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ニュースリリース

2015年6月1日

第51回米国臨床腫瘍学会年次総会において抗がん剤「レンビマ®」の腎細胞がんを対象とする臨床第II相試験結果を口頭発表
―エベロリムスとの併用投与において有意なPFSの延長を示す―

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の新規抗がん剤「レンビマ®」(一般名、レンバチニブメシル酸塩、以下 レンバチニブ)の転移性腎細胞がんを対象とした臨床第II相試験(205試験)の結果、レンバチニブ/エベロリムス併用投与群は、エベロリムス単剤投与群に比較して主要評価項目である無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を有意に延長したことをお知らせします(併用投与群14.6カ月vs エベロリムス単剤群5.5カ月(中央値)、ハザード比0.40(95%信頼区間 = 0.24-0.68)、p<0.001)。また、レンバチニブ単剤投与群のPFS中央値は7.4カ月であり、エベロリムス単剤投与群に対する延長を示しました(ハザード比0.61(95%信頼区間 = 0.38-0.98)。本試験結果は、米国シカゴで開催されている第51回米国臨床腫瘍学会年次総会において、本日、口頭発表されます。

 本試験は、VEGFおよびその受容体を標的とする薬物による治療歴を有する転移性腎細胞がんの患者様を対象とした、レンバチニブ(18mg)/エベロリムス(5mg)併用投与、レンバチニブ単剤(24mg)投与、エベロリムス単剤(10mg)投与の3群の有効性と安全性を比較する、多施設共同、無作為化、非盲検試験として欧米で実施され、153人の患者様が各群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられました。

 本試験では、主要評価項目のPFS以外に、副次評価項目として奏効率(objective response rate: ORR)、全生存期間(overall survival: OS)などが評価されました。ORRにおいては、併用投与群およびレンバチニブ単剤投与群は、エベロリムス単剤投与群に対する改善を示しました(併用投与群(43%)、レンバチニブ単剤投与群(27%)、エベロリムス単剤投与群(6%))。また、OSに関しては、2014年12月時点におけるアップデート解析で、併用投与群におけるエベロリムス単剤投与群に対する延長が示唆されました(ハザード比0.51(95%信頼区間 = 0.30-0.88))。
 本試験において確認された主な有害事象は、併用投与群では、下痢、食欲減退、疲労であり、グレード3以上(有害事象共通用語規準)の主な有害事象は、下痢、高血圧、疲労でした。

 腎細胞がんは、腎臓における最も発生頻度の高いがんです。手術が難しい進行性や転移性の腎細胞がんでは、分子標的薬による治療が標準ですが、5年生存率が低く、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病です。

 治験責任医師の代表者である米国のメモリアル スローン ケタリングがんセンターの腫瘍内科で腎臓がんの専門医であるRobert Motzer医師は、「難治性の転移性腎細胞がんでは治療選択肢の拡大が望まれています。本試験結果により、治療法が限られている転移性腎細胞がんにおいて、レンバチニブが新たな役割を担える可能性が示唆されました」と述べています。

 今回の試験結果は、根治切除不能または転移性腎細胞がんの二次治療として全米総合がん情報ネットワーク(The National Comprehensive Cancer Network:NCCN)の診療ガイドラインで推奨されている薬剤のひとつであるエベロリムス単剤に対して、レンバチニブ/エベロリムス併用の優位性を示唆するものです。なお、現在、世界の主要国で、根治切除不能または転移性腎細胞がんの二次治療の適応で承認されている併用療法はありません。

 レンバチニブは、血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な分子標的治療薬です。現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で、米国、日本、欧州で承認を取得し、米国、日本で販売を開始しています。その他、世界7カ国で申請中です。

 当社は、205試験結果を審査当局と共有し、今後の腎細胞がんに係る適応での開発・申請計画について協議をしています。当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンバチニブメシル酸塩(商品名:レンビマ)について
 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。また、本剤は、VEGFR2とのX線共結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された薬剤であり、速度論的解析からは、標的分子に素早く結合し強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています1。現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で、米国、日本、欧州で承認を取得し、その他、世界7カ国で申請中です。また、肝細胞がん(フェーズIII)や子宮内膜がん(フェーズII)、非小細胞肺がん(フェーズII)、腎細胞がん(フェーズII)など複数のがん腫を対象にした臨床試験が進行中です。なお、レンバチニブは、日本(甲状腺がん)、米国(局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんの治療に関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. 新規結合様式(タイプV)について1
 キナーゼ阻害剤は、標的キナーゼへの結合部位と阻害剤が結合した際にキナーゼがとるコンフォーメーションの違いにより、タイプI∼Vに分類されます。これまでに承認されているチロシンキナーゼ阻害剤の多くはタイプIあるいはタイプIIに属しますが、レンバチニブは、X線結晶構造解析により、既存薬とは異なるタイプVの結合様式を有する阻害剤であることが明らかになりました。また、レンバチニブは速度論的解析実験から素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されており、これには、新規結合様式が寄与していると推察されています。

3. 腎細胞がんについて
 腎細胞がんは、腎臓における最も発生頻度の高いがんで、尿細管の細胞ががん化したものです。罹患率は50歳代後半以降に増加し、また女性より男性に多く発症するとされています。腎細胞がん、腎盂がんを含む腎がんの罹患者数は、2012年において世界で約33万8千人、日本では約1万7千人、米国では約5万8千人、欧州では約11万5千人と推定されています2。標準療法は外科的治療が中心ですが、進行性や転移性の場合は、分子標的薬を中心とする治療が主体となります。

1 Okamoto K, et al. Distinct Binding Mode of Multikinase Inhibitor Lenvatinib Revealed by Biochemical Characterization. ACS Med. Chem. Lett. 2015; 6, 89–94
2 GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/