抗がん剤タスルグラチニブ、日本においてFGFR2融合遺伝子を有する胆道がんに係る適応で新薬承認を申請

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、日本において、当社が創製した線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR1、FGFR2、FGFR3)選択的チロシンキナーゼ阻害剤タスルグラチニブコハク酸塩(一般名、以下 タスルグラチニブ、開発コード:E7090)について、FGFR2融合遺伝子を有する胆道がんに係る適応で新薬承認を申請したことをお知らせします。タスルグラチニブは、日本において、FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道がんを予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されており、本申請は優先審査の対象となります。

 

 本申請は、当社が日本および中国で実施した多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験(201試験)などの結果に基づいています。201試験では、ゲムシタビンをベースとした併用化学療法の前治療歴のある切除不能のFGFR2融合遺伝子を有する胆管がん患者様が登録され、主要評価項目として奏効率、副次評価項目として安全性などが評価されました。本試験の結果の詳細については今後学会等で発表する予定です。

 

 日本における胆道がんの患者様数は約2.5万人と推計され1,2 、5年相対生存率が約25%と膵臓がんに次いで予後の悪い難治がんであり1、他のがんと比較して薬物療法の選択肢も限られ、アンメット・メディカル・ニーズの非常に高い疾患です。FGFR2融合遺伝子は、胆道がんの15~30%を占める肝内胆管がんの約14%に認められています3。遺伝子融合をはじめとするFGFRの遺伝子異常は、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性などに深く関与していることが知られています。FGFRの遺伝子異常は、胆道がんのほかにも様々ながんで認められていることから、有望な治療標的として注目されています。タスルグラチニブは、FGFR1、2、3を選択的に阻害し、そのシグナルを遮断することにより、FGFRの遺伝子異常を有するがんに対する新たな分子標的治療薬として期待されています4

 

 当社は、「がん領域」を戦略的重要領域の一つとし、Deep Human Biology Learning創薬体制のもと、ヒューマン・バイオロジーに基づき、「がん微小環境」「タンパク質恒常性破綻」「細胞系譜と細胞分化」「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」などの創薬領域(ドメイン)における抗がん剤の研究開発にフォーカスしています。これらのドメインから新たな標的や作用機序を有する革新的新薬を創出し、がんの治癒の実現に向けて貢献することをめざしてまいります。

  

以上

 

  1.   
  2. <参考資料>
  3. 1.  タスルグラチニブ(開発コード:E7090)について

 タスルグラチニブは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)であるFGFR1、FGFR2、FGFR3に対して選択的阻害活性を示す経口投与可能な、エーザイ筑波研究所創製の新規チロシンキナーゼ阻害剤です。本剤は、従来のFGFR阻害剤と異なり、ジメトキシフェニル基を持たない基本構造を有し、速度論的解析実験からFGFRに素早く、強力に結合し、かつ高い選択性を示す結合様式(タイプV)によるキナーゼ阻害作用により、抗腫瘍効果を現すことが推察されています4

タスルグラチニブについては、日本、中国におけるFGFR2融合遺伝子を有する胆管がん患者様を対象に有効性と安全性を評価する臨床第Ⅱ相試験(201試験)の他、日本においてエストロゲン受容体陽性HER2陰性の乳がん患者様を対象とした臨床第Ⅰ相試験が進行中です。

 

 

1.   最新がん統計, 国立がん研究センター がん登録・統計

2.   第23回全国原発性肝癌追跡調査報告(2014~2015) 2023.

3.   Arai Y. et al., "Fibroblast growth factor receptor 2 tyrosine kinase fusions define a unique molecular subtype of cholangiocarcinoma", Hepatology, 2014, 59, 1427-1434.

4.    Miyano SW. et al., "E7090, a Novel Selective Inhibitor of Fibroblast Growth Factor Receptors, Displays Potent Antitumor Activity and Prolongs Survival in Preclinical Models", Molecular Cancer Therapeutics, 2016, 15, 2630-2639.