1889(明治22)年8月15日、山に囲まれた福井県丹生郡糸生村で、内藤菊次とふじの間に第6子(3男)が生まれた。エーザイ創業者・内藤豊次である。その豊次のキャリアは、薬とは何ら関係がない、大阪の貝ボタン工場から始まった。豊次、15歳のときである。
工場では掃除や使い走りをする、いわゆる雑用係だったが、義兄から学んだ得意の英語を生かして、1年後にはドイツ商館ウィンケル商会へ入社し、輸出業務の一部を任された。1909(明治42)年、兵役のためにウィンケル商会を退社し2年の軍隊生活に入る。ここで、教官から看護卒(衛生兵)を命じられ、これが豊次を薬の業界に入らせるきっかけとなった。