「レンビマ®」(レンバチニブ)と「キイトルーダ®」(ペムブロリズマブ)の併用療法に関する進行または再発子宮内膜がんの一次治療を対象とした臨床第Ⅲ相LEAP-001試験の状況について

エーザイ株式会社

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA

 

 エーザイ株式会社(本社 東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(北米以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)の併用療法について、ミスマッチ修復機能(mismatch repair proficient: pMMR)を有する/高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有する/MSI-Hを有する進行または再発子宮内膜がんの一次治療として評価した臨床第Ⅲ相LEAP-001試験において、全生存期間(Overall Survival: OS)と無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)の主要評価項目が未達であったことをお知らせします。

 

 本試験の最終解析において、本併用療法は、標準治療であるプラチナ製剤をベースとした2剤併用化学療法(カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法)と比較して、OSとPFSについて本試験の事前に設定した統計学的な閾値を満たす改善を示しませんでした。なお、本併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されているものと同様でした。両社は本試験のすべての評価を完了し、その結果を治験責任医師と協力してサイエンティフィックコミュニティに共有していきます。

 

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA研究開発本部グローバル臨床開発のバイスプレジデントであるGregory Lubiniecki博士は、「我々は、キイトルーダとレンビマの併用療法を、新しい治療選択肢として、新たに進行または再発子宮内膜がんと診断された患者さんにお届けすることを目指してきましたが、LEAP-001試験において本併用療法の主要評価項目を達成できなかったことを残念に思います。当社は、引き続き、KEYNOTE-775試験/309試験の結果に基づき実証済みの、治療歴のある進行子宮内膜がん患者さんの治療におけるキイトルーダとレンビマのベネフィットは確固たるものであると考えており、他の治療困難ながん患者さんにおける本併用療法の研究を継続していきます」と述べています。

 

 Eisai Inc.のシニアバイスプレジデントであるオンコロジーグローバル臨床開発リードCorina Dutcus M.D.は、「LEAP-001試験の結果は、進行または再発子宮内膜がんにおける新たな一次治療法開発の難しさを示すものです。我々は、引き続き、レンビマとキイトルーダの併用療法の臨床開発プログラムに自信をもっています。また、本併用療法が、全身療法後に増悪した進行または再発子宮内膜がん患者様の標準的な治療選択肢となっていることに誇りを持っており、引き続きこれらの患者様に貢献してまいります。本試験に参加し、科学の進歩にご協力いただいた患者様とそのご家族、治験責任医師の皆様に感謝します」と述べています。

 

 本併用療法は、日米欧をはじめとする世界各国において、治療ラインに関わらない全身療法後の進行子宮内膜がん(日本においては子宮体がん)、および進行腎細胞がんに係る適応で承認を取得しています。両社は、LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを通じて、本併用療法の肝細胞がん、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がん、食道がんを含む様々ながん種における複数の臨床試験を実施中です。

 

 今回のLEAP-001試験の結果は、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法の現在承認されている適応症、ならびに他の進行中のLEAP臨床プログラムの試験に影響を与えるものではありません。

 

以上

 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • Merck & Co., Inc. Rahway, NJ, USA

    Media Relations

    Julie Cunningham: +1-(617) 519-6264

    John Infanti: +1-(609) 500-4714

 <参考資料>

LEAP-001試験について

 本試験(ClinicalTrials.gov, NCT03884101)は、進行または再発子宮内膜がんの一次治療として、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法を対照薬のカルボプラチン/パクリタキセルと比較して評価する、無作為化、非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。主要評価項目は最大計10個の標的病変および各臓器最大5個の標的病変の評価を行うよう変更されたRECISTv1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく独立中央画像判定によるPFS、およびOSでした。副次評価項目には、RECISTv1.1に基づく独立中央画像判定による奏効率(Objective Response Rate: ORR)、クオリティ・オブ・ライフおよび安全性でした。臨床試験に参加した842名の患者様は、下記のように1:1で無作為に割り付けられました。

・   「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)と「キイトルーダ」(200 mg、3週ごと静脈内投与)の併用療法

・   パクリタキセル(175 mg/m2、3週ごと静脈内投与)とカルボプラチン(AUC 6 mg/mL/minを、3週ごとに静脈内投与)の併用療法

 

子宮内膜がんについて

 子宮内膜がんは、子宮の内層に発生し、子宮における最も発生頻度の高いがんです1、2。子宮体がんの罹患者数は2020年において、世界で41万7千人以上と推定され、9万7千人以上が亡くなったとされています(これらの推定には子宮内膜がんに加えて子宮肉腫が含まれています3。子宮内膜がんは子宮体がんの90%以上を占めるとされていますが、子宮内膜がんのみの数はこの数よりもやや少ないと考えられます)。日本では2020年に1万7千人以上が新たに子宮体がんと診断され、3千人以上が亡くなられたとされています。米国では2023年に約6万6千人が新たに子宮体がんと診断され、約1万3千人が亡くなると推定されています6、7。欧州では2020年に13万人以上が新たに子宮体がんと診断され、約2万9千人が亡くなられたとされています3。転移性子宮内膜がん(stage IV)の5年生存率は約20%と推計されています8

 

「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示しました。「レンビマ」が取得している適応は以下のとおりです。

 

甲状腺がん

・ 単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなど80カ国以上で承認を取得)

日本:根治切除不能な甲状腺癌

米国:局所再発、転移性、または進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん

欧州:成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)

 

肝細胞がん

・  単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなど80カ国以上で承認を取得)

日本:切除不能な肝細胞癌

米国:切除不能な肝細胞がんに対する一次治療

欧州:進行性または切除不能な肝細胞がんの成人患者に対する一次治療

 

胸腺がん

・  単剤療法の適応(日本で承認を取得)

日本:切除不能な胸腺癌

 

腎細胞がん(欧州では、「Kisplyx®」の製品名で発売)

・  エベロリムスとの併用療法の適応(米国、欧州、アジアなど65カ国以上で承認を取得)

米国:1レジメンの血管新生阻害薬の前治療歴を有する成人での進行性腎細胞がん

欧州:1レジメンの血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした薬剤の前治療歴を有する成人での進行性

・  「キイトルーダ」との併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなど45カ国以上で承認を取得)

日本:根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

米国:成人の進行性腎細胞がんに対する一次治療

欧州:成人の進行性腎細胞がんに対する一次治療

 

子宮内膜がん

・  「キイトルーダ」との併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得、一部の条件付き承認の国を含む)

日本:がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌

米国:治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がん

欧州:治療ラインに関わらず、プラチナ製剤を含む前治療中またはその後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な成人の進行性または再発性子宮内膜がん

 

「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)について

 「キイトルーダ」は、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗programmed death receptor-1(PD-1)抗体です。「キイトルーダ」はPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAは業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,600を超える「キイトルーダ」の臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。「キイトルーダ」の臨床プログラムでは、さまざまながんにおける「キイトルーダ」の役割や、「キイトルーダ」による治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

 

エーザイとMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAによる戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ」との併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。

 既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しており、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、様々ながん種における複数の臨床試験が進行中です。

 

エーザイのがん領域の取り組みについて

 エーザイは、「がん領域」を戦略的重要領域の一つとし、Deep Human Biology Learning創薬体制のもと、ヒューマン・バイオロジーに基づき、「微小環境」「タンパク質恒常性破綻」「細胞系譜や細胞分化」「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」などの創薬領域(ドメイン)における抗がん剤の研究開発にフォーカスしています。これらのドメインから新たな標的や作用機序を有する革新的新薬を創出し、がんの治癒の実現に向けて貢献することをめざしています。

 

エーザイについて

 エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウント XLinkedInFacebook でも情報公開しています。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAのがん領域における取り組み

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAでは、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。当社のオンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、がんのポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、当社ウェブサイトをご覧ください。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAについて

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外の国と地域ではMSD)は、130年以上にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。当社はまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けており、世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。詳細については当社ウェブサイトやMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAのTwitterFacebookInstagramYouTubeLinkedInをご参照ください。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの将来に関する記述

 このニュースリリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、最近の新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的蔓延、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAによる将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対するMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAは、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAに関するForm 10-Kの2022年度年次報告書および米国証券取引委員会(SEC)のインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できるSECに対するその他の書類で確認できます。

 

1 Mayo clinic, “Endometrial Cancer?”

https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/endometrial-cancer/symptoms-causes/syc-20352461#:~:text=Endometrial%20cancer%20begins%20in%20the%20layer%20of%20cells%20that%20form,less%20common%20than%20endometrial%20cancer.

2 American Cancer Society, “What Is Endometrial Cancer?”

https://www.cancer.org/cancer/endometrial-cancer/about/what-is-endometrial-cancer.html#:~:text=Endometrial%20cancer%20starts%20when%20cells,other%20parts%20of%20the%20body.

3 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Corpus uteri Fact Sheet.” Cancer Today, 2020. 

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/24-Corpus-uteri-fact-sheet.pdf

4 American Cancer Society, “Key Statistics for Endometrial Cancer.”

https://www.cancer.org/cancer/endometrial-cancer/about/key-statistics.html

5 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Japan Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf 

6 American Cancer Society, “Cancer Facts & Figures 2023.” https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/annual-cancer-facts-and-figures/2023/2023-cancer-facts-and-figures.pdf

7 Cancer Net ®.” Uterine Cancer”

https://www.cancer.net/cancer-types/uterine-cancer/view-all#:~:text=The%20average%20age%20of%20diagnosis,when%20it%20occurs%20after%20menopause.

8 American Cancer Society, “Survival Rates for Endometrial Cancer.”

https://www.cancer.org/cancer/endometrial-cancer/detection-diagnosis-staging/survival-rates.html