムの参加者(TDRフェロー)にとって、特に貧困層や社会の底辺で蔓延する感染症を対象とした診断薬・医薬品やワクチンに関し、製品開発の能力を強化する機会となります。プログラムの終了後は、参加者は母国の研究機関に戻り、「顧みられない熱帯感染症」の診断・治療のグローバル開発において指導的な役割を担うことが期待されます。
このプログラムの参加者は、主要な製薬企業において臨床開発や臨床試験のマネジメントスキルを学ぶ機会が与えられます。国際製薬団体連合会(IFPMA)は協賛する製薬企業の調整を実施し、1年間の受け入れが可能な企業の募集を行います。エーザイは2009年の第1回の呼びかけに応じ、IFPMAを通して協賛を表明しましたが、その後続けて2011年-2012年のプログラムにも参画します。
第二回TDRフェロー(2011-2012年)
Dr. Mestra(コロンビア):臨床研究分野での関心と研修への抱負
Dr. Laureno Mestraはコロンビアのメデジン出身で、エーザイにおける二人目のTDRフェローとして、2011年6月よりエーザイの米国拠点(Eisai Inc., Woodcliff Lake, New Jersey)において研修を開始する予定です。
Dr. Mestraはコロンビアで医学教育を受け、内科と疫学を専門とし、メデジンのCES大学で臨床研究の教授を務めています。現在、以下の研究分野について関心をお持ちです。
- 1.アメリカ皮膚リーシュマニア(他の兆候も含む)
- 2.「顧みられない熱帯病」に使用する医薬品の適正な選択
- 3.熱帯病の新しい適正な診断戦略
- 4.マラリアとデング熱を対象とした、開発中のワクチンと医薬品
Dr. Mestraは基本的にDr. Ogunfowokanと同様の内容の研修を受講しますが、エーザイの米国と日本の拠点の両方での研修が予定されているため、米国と日本の両方における医薬品開発について学ぶことを期待しています。Dr. Mestraは製薬企業の観点で臨床試験について学ぶことにより、臨床研究についてより深く学び理解し、臨床試験の計画の実施に関する知識とスキルに磨きをかけたいと考えています。
研修の終了後は母国の研究施設において、新たなスキルや知識を用い、以下のような臨床研究をデザイン、実施し、結果の分析や発表を行うことを計画しています。
- 1.熱帯病を対象とした臨床試験
- 2.熱帯病を対象とした、コホート研究・クロスセクショナル(症例対象)研究・ケースコントロール(横断)研究
- 3.診断法の評価
- 4.コロンビアやその他の発展途上国における、熱帯病ならびに「顧みられない疾患」のコントロールプログラム
他にも、熱帯病ならびに「顧みられない疾患」の臨床試験の研修として、地域ベースの学術会議を企画・開催することも計画しています。
非定型慢性シャーガス病はコロンビアでも一般的な疾患ですが、Dr. MestraはエーザイがDNDi(「顧みられない病気のための新薬イニシアティブ」)と共同で実施する、シャーガス病治療薬のフェーズ2試験にも直接関与する予定です。この仕事を通して、Dr. Mestraはシャーガス病の治療に関し広範な経験を得て、コロンビアに帰国してからも直ちにその経験を活用できることを期待しています。加えて、抗マラリア薬の初期段階の開発にも関与する予定で、この経験もコロンビアでの仕事に直接生かすことを望んでいます。
第一回TDRフェロー(2010-2011年)
Dr. Ogunfowokan(ナイジェリア):エーザイでの研修内容とナイジェリア帰国後の計画
Dr. Glory Ogunfowokanはナイジェリア出身で、エーザイにおける最初のTDRフェローです。2010年8月にエーザイの米国拠点(Eisai Inc., Woodcliff Lake, New Jersey)において研修を開始しました。
Dr. Ogunfowokanは、前臨床試験段階から臨床試験段階まで、さまざまな開発ステージにある、以下の3つの医薬品開発プロジェクトに関わりました。
- 1)非定型慢性シャーガス病治療を適応とした新薬候補
- 2)脳性マラリア治療の補助療法を適応とした新薬候補
- 3)侵襲性真菌感染症治療を適応とした新薬候補

Simon Collier(エーザイガバメントリレーションズ担当)
Dr. Ogunfowokanは、エーザイで以下のような内容の研修を受けました。
- 1.医薬品開発プロセス:探索研究・前臨床試験・臨床試験(フェーズ1-4) 開発プロジェクトの計画とその実行、プロジェクトチームメンバーとの関わり
- 2.医薬品業界・研究機関・CRO(委託研究機関)・コンサルタント・資金調達機関の協力関係
- 3.前臨床、フェーズ1-2試験のデザイン、医薬品開発における薬事規制当局の役割(米国FDAなど)
- 4.治験薬概要書の重要性とその内容、作成プロセス
- 5.標準作業手順書(SOP)ならびにICHガイドラインに準じた、臨床試験プロトコールの作成 GCP・ICHガイドラインと実地への適用
- 6.FDAに提出するIND年次報告の意義とその内容 ヒト初回投与量の決定
- 7.文献検索、およびFDAとのIND提出前会議 事前資料の準備
Dr. OgunfowokanのTDR研修後の予定
ナイジェリアに帰国後、Dr. Ogunfowokanは以下の分野で新たな知識やスキルを発揮したいと考えています。
- 1.熱帯病の研究を継続するマラリア・結核・HIV感染などの熱帯病を予防するワクチンの開発を目標として、新たな研究領域を開拓するチームのリーダーを務める
- 2.アフリカ出身のTDR同窓生との、臨床研究・開発における連携 熱帯病の予防ワクチンの研究と開発を目的とした助成金の申請
- 3.勤務する施設の臨床試験審査委員会(IRB)の機能強化 製薬企業と自国の臨床研究者間の研究協力の推進
- 4.臨床研究に関し、ナイジェリアの規制当局の役割強化の提唱