新興国・開発途上国での事業展開

新興国・開発途上国におけるエーザイの事業展開—医薬品アクセスの向上のために—

2018年3月28日掲載

製薬産業は、継続的な新薬開発、安定的な製品供給、適正な医薬品情報の提供によって患者様のベネフィット向上に貢献してきました。近年、新薬の開発は進んできましたが、未だ治療法が確立されておらず治療薬が開発されていない疾患も多く、今後も新薬開発の重要性は変わることはありません。

また新興国・開発途上国の一部においては、人口増加や経済発展により、中間所得層が拡大し、医薬品の需要が急速に増加しています。しかし、多くの国々では社会インフラや健康保険制度等を含む医療供給体制の整備が進んでいないこと、疾患・治療の認知度が低いこと、経済的理由などにより、十分な医薬品アクセスが確保されていない状況も見られます。

エーザイは、エーザイ・ジャパン(日本)、アメリカス、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカの5リージョン体制で、地域ごとの成長戦略を遂行していますが、医薬品アクセスの確保が特に必要と考えられるアジア・ラテンアメリカリージョンにおいて、新興国・開発途上国の医薬品アクセスの向上に貢献すべく、これまでの画期的な新薬開発・販売を通じた患者様貢献に加えて1. アフォーダブル・プライス、2. 疾患ソリューションの提供、3. 官民パートナーシップ、4. ローカル・パートナーシップをコア戦略として掲げ、複合的に医薬品アクセスの課題解決に取り組んでいます。

1. 国や疾病の状況に応じた柔軟な価格設定:アフォーダブル・プライス

新興国・開発途上国の多くでは、医療保険制度が整備されていないか、あったとしても加入者数や保険で償還される医薬品の種類が限定的なため、国民の医療費の自己負担比率が高くなっています。新興国・発展途上国では、先進国と比較して国民の平均所得は低く、多くの人々が十分な医薬品が入手できないという困難な現状にあります。(下図参照)

新興国・開発途上国の保険制度の背景(2017年 日本製薬工業協会調査より)
保険制度薬剤費 自己負担一人当たりGNI(国民総所得、Gross Net Income)
(2016年)(US$)
インド 公的医療保険制度は公務員と民間企業職員の一部のみがカバーされる。民間医療保険は存在するが、高い保険料、不十分で非効率な医療提供体制等を背景に加入率は極めて低い。世界銀行の推計では2010年時点で、全国民の25%が何らかの医療保険に加入している。 医療費の財源全体に占める家計・自己負担の割合は約60%と非常に高くなっている。 1,680
フィリピン 2013年に開始した全国民加入のPhilHealthの取り組みにより、加入率は大幅に向上しているが、患者の自己負担が大きい。 国家薬剤償還リスト収載の薬剤のみ公的病院では自己負担なし。ただし、外来患者の薬剤費は償還対象外。 3,580
インドネシア 国民皆保険は2014年にスタートし、現在人口の約66%にあたる1.7億人が加入した。 国による医薬品の償還制度は現在のところない。新制度が行き届くまで、無保険者は完全自己負担。国民皆保険制度の導入によりジェネリック医薬品の処方が増加している。 3,400

(参考:日本の一人当たりGNI: US$ 38,000)

医薬品の価格設定も医薬品アクセスの改善に貢献できるという考えのもとで、エーザイは各国の社会・経済・医療環境に合わせた「アフォーダブル・プライス(患者様が購入可能な価格)」によって、広範囲で、継続的な医薬品提供の実現に努めています。
例えばインドでは、2005年よりアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」(インドでのブランド名「Aricep」、一般名:ドネペジル塩酸塩)、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(インドでのブランド名「Parit」、一般名:ラベプラゾールナトリウム)を、インドの社会・経済・医療環境に合わせた価格で提供しています。また、2017年には新規抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」、一般名:ペランパネル水和物)もインドの患者様が購入しやすい価格で発売しました。その他のアジア諸国においても、市場調査で導かれた「患者様が新しいてんかん治療薬の効果に対して支払いたい価格」をもとに価格設定をしています。フィリピンでは、2010年2月に上市した慢性B型肝炎治療薬「Revovir」(一般名:クレブジン)についても同様の価格ポリシーに基づいたアフォーダブル・プライスを適用しました。

また、抗がん剤においてもアフォーダブル・プライスを積極的に検討しています。新規抗がん剤「ハラヴェン」(英名「Halaven」、一般名:エリブリンメシル酸塩)、「レンビマ」(英名「Lenvima」、一般名:レンバチニブメシル酸塩)では、新たな試みを模索しました。これらの薬剤を必要とされる患者様がその所得水準にかかわらず治療を受けられるよう、患者様の所得水準に応じて複数の負担価格を設定する「ティアードプライシング」を導入しています。このような患者様の自己負担を軽減する価格設定は、インド、インドネシア、ミャンマー、フィリピンなどアジア8カ国において、それぞれの国に応じたスキームで展開しています。今後も、エーザイが創出した革新的新薬を世界のより多くの患者様にお届けできるよう、各国の医療制度や経済状況に合わせた持続可能なビジネスモデルを追求していきます。

さらに、エーザイは「顧みられない熱帯病」の一つである、リンパ系フィラリア症の制圧に向けて、世界保健機関(WHO)と連携し、治療薬DEC(ジエチルカルバマジン)錠をプライスゼロで、全ての蔓延国において制圧が実現するまで提供していきます。DEC錠の製造は、先進的な製造設備を持ち、先進各国のGMP(Good Manufacturing Practice)承認を取得済みのインド・バイザッグ工場で行われており、2018年1月時点で27カ国の感染リスクのある人々に、12億錠以上が提供されました。プライスゼロによるDEC錠の提供は、グローバル生産・供給体制の最適化によって費用の効率化を実現し、エーザイの将来へ繋がるビジネスへの投資として意義があると考えています。

2. 疾患ソリューションとブランドジェネリック医薬品の活用

エーザイは、アルツハイマー型認知症やてんかんなどの中枢神経疾患を中心に、自社開発や他社からの導入を通じて新薬を提供し、それらの疾患領域についての知識を蓄積してきました。患者様視点から見た疾患ソリューションとして幅広い製品の取り揃えを進めており、その一環としてブランドジェネリック医薬品の提供も行っています。例えばインドでは、自社開発品に加えその関連疾患のジェネリック医薬品、合剤を取り揃えることにより、医療従事者および患者様により充実した治療の選択肢を提供しています。

3. 疾患・治療の認知度の低さに対する取り組み:官民パートナーシップ(PPP: Public-Private Partnership)

特に新興国・開発途上国においては、疾患あるいはその治療法の認知が十分ではないため、診断・治療の機会を得られない潜在的な患者様が数多くいます。このような課題の解決には、エーザイは、単独の取り組みだけではなく、政府関連の公的機関、民間企業、非営利団体など、各団体の知識やリソースを補完的に活用し、疾患啓発活動や診断方法の開発・提供などに取り組んでいます。

4. ローカル・パートナーシップの推進

事業環境、医療環境が国ごとに大きく異なる新興国において、いち早く、より多くの患者様のニーズに合致した医薬品をお届けするために、エーザイではローカル・パートナーとの連携を積極的に推進しています。各国で異なる医療ニーズをよく把握しており、また独特の商慣習についても経験豊富なローカル・パートナーと提携することにより、患者様の医薬品アクセスの改善を目指します。またエーザイは、ローカル・パートナーと自社品の製品情報を共有するのみならず、生産技術移譲を通じた当該国における生産能力向上にも取り組んでいます。

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