ここから本文です

ニュースリリース

(2010年11月16日) 印刷用(PDF 210KB)

米国FDAが新規抗がん剤「HALAVEN™」(エリブリン メシル酸塩)注射剤を転移性乳がんの適応で承認
---海洋生物(クロイソカイメン)由来の抗腫瘍性天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物が前治療歴のある転移性乳がんに対して全生存期間を統計学的有意差をもって延長---


 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、同社の新規抗がん剤「HALAVEN™」(ハラヴェン、一般名:エリブリン メシル酸塩) 注射剤が11月15日(米国現地時間)、「アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種類のがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」の適応で、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されたと、発表しました。本剤は、同社が創製・開発した、非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤であり、海洋生物であるクロイソカイメンから単離された天然物ハリコンドリンBの合成類縁化合物です。

 HALAVEN™の承認は、グローバル第III相試験であるEMBRACE試験(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Physician' s Choice Versus Eribulin)の結果に基づいています。同試験では、HALAVEN™投与群が、主要評価項目である全生存期間中央値を、治験医師選択療法施行群との比較で、統計学的有意差をもって2.5カ月延長(全生存期間:13.12カ月 対 10.65カ月、p値:0.041)しました。HALAVEN™は、前治療歴のある転移性乳がん患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤です。

 転移性乳がんの多くは、複数の治療を受けた後でも、さらに進行することが報告されています。HALAVEN™が承認されたことにより、転移性乳がん患者様の生存期間を延長する新しい治療の手段を提供することが可能になりました。

 本剤の米国での新薬承認申請(New Drug Application)は、2010年3月になされ、その後FDAによって優先審査品目に指定されました。また、他にも「転移性乳がん」の適応で、日本、欧州(EU)、スイス、シンガポールの各当局に新薬承認申請を提出中であり、日本では米国同様優先審査がなされています。すでに申請を行っている地域に引き続き、順次、アジア等の地域でも当局への申請を行っていく方針です。

 当社は、がん研究における意義ある革新をめざしており、前臨床探索研究ならびに臨床開発研究において、多岐にわたる低分子有機化合物、モノクローナル抗体、治療用ワクチン等のがん化学療法剤、生物学的薬剤、そして支持療法剤を創出するグローバル事業基盤を確立しています。これらの取り組みにより、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルス・ケア(hhc)ミッションを果たしてまいります。
以上


[参考資料として、グローバル第III相試験(EMBRACE試験)、転移性乳がん、HALAVEN™(エリブリン メシル酸塩)注射剤について、を添付しています]

<参考資料>


1. グローバル第III相試験(EMBRACE試験)
 EMBRACE試験は、多施設、無作為、非盲検、並行2群間比較試験で、HALAVEN™投与群と治験医師選択療法施行群との間で全生存期間を比較するようにデザインされました。本試験では、2種類から5種類のがん化学療法剤(アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む)による前治療歴のある、局所再発性あるいは転移性乳がんの患者様762名が対象となり、HALAVEN™投与群と治験医師選択療法施行群に2:1の比率で割り付けられました。治験医師選択療法施行群は、がん治療が認可された単剤化学療法、ホルモン療法、生物学的薬剤治療、または苦痛緩和治療、放射線治療と定義され、大多数(97%)の患者様は単剤化学療法を受けました。
 HALAVEN™投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、吐き気、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)であります。またHALAVEN™投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

2. 転移性乳がんについて
 転移性乳がんは、がんが胸部から他の臓器に転移するときの進行性ステージの状態をいいます。 米国では2010年、約207,000人の女性が新たに乳がんと診断され、40,000人の患者様が亡くなると言われています。乳がんの約10%の患者様が診断時に転移が見られ、残りの局所がんの患者様も最終的には転移性へと移行します。転移性乳がんと診断された患者様の5人に1人が5年間生存すると言われています。

3. HALAVEN™(エリブリン メシル酸塩)注射剤について
  HALAVEN™ は、アントラサイクリン系ならびにタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種類の化学療法剤での前治療歴のある患者様を対象とする、転移性乳がんの治療を適応とする、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。
 現在、新たな適応の拡大をめざし、前治療歴の少ない難治性乳がん、非小細胞肺がん、肉腫、前立腺がんなど、他のがん種についても単剤での後期臨床試験が進行中です。