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ニュースリリース

(2005年2月25日)

厚生労働省(当時厚生省)の薬剤疫学的手法検討事業の一環としてメナテトレノンを対象に実施された「骨粗鬆症用薬市販後研究事業」について


 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、1995年に厚生労働省(当時厚生省)の協力要請を受け、薬剤疫学的手法検討事業の一環として、メナテトレノン(製品名:グラケー(R) カプセル15mg)を対象とする「骨粗鬆症用薬市販後研究事業」を1997年に厚生省より引き継ぎ、開始時と同じ試験組織(試験調整医師:井上哲郎)で継続実施しております。
本事業は、骨粗鬆症治療剤において、合計4,000症例を対象に骨折予防効果やQOLの改善を指標とした日本初となる薬剤疫学的手法を用いた大規模臨床試験です。本試験は「OF(Osteoporosis Fracture) Study」と略称され、その概要は、カルシウム製剤単独投与群(以下、カルシウム単独群)と、カルシウムとメナテトレノン併用群(以下、メナテトレノン併用群)の2群に分けて36ヵ月間服用し、その後12ヵ月間の追跡観察を行い、椎体骨折の新規発現などを評価することを目的としたものです。今回、36ヵ月間の主要な評価項目である椎体骨折の新規発現などに関する結果がまとまりました。
なお、「グラケー(R) カプセル15mg」の効能・効果は、「骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善」です。


<「骨粗鬆症用薬市販後研究事業」実施の経緯>
1.
厚生省は、EBM(Evidence Based Medicine:科学的根拠に基づいた医療)を目的とする市販後調査ガイドラインを作成するために大規模疫学試験を計画しました。
2.
1995年厚生省は、薬剤疫学的手法検討事業の一環として「骨粗鬆症用薬市販後研究事業」の実施を決定しました。
3.
本事業の実施にあたり、厚生省よりメナテトレノンを対象として本試験を行うことについての協力依頼があり、当社はこの要請を受諾しました。


<試験結果の概要>
1.
主要な統計解析において、椎体骨折の新規発現抑制効果については、カルシウム単独群とメナテトレノン併用群の間に差は認められませんでした。
2.
その他の統計解析において、カルシウム単独群と比べたメナテトレノン併用群の特長が以下のように示されました。
 1)
椎体骨折の新規発現に関する層別解析では、「椎体骨折5個以上」を有する進行した症例において骨折発現が減少しました。
 2)
骨粗鬆症患者によく見られる身長低下に関する層別解析では、「閉経後30年以上」、「年齢75歳以上」、「椎体骨折5個以上」の症例において身長低下が減少しました。
 3)
ADL(日常の生活動作)では、歩行、安静時における腰背部痛の程度および持続の項目において、改善の割合が増加しました。
3.
副作用発現率(100人年当たり)は、カルシウム単独群2.9、メナテトレノン併用群3.6でした。
 100人年当たり:100人を1年間観察した場合の副作用の発現件数

現在、12ヵ月間の追跡観察を継続中であり、終了次第、大腿骨頸部骨折の新規発現などについても検討してまいります。
以上



[試験計画の概要、試験結果の概要、用語解説は参考資料をご参照ください]

本件に関する問合せ先
エーザイ株式会社 コーポレートコミュニケーション部
TEL  03-3817-5120



[参考資料]

1.
試験計画の概要
 1)
目的
原発性骨粗鬆症を対象として、以下の2群間で、3年間にわたる無作為化比較試験を行い、新規椎体骨折の発現などを評価する。更に1年間の追跡観察を行い、臨床骨折の予防効果を検討する。
  ①
カルシウム製剤単独投与群(以下、「カルシウム単独群」)
  ②
メナテトレノン製剤+カルシウム製剤併用投与群(以下、「メナテトレノン併用群」)
2)
試験期間 (治療期間および追跡観察期間)
  ①
治療(投与)期間:投与開始から36ヵ月間
  ②
追跡観察期間:治療期間終了後の12ヵ月間(投与薬剤を含めて治療法は制限なし)
3)
評価項目
  ①
主要な評価項目
治療期間における椎体骨折の新規発現
  ②
副次的な評価項目
治療期間・追跡観察期間を通じての臨床骨折(上腕骨、大腿骨、橈骨の骨折および若年成人の正常な骨でも折れるような強い外傷歴のある椎体骨折)の新規発現(48ヵ月終了後に解析)
  ③
その他の評価項目
ADL、身長など
 4)
試験期間

1996年4月~2005年3月
5)
目標症例数

椎体骨折を有するグループ 1,200例
椎体骨折を有しないグループ 2,800例
合計 4,000例

2.
試験結果の概要
 登録割付けされた全症例数:4,378 例
  ①
椎体骨折を有するグループ:
カルシウム単独群 697例、メナテトレノン併用群 695例
  ②
椎体骨折を有しないグループ:
カルシウム単独群1,496例、メナテトレノン併用群1,490例


 1)
主要な統計解析 (椎体骨折の新規発現)
 椎体骨折を有しないグループにおけるカルシウム単独群での骨折発現率(100人年当たり)は2.6、メナテトレノン併用群での発現率は2.7であり(p=0.666)、また、椎体骨折を有するグループにおけるカルシウム単独群での発現率は13.8、メナテトレノン併用群での発現率は13.8であり(p=0.929)、いずれのグループでも両群間に差は認められませんでした。(下表参照)

骨折を有しないグループ 骨折を有するグループ
カルシウム
単独群
メナテトレノン
併用群
カルシウム
単独群
メナテトレノン
併用群
解析採用例 1,122例 1,117例 516例 502例
骨折発現例 71例 76例 152例 151例
骨折発現率
(100人年当たり)
2.6 2.7 13.8 13.8
p値 0.666 0.929
    100人年当たり : 100人を1年間観察した場合の骨折の発現件数

 2)
その他の統計解析
 事前に計画されたその他の統計解析は、統計的推測の多重性にかかわる調整を行っていませんが、両側10%の有意水準で両群間に下記の差がみられました。
  ①
主要な評価項目(椎体骨折の新規発現)に関して、年齢、閉経後年数、BMI(Body mass index)および開始時椎体骨折数で層別解析を実施しました。その結果、「開始時椎体骨折5個以上」の症例において、メナテトレノン併用群およびカルシウム単独群の骨折発現率は、それぞれ20.3および33.2であり、メナテトレノン併用群がカルシウム単独群に対して椎体骨折の発生が減少しました(p=0.029)。(下表参照)

骨折を有するグループ
「開始時椎体骨折5個以上」
カルシウム
単独群
メナテトレノン
併用群
解析採用例 79例 89例
骨折発現例 46例 34例
骨折発現率
(100人年当たり)
33.2 20.3
p値 0.029

  ②
身長に関する統計解析においては、年齢、閉経後年数、BMI、開始時椎体骨折数などで層別解析を実施しました。その結果、「75歳以上」、「閉経後年数30年以上」および「椎体骨折数5個以上」のそれぞれの症例で、メナテトレノン併用群がカルシウム単独群に対して身長低下が減少しました(p=0.100~p<0.001)。
  ③
ADLに関する統計解析においては、歩行、行事への参加、安静時の腰背部痛の程度および持続並びに運動時痛を比較しました。その結果、12ヵ月までの間で、歩行、安静時における腰背部痛の程度および持続で、メナテトレノン併用群がカルシウム単独群に対してADLが改善する割合が増加しました(p=0.092~p=0.001)。


なお、上述以外につきましては、両群間に差は認められませんでした。

 3)
安全性(有害事象および副作用)
有害事象の発現率(100人年当たり)はカルシウム単独群9.2、メナテトレノン併用群10.1であり(p=0.181)、また、副作用の発現率はカルシウム単独群2.9、メナテトレノン併用群3.6でした(p=0.041)。
以下に、p値が10%を下回った項目を示します。
  ①
有害事象については、椎体骨折を有しないグループにおいて、カルシウム単独群7.9、メナテトレノン併用群9.3でした(p=0.062)。
  ②
副作用については、椎体骨折を有しないグループにおいて、カルシウム単独群2.6、メナテトレノン併用群3.6でした(p=0.031)。
  ③
器官分類についてみれば、発現率(100人年当たり)は下表のとおりでした。

[有害事象]
器官分類 カルシウム
単独群
メナテトレノン
併用群
p値
皮膚・皮膚付属器障害 0.2 0.6 <0.001
膠原病 0.1 0.0 0.026
消化器障害 2.0 2.5 0.062
一般的全身障害 0.2 0.6 0.003

[副作用]
器官分類 カルシウム
単独群
メナテトレノン
併用群
p値
皮膚・皮膚付属器障害 0.1 0.5 <0.001
聴覚・前庭障害 0.0 0.1 0.081
一般的全身障害 0.0 0.2 0.018


[用語解説]
  1. 薬剤疫学
    人間集団内における薬剤投与の安全性や有効性などを観察して、それらの分布や因果関係などを究明し、研究の成果を薬剤の適正使用などに応用する学問のことをいう。
  2. ADL(Activities of Daily Living)
    日常生活動作または日常生活活動のことをいう。
  3. 椎体骨折
    椎体とは背骨を構成する臼状の骨で、二十四個が弓なりに連なっている。椎体骨折とは、この椎体がつぶれるようになる骨折のことをいう。
  4. 有害事象
    投与薬剤との因果関係に関わりなく薬剤投与期間中に新たに発現あるいは増悪した医学的に好ましくない全ての所見のことをいう。
  5. QOL(Quality of Life)
    生活の質のことをいう。衣食住に加えて心の豊かさや満足度も含めた「生活の質」と解釈される。
  6. 層別解析
    例えば、年齢を65歳未満、65歳以上75歳未満、75歳以上などの年齢階級(サブグループ)ごとに比較する解析のことをいう。
  7. 原発性骨粗鬆症
    骨粗鬆症の原因となる基礎疾患が特定できない骨粗鬆症のことをいう。
  8. BMI(Body mass index)
    体重指数のことで、肥満度の指標として使われる。
    「体重(kg) ÷ 身長(m)2」で計算する。

以上