アルツハイマー病協会国際会議2023(AAIC2023)において、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ、抗MTBRタウ抗体E2814を含むアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2023年7月16日から20日にオランダ、アムステルダムおよびバーチャルで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2023において、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名、米国ブランド名「LEQEMBI®」)、および抗MTBR**タウ抗体E2814の最新データを含む、当社のADパイプラインの研究成果について、口頭発表8演題、ポスター発表19演題を発表することをお知らせします。また、AAICに先立ち、7月15日にAAICと同じ会場で開催されるアルツハイマー病・イメージング・コンソーシアム(AIC)において、AAICで口頭発表される2演題がポスターとして発表されます。

 

 エーザイのAlzheimer's Disease and Brain Health、Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「AAIC2023において、先日米国でADによる軽度認知障害および軽度ADを適応としてフル承認を取得した抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブに関して、様々な人種や民族、一般的な併存疾患、併用薬剤を有する当事者様を含む幅広い集団を対象とした試験の結果を発表します。また、セントルイス・ワシントン大学の優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニットと臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を行っている抗MTBRタウ抗体E2814について、新たな重要なデータも発表します。当社のヒューマンヘルスケア理念および透明性の確保に対するコミットメントとの一環として、今後も当社のADパイプラインと研究に関するデータと情報を公表してまいります」と述べています。

 

 AAICにおけるエーザイの主な発表内容は以下の通りです。

  • アミロイド病理の減少と下流のバイオマーカー変化
    レカネマブの第Ⅲ相Clarity AD試験におけるAβ、タウ、神経変性、グリオーシス、画像バイオマーカーの結果と考察(口頭発表#80907)
  • 抗アミロイド治療剤時代の医薬品開発
    病態生理に基づく、ADの新規医薬品開発と合理的な薬剤の組み合わせにおいて考慮すべき点(口頭発表#70444)
  • 早期ADにおいて、静脈内投与に対して同等の有効性と良好な安全性が予測されるレカネマブの皮下投与
    AD当事者様の利便性と安全性プロファイルの向上を目的として開発中のレカネマブの皮下投与製剤のこれまで得られた試験の結果とその考察(口頭発表#82852)
  • 優性遺伝AD当事者様に対する抗タウ抗体E2814の中枢神経系ターゲットエンゲージメントと、下流のタウ病理バイオマーカー(MTBR-tau243)に対する効果の確認

    抗MTBRタウ抗体E2814の健康成人および優性遺伝AD当事者様を対象とする臨床試験における安全性、薬物動態、バイオマーカーに関する報告(口頭発表#82771)

■ エーザイ・口頭発表演題

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アセット/プロジェクト、セッション
発表時間(中央ヨーロッパ夏時間)
発表番号、タイトル

レカネマブ
プレナリーパネル
7月19日(水)
セッション時間:11:15 - 12:30
Q&A セッション:13:00から

#80907
アミロイド病理の減少と下流のバイオマーカー変化

レカネマブ
Perspectivesセッション
7月17日(月)
セッション時間:14:15 - 15:30

#70444
抗アミロイド治療薬時代における医薬品開発

レカネマブ
7月17日(月)
セッション時間:8:00 – 8:45

#82852
静脈内投与と比較して同等の有効性と良好な安全性を達成すると予測される早期ADに対するレカネマブの皮下投与

レカネマブ
7月17日(月)
セッション時間:8:00 – 8:45

#83020
プレクリニカルADを対象とした試験における血漿バイオマーカーを用いた適格性判定の人種・民族差について

レカネマブ
7月20日(木)
セッション時間:8:00 – 9:15
#80393
早期AD当事者様におけるレカネマブ投与後の脳内アミロイドの変化を示す暴露反応モデリング
E2814
7月16日(日)
セッション時間:8:00 – 8:45
#82771
E2814:優性遺伝AD当事者様に対する、E2814のターゲットエンゲージメントと、下流のタウ病理バイオマーカー(MTBR-tau243)に対する効果の確認
バイオマーカー
7月16日(日)
セッション時間:14:15 - 15:30
AD画像診断コンソーシアム(AIC):ポスターAIC-P-243
#80421
ADにおけるタウPETの標準化:[18F]RO948、[18F]Flortaucipir、[18F]MK-6240のCenTauR Unitsを用いた比較
バイオマーカー
7月17日(月)
セッション時間:16:15 – 17:30
AD画像診断コンソーシアム(AIC):ポスターAIC-P-061
#75367
新規CSFタウバイオマーカーパネルによる孤発性ADの病期ステージング

    
■ エーザイ・ポスター発表演題

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アセット/プロジェクト、セッション
発表時間(中央ヨーロッパ夏時間)
発表番号、タイトル
レカネマブ
7月16日(日)
セッション時間:8:45 – 16:15
P1-746
レカネマブ Clarity AD試験におけるARIA-EおよびARIA-H単独発現のPK/PD解析について
E2814
7月16日(日)
セッション時間:8:45 – 16:15
P1-909
抗タウ抗体E2814の健康成人を対象としたファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験における単回・反復漸増投与の安全性、薬物動態および免疫原性
E2814
7月19日(水)
セッション時間:8:45 – 16:15
P4-673
AD脳由来シード注入hTauマウスモデルおけるE2814の有効性検証
バイオマーカー
7月16日(日)
セッション時間:8:45 – 16:15
P1-504
血漿pTau181、MRI、認知機能評価を用いた脳内タウ沈着量の検出
バイオマーカー
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P2-288
新規ペプチドグローバル・プロテオミクス・プラットフォームによるアミロイドβを原因とする認知症の構成要因の解明
バイオマーカー
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P2-911
視覚読影とセンチロイドで判断されるアミロイド陽性の不一致
バイオマーカー
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P2-955
[18F]MK6240 PETスキャンからのBraak Stageの推定
バイオマーカー
7月18日(火)
セッション時間:8:45 – 16:15
P3-257
認知症当事者様の脳脊髄液における新規抗菌ペプチド発現プロファイリングのための新規質量分析法
バイオマーカー
7月18日(火)
セッション時間:8:45 – 16:15
P3-281
脳脊髄液および血漿中の標的プロテオミクスプロファイリングによるADバイオマーカーの同定
機械学習モデル
7月19日(水)
セッション時間:8:45 – 16:15
P4-655
アミロイド陽性軽度認知症当事者様の認知機能の経時推移の予測
医薬品開発
7月19日(水)
セッション時間:8:45 – 16:15
P4-642
CPADによるADの臨床試験シミュレーションツールの開発
公衆衛生
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P2-790電子カルテデータを用いた軽度認知障害に対するトリアージ アルゴリズムの開発
疫学
7月16日(日)
セッション時間:8:45 – 16:15
P1-771軽度認知障害の年齢別の相対的な併存疾患負担:米国データベース研究
疫学
7月16日(日)
セッション時間:8:45 – 16:15
P1-775
米国におけるADの有病率と重症度の分布
疫学
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P2-760
米国メディケア加入者におけるADおよび軽度認知障害の発症率
疫学
7月17日(月)
セッション時間:8:45 – 16:15
P4-721
米国メディケア加入者におけるADおよび軽度認知障害の有病率
医療サービス
ポスター バーチャルのみ
7月16日(日)~7月20日(木)
#70962
軽度認知障害の経済的インパクトを定量化するためのレトロスペクティブ・コホートスタディ
公衆衛生
ポスター バーチャルのみ
7月16日(日)~7月20日(木)
#72143
民間保険加入者における軽度認知障害からADへの進行の経済的インパクト
その他
ポスター バーチャルのみ
7月16日(日)~7月20日(木)
#73976
聴覚障害とAD発症の関連性:LIFE研究

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェン・インクが共同商業化・共同販促を行います。

 

*  プロトフィブリルは、75-5000Kdの可溶性Aβ凝集体です1,2,3

** Microtubule binding region:微小管結合領域

 

1 https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/lecanemab-sweeps-toxic-av-protofibrils-catches-eyes-trialists

2  Sehlin D, Englund H, Simu B, Karlsson M, Ingelsson M, Nikolajeff F, Lannfelt L, Pettersson FE. Large aggregates are the major soluble Aβ species in AD brain fractionated with density gradient ultracentrifugation. PLoS One. 2012;7(2):e32014. doi: 10.1371/journal.pone.0032014. Epub 2012 Feb 15. PMID: 22355408; PMCID: PMC3280222.

3  Söderberg, L., Johannesson, M., Nygren, P. et al. Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease. Neurotherapeutics. 2023;20:195-206. https://doi.org/10.1007/s13311-022-01308-6

  

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以上

 

 

<参考資料>

    1. 1.  レカネマブ(一般名、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)について

     レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、「LEQEMBI」は、2023年7月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。米国における「LEQEMBI」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。

     

     米国におけるフル承認に基づく処方情報、Boxed Warningはこちらから入手できます。

     

     レカネマブについては、日本、欧州(EU)、中国、カナダ、英国(北アイルランドを除く)、韓国においても、それぞれ承認申請を行っています。日本と中国においては優先審査に、英国(北アイルランドを除く)においては、革新的な医薬品について上市までの時間を短縮することを目的としたILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)に指定されています。

     

     レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。

     2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。

     また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

     

    1. 2.  E2814について

     E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、当社とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験を実施中です。また、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit:DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験も実施中です。

     

    1. 3.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

     エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

     

    1. 4.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

     2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。