抗てんかん剤ペランパネルについて日本を含むアジアの難治性部分てんかん患者における臨床第Ⅲ相試験結果を発表第49回日本てんかん学会学術会議にて口頭発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤ペランパネル水和物(一般名、以下ペランパネル、海外製品名「Fycompa®」)について、日本を含むアジアでの難治性部分てんかんに対する臨床第Ⅲ相試験結果(335試験)において、プラセボに比較して、有意に高い発作頻度抑制効果を示したことを、第49回日本てんかん学会学術会議(10月30日∼31日、長崎)において口頭発表しましたので、お知らせします。

本臨床試験結果等をもとに、ペランパネルについて、2015年7月に日本において、てんかんの部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で、新薬承認申請を行なっています。

335試験は、日本を含むアジアでの難治性の部分発作を有する12歳以上のてんかん患者様710名を対象とした、他剤併用時におけるペランパネルの有効性および安全性を評価する臨床第Ⅲ相試験です。本試験では、1∼3種類の抗てんかん剤による治療を受けている対象患者様が、ペランパネル群(4、8、12mg)あるいはプラセボ群のいずれかに無作為割付されました。

本試験の結果、主要評価項目である発作頻度変化率(投与後28日間あたりの発作回数の投薬前からの変化の割合)は、プラセボ群では-10.8%、ペランパネル群(4、8、12mg)では、それぞれ-17.3%、-29.0%、-38.0%となり、ペランパネル8mgおよび12mg群は、プラセボ投与群との比較で統計学的に有意な発作減少を示しました(p=0.0003 および p<0.0001)。

また、副次評価項目である二次性全般化発作の発作頻度変化率はプラセボ群では-12.1%、ペランパネル群(4mg、8mg、12mg)ではそれぞれ、-17.9%、-45.0%、-52.5%となり、ペランパネル投与は、二次性全般化発作においても用量依存的に発作頻度を減少させ、特に12mg群では、50%以上の発作頻度の減少を示しました。

ペランパネル群で確認された主な有害事象(発生頻度10%以上)は、浮動性めまい、傾眠、鼻咽頭炎でした。

なお、本学会では、国際共同治験として実施した、全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC)に対する332試験1のアジア太平洋地域(日本、中国、韓国、インド、オーストラリア)の部分集団の解析結果についても発表しました。332試験は、PGTC発作を有する12歳以上の患者様164名を対象とした、他剤併用時におけるペランパネルの有効性、安全性を評価する臨床第Ⅲ相試験であり、主要評価項目の発作頻度変化率および副次評価項目である発作頻度50%減少達成率において、プラセボに対して統計学的に有意な改善を示しました。部分解析の結果、アジア太平洋地域の患者様(42名)における発作頻度変化率、発作頻度50%減少達成率は、いずれも既に発表済の全体結果と同様であり、有害事象についても大きな地域差はありませんでした。

ペランパネルは、自社創製のファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択的、非競合AMPA受容体拮抗剤です。本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法を適応として、欧米の他、マレーシア、タイ、フィリピン、韓国などアジア諸国を含めた45カ国以上で承認を取得し、25カ国以上で「Fycompa」の製品名で販売されています。さらに、12歳以上のPGTC発作に対する併用療法について、2015年6月に米国および欧州で適応拡大の承認を取得しています。

当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、ペランパネルをはじめ、本領域に豊富な製品ラインナップを有しており、複数の治療オプションを提供することで、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に引き続き貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. ペランパネル水和物(一般名、以下ペランパネル、海外製品名「Fycompa」)について

ペランパネルは、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。

本剤は1日1回経口投与する錠剤です。12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む、Partial-onset seizures (with or without secondarily generalized seizures)) に対する併用療法を適応として、45カ国以上で承認を取得し、25カ国以上で販売されています。また、12歳以上の全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC(Primary Generalized Tonic Clonic) seizures)に対する併用療法については、2015年6月に米国および欧州で承認を取得しました。

日本では、2015年7月に主に335試験と332試験の結果に基づき、難治性の部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で新薬承認申請を行いました。

さらに、欧米にて懸濁液の剤型追加の承認申請を2015年6月に行いました。加えて、部分てんかんの小児患者様を対象に欧米で臨床第Ⅱ相試験を実施しています。

2. 335試験の概要

※左右にスクロールできます

試験名称 難治性の部分発作を有するてんかん患者様を対象とした他剤併用時におけるペランパネルの有効性及び安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
対象 1∼3種類の抗てんかん剤治療を受けている部分発作を有する12歳以上の患者様710名
投与法 ペランパネル 4mg/日、8mg/日、12mg/日、またはプラセボを1日1回就寝前に経口投与
治療期間 観察期 6週間
治療期(治療漸増期6週間及び治療維持期13週間) 19週間
継続投与期 10週間以上
実施地域 日本、中国、韓国、オーストラリア、タイ、マレーシア、台湾
主要評価項目 発作頻度変化率: 28日間あたりの発作頻度の観察期(投薬前)からの変化率
結果
  • 発作頻度変化率において、プラセボ群では-10.8%、ペランパネル群(4、8、12mg)では、それぞれ-17.3%、-29.0%、-38.0%となり、ペランパネル8mgおよび12mg群は、プラセボ群との比較で統計学的に有意な発作減少を示しました(p=0.0003 および p<0.0001)。
  • 副次評価項目である発作頻度50%減少達成率(投与後28日間あたりの発作頻度が投薬前に比較して50%以上減少した被験者の割合)は、プラセボ群では、19.4%、ペランパネル群(4、8、12mg)ではそれぞれ23.0%、36.0%、43.3%となり、ペランパネル8mgおよび12mg群は、プラセボ群との比較で統計学的に有意な改善を示しました(p=0.0005 および p<0.0001)。
  • 同じく副次評価項目である二次性全般化発作の発作頻度変化率はプラセボ群では、-12.1%、ペランパネル群(4mg、8mg、12mg)ではそれぞれ、-17.9%、-45.0%、-52.5%でした。
主な有害事象 ペランパネル群で10%より発生頻度が高い主な有害事象は、浮動性めまい、傾眠、鼻咽頭炎でした。

3. 332試験の概要1

※左右にスクロールできます

試験名称 強直間代発作を有する全般てんかん(PGTC)患者様を対象として、他剤併用時におけるペランパネルの有効性及び安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
対象 1∼3種類の抗てんかん剤治療を受けているPGTCを有する12歳以上の患者様164名
投与法 プラセボ対照、ペランパネルを1日1回経口投与、治療漸増期に8mg/日まで漸増し、治療維持期に8mg/日投与
治療期間 観察期(スクリーニング期及び観察期) 最長12週間
治療期(治療漸増期4週間及び治療維持期13週間) 17週間
継続投与期 38週間以上
実施地域 米国、欧州、日本、アジア
主要評価項目 PGTC発作頻度変化率(28日間あたりのPGTC発作頻度の観察期からの変化率)
結果
  • PGTC発作頻度変化率は、ペランパネル群で-76.5%となり、プラセボ群における-38.4%との比較で統計学的に有意な減少を示しました(p<0.0001)
  • PGTC発作頻度50%減少達成率(28日間あたりのPGTC発作頻度が観察期に比較して50%以上減少した被験者の割合)は、ペランパネル群は64.2%であり、プラセボ群の39.5%と比較して統計学的に有意な改善を示しました(p=0.0019)
  • ペランパネル群では、30.9%の患者様が治療維持期13週間にわたりPGTC発作について無発作の状態が維持されました(プラセボ群では12.3%)
主な有害事象 ペランパネル群で10%より発生頻度が高く、かつプラセボ群より発生頻度が高い主な有害事象は、浮動性めまい、疲労、頭痛、傾眠、易刺激性でした。
部分解析結果
  • アジア太平洋地域での投与例(42例)において、PGTC発作頻度変化率は、ペランパネル群で-66.8%とプラセボ群-38.4%、PGTC発作頻度50%減少達成率は、ペランパネル群で59.5%、プラセボ群で40.5%であり、全体結果と同様でした。また有害事象に大きな地域差はありませんでした。

4. てんかんについて

てんかんの患者様数は、日本が約100万人、米国が約290万人、欧州が約600万人、世界中で約6,000万人と報告されています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず2、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC)は、全般てんかんにおける最も一般的かつ重篤な発作型の一つであり、全般てんかんの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます3

  • 1

    French JA, et al. Perampanel for tonic-clonic seizures in idiopathic generalized epilepsy. Neurology 2015; 85, 950–957

  • 2

    “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed June 19, 2015,
    http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

  • 3

    Hauser WA, et al. Epilepsia, 34(3):453-468,1993