人財戦略

エーザイは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念(hhc理念)として掲げています。この企業理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。その実現にむけたマテリアリティのひとつに、「人財価値の最大化」を特定しています。社員は、イノベーションの創出を通じて企業価値を高め、hhc理念の実現に直接貢献できる唯一のステークホルダーであり、大切な財産と位置づけ、「人財」と表現しています。

 社会善を効率的に実現することをめざす上で、人財戦略における「効率化」には、費用対効果の追求や新しいテクノロジーの活用による業務効率化だけでなく、社会課題を解決したいという優れた人財が集い、それぞれの価値を最大限に発揮できる環境が整備され、多様な価値観を持つ人財が活躍できる組織風土の醸成が重要と考えています。

 さらに、人的資本経営が注目される中、人財を管理、育成、評価するといった従来の人事目線ではなく、人財の価値をどのように最大化できるかという視点が重要です。人財戦略実現に向けたKPIを開示し、継続的に改善に取り組むことは、将来的に社会善を効率的に実現することに寄与すると確信しています。

統合人事戦略

当社は、2022年の定時株主総会において、これまで定款で定めていた「安定的な雇用の確保」に、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」を追加しました。これらの社内外の変化を踏まえ、統合人事戦略を策定しました。統合人事戦略は「健康」「働き方」「成長」「事業・組織」の4象限によって構成され、それぞれが有機的に関わり合うことで、より良い企業像を追究していきます。すなわち、当社に集う従業員が健康であり、かつ最適な働き方を追求することが出来れば、主体的に学びを深めるなど人財育成も加速化し、結果としてパフォーマンスが最大化され、事業や組織の飛躍的成長につながる、と考えています。

当社は多様な人財が輝き続ける企業への進化の継続(DE&I)と人事戦略・人的資本アナリティクスが連動したデータ活用の高度化(Data Driven HR)を基盤として、「健康」「働き方」「成長」「事業・組織」の4象限の取り組みを推進し、多様な人財の活躍や他産業連携によって中長期的な人的資本などの非財務資本の価値向上に努め、イノベーションの創出による企業価値の最大化を通じて、hhc理念を実現します。

エーザイの企業価値を構成する6つの資本

*非財務資本の価値の定量化については、エーザイ価値創造レポート2023 P65をご覧ください。

従業員インパクト会計

「従業員インパクト会計」は、エーザイ単体の給与総額を出発点に、「賃金の質」(年収に合わせた限界効用や男女の賃金格差)、「従業員の機会」(昇格昇給における男女差)、「ダイバーシティ」(日本とエーザイの労働人口の男女比)、「地域社会への貢献」(地域の失業率とエーザイの従業員、エーザイの平均年収と失業保険や生活保護などのセーフティーネットとの差分を掛け合わせたもの)を調整し、社会的インパクトを算出したものです。2019年度には、269億円の価値を創出したと算出されました(※下表参照)。
また、2019年度の結果では、ダイバーシティへの課題が示唆されています。当社は、人的資本への投資、ダイバーシティへの取組み等を通じ、「従業員インパクト会計」によって可視化される社会的インパクトの向上へ継続的に取り組んでまいります。 

※下表 出典:柳 良平「従業員インパクト会計の統合報告書での開示」 『月刊資本市場』

※1 売上収益・EBITDAはセグメント情報から一定の前提で按分
※2 限界効用・男女賃金差調整後
※3 昇格昇給の男女差調整後
※4 人口比の男女人員差調整後
※5 地域失業率×従業員数×(年収-最低保障)

チーフHRオフィサー メッセージ

真坂 晃之
執行役
チーフHRオフィサー

エーザイは、hhc理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」と定め、患者様と生活者の皆様にさらに貢献すべく、他産業との連携によるエコシステムモデル(hhceco)を構築し、人々の全生涯(“生ききる”)を支える企業へ進化することをめざしています。これを実現するための主役は「社員」です。定款において、主要なステークホルダーズとして「社員」を明記しており、「安定的な雇用の確保」、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」そして「働きやすい環境の整備」を掲げています。国籍、年齢、ジェンダーといった人財の多様性が加速する現代において、社員それぞれが持つ夢や価値観を認め、活かし合い、学び合う環境や、新しい挑戦から生まれる成功や失敗を通じて、より良い成果を追求し続ける職場風土を醸成していきます。さらに、hhcecoを具現化するための原動力となる社員が、心身共に健康で、それぞれが充実した人生を“生ききる”ことを実現する人事制度の導入にも積極的に取り組みます。また、hhcecoの構築や持続的な成長ストーリーに資する人財戦略の取り組みについては、社内外のステークホルダーの皆様にご理解いただくべく、積極的に情報を開示していきます。当社は、夢を実現しようとする社員に対して、意義を感じられる仕事、自己実現を支える成長機会、そして働きやすい環境を整備し、認知症などの社会課題を解決するhhcecoを実現したいと考えています。

データ

  2020年度2021年度2022年度
全体生産性 人的資本 ROI 34.7% 32.3% 22.3%
1人あたり生産性 社員1人あたり売上高
(国内本社+国内外グループ会社)
57.5百万円 66.8百万円 67.2百万円
社員1人あたり営業利益
(国内本社+国内外グループ会社)
4.6百万円 4.7百万円 3.6百万円