第10回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において aducanumabの臨床第Ⅰb相試験の長期継続投与に関する最新データ発表のお知らせ

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2017年11月1日から4日まで米国マサチューセッツ州ボストンで開催された第10回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer's Disease: CTAD)において、当社とバイオジェン・インク(本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)がアルツハイマー病の治療薬として共同開発しているaducanumab(抗アミロイドβ抗体)について、バイオジェンが実施中の臨床第Ⅰb相試験の長期継続投与に関する最新データの発表をしたことをお知らせします。2017年10月23日に当社とバイオジェンはaducanumabの共同開発・共同販促に関するグローバルな提携契約に調印しています。

本学会において、実施中の臨床第Ⅰb相試験における、漸増投与で最長24カ月および3、6、10mg/kgの固定用量で最長36カ月のaducanumab投与のデータを含む発表がされました。発表の概要は以下の通りです。

  • 漸増用量群の24カ月長期継続投与において、アミロイドプラークの減少と臨床的な疾患進行率に対する持続的な有用性が示唆されました。
  • 漸増用量群の24カ月長期継続投与では、固定用量群(3、6、10mg/kg)の同期間で観察された結果(用量依存的および時間依存的なアミロイドプラークの減少)との一貫性が見られました。
  • 固定用量群(3、6、10mg/kg)の36カ月の長期継続投与の結果はこれまでに発表済みの臨床第Ⅰb相試験の解析と一貫性があり、進行中の早期アルツハイマー病を対象とした臨床第Ⅲ相試験のデザインを支持するものです。

今回の長期継続投与に関する新たなデータを含むaducanumabの臨床第Ⅰb相試験でこれまでに得られたデータは、Aβ仮説に基づく創薬への確信をより強めるものであり、当社はバイオジェンとの共同開発をさらに進め、一日も早くAβ仮説に基づく世界初の次世代AD治療剤の創出をめざします。

以上

<参考資料>

1. Aducanumab(BIIB037)について

アルツハイマー病の次世代治療薬として、日本、米国や欧州などで臨床第Ⅲ相試験が進行中の治験薬です。Aducanumabは、リバース・トランスレーショナル・メディシン(RTM)と呼ばれるNeurimmune社のテクノロジー・プラットフォームを用いて作成されたヒト遺伝子組換えモノクローナル抗体(mAb)であり、認知障害の兆候のない健康な高齢者、または進行が異常に遅い認知機能障害のある高齢者から採取した、非特定化B細胞ライブラリーに由来します。バイオジェンは、Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとにaducanumabを導入しました。エーザイは、2017年10月23日にaducanumabについてオプション権を行使し、バイオジェンと共同開発しています。

Aducanumabは、可溶性オリゴマーと不溶性線維などが凝集してアミロイドプラークを形成しうる形態のアミロイドβ(Aβ)を標的とすると考えられています。これらのAβは、アルツハイマー病患者の脳内でアミロイドプラークを形成します。非臨床データおよびこれまでに得られた臨床第Ⅰb相試験データに基づき、aducanumab投与はアミロイドプラークのレベルを下げることが示されています。

2017年4月にaducanumabは厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象となっています。2016年9月には米国食品医薬品局(FDA)のファストトラック指定、2016年8月には欧州医薬品庁(EMA)のPRIME(プライオリティー・メディシンズ)制度の対象になっています。

2. Aducanumabの臨床第Ⅰb相試験について

本試験は、プロドローマルおよび軽度アルツハイマー病の患者様を対象とした安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および臨床的有用性を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、反復投与試験です。この試験には、1、3、6、10mg/kgを用いる固定用量群および漸増投与群(最大投与量10mg/kg)が含まれています。

第Ⅰb相長期継続投与試験において最も多く報告された有害事象は、頭痛、転倒、およびアミロイド関連画像異常(ARIA)でした。第Ⅰb相試験においてaducanumabの投与を受けた185名の患者様のうち、46名にARIA-E(浮腫)が発現しました。同じ用量のaducanumabの継続投与を受けた患者様において、新たなARIA-Eの発現はありませんでした。