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- 2018年1月22日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤レンバチニブメシル酸塩(製品名:「レンビマ®」「Kisplyx®」、以下 レンバチニブ)に関して、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照薬とした臨床第Ⅲ相試験(REFLECT試験/304試験)について1、独立画像判定に基づく解析結果を、米国サンフランシスコで開催されている米国臨床腫瘍学会 消化器がんシンポジウム(American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium 2018)において、発表しましたのでお知らせします2。
本発表では、REFLECT試験の副次評価項目である無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、無増悪期間(Time To Progression:TTP)、および奏効率(Objective Response Rate:ORR)について、盲検下での独立画像判定に基づく探索的な解析結果を報告しました。
独立画像判定においては、腫瘍径の変化を効果判定に用いた従来の評価基準(RECIST1.1)、並びにRECIST1.1に腫瘍壊死領域を効果判定に加えた評価基準(mRECIST)を用い、その双方において、レンバチニブのソラフェニブに対する優れた腫瘍縮小効果に基づくPFS、TTPの延長およびORRの上昇が確認されました(下表参照)。これらの独立画像判定に基づく結果は、すでに発表している主治医判定に基づく結果を裏付けていると考えられます。
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評価 項目 |
判定 方法 |
基準 | レンバチニブ群 n=478、 月(中央値) |
ソラフェニブ群 n=476、 月(中央値) |
ハザード比 (95%信頼区間) |
P値 |
---|---|---|---|---|---|---|
PFS | 主治医 | mRECIST | 7.4 | 3.7 | 0.66(0.57-0.77) | <0.00001 |
独立画像 | mRECIST | 7.3 | 3.6 | 0.64(0.55-0.75) | <0.00001(名目) | |
RECIST1.1 | 7.3 | 3.6 | 0.65(0.56-0.77) | <0.00001(名目) | ||
TTP | 主治医 | mRECIST | 8.9 | 3.7 | 0.63(0.53-0.73) | <0.00001 |
独立画像 | mRECIST | 7.4 | 3.7 | 0.60(0.51-0.71) | <0.00001(名目) | |
RECIST1.1 | 7.4 | 3.7 | 0.61(0.51-0.72) | <0.00001(名目) |
※左右にスクロールできます
評価 項目 |
判定 方法 |
基準 | レンバチニブ群 n=478、% |
ソラフェニブ群 n=476、% |
オッズ比 (95%信頼区間) |
P値 |
---|---|---|---|---|---|---|
ORR | 主治医 | mRECIST | 24.1 | 9.2 | 3.13(2.15-4.56) | <0.00001 |
独立画像 | mRECIST | 40.6 | 12.4 | 5.01(3.59-7.01) | <0.00001(名目) | |
RECIST1.1 | 18.8 | 6.5 | 3.34(2.17-5.14) | <0.00001(名目) |
なお、本試験のレンバチニブ投与群で確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでにレンバチニブの投与で認められた安全性プロファイルと同様でした。
肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で毎年約78万人が新たに肝がんと診断され、約75万人の死亡が報告されています。地域差も大きく、中国、日本を含むアジアに新規患者様の約80%が集中しています3。肝細胞がんは、肝がんにおいて最も発生頻度が高く、肝がん全体の85~90%を占めています。現在、全身化学療法歴のない肝細胞がんに対して承認されている薬剤はソラフェニブのみで、アンメット・メディカル・ニーズが高い疾患の一つです。
当社は、レンバチニブの肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国・欧州(同年7月)、中国(同年10月)、台湾(同年12月)などにおいて承認申請中です。当社は、引き続き本剤の患者様価値をさらに増大すべく、エビデンスの創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。
以上
<参考資料>
1. レンバチニブメシル酸塩(一般名、以下 レンバチニブ、商品名:レンビマ/Kisplyx)について
レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。
現在、レンバチニブは、「レンビマ」の製品名で、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州などでは、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での本適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。
さらに本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいはペムブロリズマブとの2つの併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験(307試験)が進行中です。また、ペムブロリズマブとの併用による固形がん(非小細胞肺がん、腎細胞がん、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験が進行中です。さらに、肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験が進行中です。
また、日本において、ニボルマブとの併用による肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験を開始しました。
2. 304試験について
304試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、レンバチニブと標準治療薬であるソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験には、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、レンバチニブ群(478人)では、体重によって1日1回12mgまたは8mgが投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。
本試験は、主要評価項目を全生存期間(Overall Survival:OS)とし、非劣性の検証を目的に実施しました。また、副次評価項目として、PFS、TTP、ORR、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)などを評価しました。本試験のレンバチニブ投与群で高頻度に確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでに認められた安全性プロファイルと同様でした。
3. 独立画像判定および主治医判定について
独立画像判定は、画像評価の均一性を保つために、試験実施医療機関から独立した検査機関(中央検査機関)にて判定することです。中央判定と呼ばれることもあります。主治医判定は、各医療機関の治験担当医が一定の基準(RECISTなど)に従って判定することです。医療機関判定と呼ばれることもあります。
4.RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)について
RECIST1.1は、固形がんに対する効果(腫瘍径の変化)を判定する際に用いられる評価基準です。mRECISTは、RECIST1.1に腫瘍壊死領域を効果判定に加えた新しい基準です。
5.無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、奏効率(ORR)について
PFSとは、無作為日から、がんが増悪した日、もしくはあらゆる原因による死亡日のうち、どちらか早いほうまでの期間のことです。TTPとは、がんが増悪した時点までの期間のことで、PFSと異なり、あらゆる原因による死亡までの期間は考慮されません。ORRとは、治療の実施後に腫瘍が消滅した「完全奏効」または腫瘍の大きさの和が30%以上縮小した「部分奏効」の合計の割合のことです。
- 1Cheng Aら、“全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照としたレンバチニブの臨床第Ⅲ相試験”、第53回米国臨床腫瘍学会年次総会(2017年6月)、抄録番号4001
- 2Lencioni Rら、“Independent imaging review (ⅡR) results in a phase 3 trial of lenvatinib (LEN) versus sorafenib (SOR) in first-line treatment of patients (pts) with unresectable hepatocellular carcinoma (uHCC)”、ASCO-GI 2018、Abstruct#345
- 3
GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/