国内において抗がん剤「レンバチニブメシル酸塩」が希少疾病用医薬品に指定

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、当社が創製したマルチキナーゼ阻害剤「レンバチニブメシル酸塩 (以下 レンバチニブ)」が、甲状腺がんを予定される効能・効果として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けたことを、発表しました。

レンバチニブは、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)の受容体であるVEGFR2やRET(Rearranged During Transfection)のチロシンキナーゼ、および血管新生や腫瘍増殖に関わる他の複数のチロシンキナーゼに対してユニークな阻害プロファイルを有する、血管新生・腫瘍増殖阻害剤であり、これまで実施された臨床試験成績から甲状腺がんの患者様に対する効果が期待されています。

甲状腺がんは進行した場合、その治療選択肢が限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の1つとなっています。当社はレンバチニブに関して、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験を、日本、米国、欧州、アジアを含む国際共同治験として進めており、本剤の新薬承認申請は2013年度中をめざしています。また、欧米を中心に子宮内膜がん、メラノーマ、グリオーマおよび非小細胞肺がんの臨床第Ⅱ相試験を、加えて日本、アジアにおいて肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施しています。

当社は、がん領域を重点領域と位置づけ、自社創製の新規抗がん剤「ハラヴェン®」については米国食品医薬品局(FDA)より軟部肉腫の予定適応で、また葉酸受容体αモノクローナル抗体「ファルレツズマブ」についてはFDAおよび欧州委員会より卵巣がんの予定適応で、それぞれオーファンドラッグの指定を受け、開発を進めています。当社は、アンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域において患者様とそのご家族に貢献すべく、一日でも早く新薬をお届けできるよう、引き続き邁進してまいります。

以上

[参考資料として、甲状腺がん、日本における希少疾病用医薬品の指定制度、RETについて添付しています]

<参考文献>

1.甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く、通常25歳から65歳までの間に発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、少数の治療に反応しない患者様もいます。

2. 日本における希少疾病用医薬品の指定制度について

希少疾病用医薬品の指定制度は、医療上の必要性が高いにも関わらず、患者数が少なく、研究開発が進まない医薬品等の開発を支援することを目的としています。薬事法第77条の2に記載された指定要件として、対象患者数が国内において5万人に達しないこと、代替する適切な医薬品等又は治療方法がないこと、又は既存の医薬品と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること、対象疾病に対して、当該医薬品等を使用する根拠があり、開発計画が妥当であることが定められています。具体的な支援内容としては、優先的な治験相談及び優先審査の実施、申請手数料の減額、再審査期間の延長、試験研究費への助成金交付、税制措置上の優遇措置があります。

3. RET(Rearranged During Transfection)について

RETは、受容体型チロシンキナーゼをコードしている癌原遺伝子であり、一部の甲状腺がんで遺伝子変異が報告されています。RETチロシンキナーゼ阻害剤は、このような特定の甲状腺がんにおいて変異型RETの過剰なキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍形成を抑制する効果を示すことが確認されています。また、最近の研究結果では、肺腺がんの一部の患者様においてRET遺伝子とKIF5B遺伝子の融合(遺伝子変異)が生じていることが明らかになり、当該肺腺がんに対するRETチロシンキナーゼ阻害剤による新たな治療の可能性が期待されています。