抗がん剤「レンビマ®」台湾において肝細胞がんに係る適応拡大を申請

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤レンバチニブメシル酸塩(一般名、製品名:「レンビマ®」「Kisplyx®」、台湾製品名:「樂衛瑪®」、以下「レンビマ」)について、台湾において肝細胞がんに係る適応で効能・効果追加の申請を行ったことをお知らせします。今回の「レンビマ」の肝細胞がんに係る適応の申請は、アジアにおいて日本・中国に続く申請となります。

肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間約75万人が肝がんのために亡くなっています1。また、年間新規患者数78万人のうち、約80%がアジア地域に集中しており1、台湾においては、年間新規患者数は約1万人、年間死亡者数は約8千人となっています2。肝細胞がんは、肝がん全体の85~90%を占めており、切除不能な肝細胞がんは、治療方法が限られた極めて難治性の疾患であり、新しい治療法が期待されています。

当社は、「レンビマ」の肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国・欧州(同年7月)、中国(同年10月)において承認申請中です。台湾においては、「レンビマ」について、2016年9月に放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る承認、および2017年7月に腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認を取得しています。

当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社は、「レンビマ」によるがん治療の可能性を引き続き追求し、世界のがん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンビマ(一般名 レンバチニブメシル酸塩)について

「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など40カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx」の製品名で発売しています。

さらに本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいはペムブロリズマブとの2つの併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験が進行中です。また、ペムブロリズマブとの併用による固形がん(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験および肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験が進行中です。また、日本において、ニボルマブとの併用による肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験を開始しました。

2. REFLECT試験(304試験)について3

今回の申請は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様を対象とした、「レンビマ」と標準治療薬であるソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験(REFLECT試験/304試験)の結果に基づいています。

REFLECT試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、「レンビマとソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験には、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、「レンビマ」群(478人)では体重によって1日1回12mg(60kg以上)または8mg(60kg未満)が投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。

本試験は、主要評価項目を全生存期間(Overall Survival:OS)とし、非劣性の検証を目的に実施しました。また、副次評価項目として、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、無増悪期間(Time To Progression:TTP)、奏効率(Objective Response Rate:ORR)およびクオリティ・オブ・ライフ(QOL)などを評価しました。主要評価項目であるOSは、「レンビマ」群で13.6カ月(中央値)であり、ソラフェニブ群の12.3カ月(同)に比較して、統計学的に非劣性が証明され(ハザード比0.92(95%信頼区間:CI = 0.79-1.06))、「レンビマ」は主要評価項目を達成しました。副次評価項目において、PFS(中央値)は、「レンビマ」群で7.4カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月でした(ハザード比0.66(95%CI = 0.57-0.77)、P<0.00001)。また、TTP(中央値)は、「レンビマ」群で8.9カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月(ハザード比0.63(95%CI = 0.53-0.73)、P<0.00001)、ORRは、「レンビマ」群で24%、ソラフェニブ群で9%(P<0.00001)でした。これら3つの評価項目について、「レンビマ」群はソラフェニブに対してそれぞれ2倍以上にするなど、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。

また、欧州がん治療研究機構(EORTC)による健康関連QOLに関する質問票である EORTC QLQ-C30 と QLQ-HCC18 を用いた全般的なQOLの評価では、「レンビマ」群とソラフェニブ群の両群で薬剤の投与とともにスコアの低下が認められました。EORTC QLQ-C30 の3項目(役割活動性、痛み、下痢)、QLQ-HCC18 の2項目(栄養、身体像)において、「レンビマ」群はソラフェニブ群と比較して、QOLの悪化を遅延することがわかりました(名目P値<0.01)。

本試験の「レンビマ」投与群で高頻度に確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでに認められた安全性プロファイルと同様でした。

  • 1

    GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/

  • 2

    Taiwan Cancer Registry: Cancer Incidence and Mortality Rates in Taiwan. http://tcr.cph.ntu.edu.tw/main.php?Page=N2

  • 3

    Cheng Aら、“全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照としたレンバチニブの臨床第Ⅲ相試験“、第53回米国臨床腫瘍学会年次総会(2017年6月)、抄録番号4001