「アリセプト®」中国において高度アルツハイマー型認知症に関する適応追加の承認を取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、「アリセプト®」(一般名:ドネペジル塩酸塩、中国語表記:安理申®)について、中国において高度アルツハイマー型認知症に関する適応追加の承認を取得したことをお知らせします。本承認によって「アリセプト」は、中国において、軽度から高度までアルツハイマー型認知症に関する幅広い適応を有する初めての治療薬となりました。

今回の適応追加の承認は、中国における臨床第Ⅲ相試験(339試験)の結果に基づきます1。339試験は、中国人の高度アルツハイマー型認知症患者様313名を対象とした、「アリセプト」10mg/日の有効性、安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。本試験において、「アリセプト」群は、プラセボ群に比較し、主要評価項目である投与24週時の認知機能(Severe Impairment Battery)を統計学的に有意に改善しました。なお、本試験において「アリセプト」群で高頻度に観察された有害事象(上位4つ)は徐脈、食欲減退、心電図QT延長、浮動性めまいでした。

中国におけるアルツハイマー型認知症の患者様数は約600万人1と推定されています。今後、高齢化の進展に伴い、認知症患者様数の大幅な増加が予想されています。当社は、中国において、1999年9月より「アリセプト」を発売しています。また、行政、病院、民間団体等との連携のもと、市民への認知症の疾患啓発活動やメモリークリニック(記憶外来)の設置支援などを積極的に進めています。

今回の高度アルツハイマー型認知症に関する適応の承認を機に、中国におけるアルツハイマー型認知症患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に、より一層の貢献を果たしていくとともに、「アリセプト」の創製者として、引き続き、より良い治療とケア、疾患啓発や新規治療法の創出など認知症に対する包括的な貢献に向けて取り組んでまいります。

以上

<参考資料>

1. 中国での「アリセプト」について

当社は、1999年9月より「アリセプト」を中国で発売しています。中国での適応症は、軽度および中等度のアルツハイマー型認知症であり、5mgと10mgの2用量が使用可能です。今回、高度アルツハイマー型認知症の適応を取得し、中国で軽度から高度までアルツハイマー型認知症に関する幅広い適応を有する初めての薬剤となりました。

2. 中国で実施した臨床第Ⅲ相試験(339試験)について1

339試験は、中国人の高度アルツハイマー型認知症患者様313名を対象とした、「アリセプト」10mg/日の有効性、安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。「アリセプト」群では、5mgを6週間投与後、10mgに増量し18週間投与が行われました(計24週間投与)。

本試験の結果、主要評価項目である投与24週時の認知機能(Severe Impairment Battery*)のベースラインからの変化量は、「アリセプト」群で2.9、プラセボ群で-2.0であり、「アリセプト」群はプラセボ群に比較して、統計学的に有意に改善しました(投与群間差4.8、95%信頼区間(CI)1.56 to 8.08、p=0.004)。

副次評価項目である投与24週時の全般臨床症状(CIBIC-plusスコア**)において、「アリセプト」群とプラセボ群の間に統計学的に有意な差が認められ(投与群間差 -0.4、95%CI -0.66 to 0.03、p=0.04)、「アリセプト」による治療は、プラセボに比較して臨床的に意義があることが示されました。同じく副次評価項目である認知機能(MMSE***)のベースラインからの変化量においては、「アリセプト」群とプラセボ群の間に統計学的に有意な差はみられませんでした。

本試験において、有害事象は「アリセプト」群では26.7%で観察され、高頻度に観察された有害事象(上位4つ)は、徐脈(5.7%)、食欲減退(4.5%)、心電図QT延長(3.8%)、浮動性めまい(3.2%)でした。

  • *
    Severe Impairment Battery : 高度に障害された認知機能を評価するための検査。社会的相互行為、記憶、見当識、注意、実行、視空間能力、言語、構成、名前への志向の9項目から構成され、患者との面接により100∼0点(正常→重度)範囲で評価する。
  • **
    CIBIC-plus(the Clinician's Interview-Based Impression of Change plus caregiver input): 患者および介護者との面接により全般的な臨床症状の変化を評価するための検査。主治医以外の独立した評価者が、4つの 領域(状態のあらまし、認知機能、行動、日常生活動作能力)について総括し、患者の臨床症状の全般的な変化を7段階(大幅な改善、中程度の改善、若干の改善、不変、若干の悪化、中程度の悪化、大幅な悪化)で評価する。
  • ***
    MMSE(Mini-Mental State Examination):認知機能を評価するための方法。見当識、記銘、注意、計算、近時・遠隔記憶、了解、読書、書字、デザインの項目から構成され、30∼0点(正常→重度)の範囲で評価する。
  • 1
    Jia J, Wei C, Jia L, et al. Efficacy and safety of donepezil in Chinese patients with severe Alzheimer's disease: A randomized controlled trial. J. Alzheimers Dis 2017; 56: 1495-1504.