欧州臨床腫瘍学会年次総会において肝細胞がん患者様のQOLに関するレンバチニブとソラフェニブとの比較検討結果を口頭発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤レンバチニブメシル酸塩(製品名:「レンビマ®」 「Kisplyx®」 、以下 レンバチニブ)について、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(REFLECT/304試験)1の解析において、レンバチニブ群がソラフェニブ群に比較して、一部の健康関連クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の悪化を遅延するという結果について、スペイン・マドリードで開催されている「欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology)年次総会:ESMO2017 Congress」で口頭発表2しましたので、お知らせします。

今回の口頭発表は、REFLECT試験に登録された患者様の症状、機能、および全般的な健康状態に関わるQOL関連の質問に対する回答を解析した結果に基づいています。欧州がん治療研究機構(EORTC)による健康関連QOLに関する質問票である EORTC QLQ-C30およびQLQ-HCC18を用いた評価では、治療期間中、両群においてQOLの低下が認められました。QOLへの影響は両群で多くの項目において類似していましたが、下痢(ハザード比:HR = 0.53)、痛み(HR = 0.82)、役割機能(HR = 0.83)、身体イメージ(HR=0.79)、栄養状態(HR = 0.81)の5項目について、レンバチニブ群がソラフェニブ群に対して、治療期間を通じてQOL悪化の遅延を示しました(名目p 値 < 0.01)。

がんの罹患とその治療は、家庭生活あるいは家庭内での役割、仕事での能力発揮、一般的な社会活動への参加を困難にするなど、患者様のQOLに大きな影響を及ぼします。QOLの適切な管理により、抗がん剤治療を継続することで、患者様に対する最大のベネフィットの提供が可能になります。

本試験を通じて集積されたQOLに関するデータは、肝細胞がんの患者様が各治療法を受けるにあたり、QOLの観点でどのような影響を受けるかを示したものであり、患者様に対する適切な治療法の決定を支援する情報になることを期待しています。当社はレンバチニブのさらなるエビデンスの創出に邁進し、本剤の製品価値最大化を通じて、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンバチニブメシル酸塩(商品名:レンビマ/Kisplyx、以下 レンバチニブ)について

レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など35カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx」の製品名で発売しています。

当社は、本剤の肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国、欧州(同年7月)において承認申請を行ったのに続き、中国においては2017年度下期に承認申請する予定です。

さらに本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいはペムブロリズマブとの2つの併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験が進行中です。また、ペムブロリズマブとの併用による固形がん(非小細胞肺がん、腎細胞がん、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験および肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験が進行中です。

2. REFLECT 試験(304試験)について1,2

REFLECT試験(A Multicenter, Randomized, Open-Label, Phase 3 Trial to Compare the Efficacy and Safety of Lenvatinib(E7080)Versus Sorafenib in First-Line Treatment of Subjects With Unresectable Hepatocellular Carcinoma)は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、レンバチニブとソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験には、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、レンバチニブ群(478人)では、体重によって1日1回12mg(60kg以上)または8mg(60kg未満)が投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。

本試験は、主要評価項目を全生存期間(Overall Survival:OS)とし、非劣性の検証を目的に実施しました。また、副次評価項目として、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、無増悪期間(Time To Progression:TTP)、奏効率(Objective Response Rate:ORR)およびクオリティ・オブ・ライフ(QOL)などを評価しました。

主要評価項目であるOSは、レンバチニブ群で13.6カ月(中央値)であり、ソラフェニブ群の12.3カ月(同)に比較して、統計学的に非劣性が証明され(ハザード比0.92(95%信頼区間:CI = 0.79 - 1.06))、主要評価項目を達成しました。副次評価項目において、PFS(中央値)は、レンバチニブ群で7.4カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月でした(ハザード比0.66(95%CI = 0.57 - 0.77)、P < 0.00001)。また、TTP(中央値)は、レンバチニブ群で8.9カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月(ハザード比0.63(95%CI = 0.53 - 0.73)、P < 0.00001)、ORRは、レンバチニブ群で24%、ソラフェニブ群で9%(P < 0.00001)でした。これら3つの評価項目について、レンバチニブ群はソラフェニブに対してそれぞれ2倍以上にするなど、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。

QOLに関しては、臨床的に重要な悪化が認められるまでの期間に関して、両群を比較したところ、EORTC QLQ-C30による評価では、レンバチニブ群/ソラフェニブ群それぞれにおいて、下痢(中央値4.6カ月/ 中央値2.7カ月、ハザード比:HR = 0.53(95%信頼区間:CI 0.449–0.630)、名目p < 0.0001)、痛み(同2.0カ月/同1.8カ月、HR = 0.82(95%CI 0.697–0.953)、 名目p = 0.006)、役割機能(同2.0カ月/同1.9カ月、HR = 0.83(95%CI 0.705-0.970)、名目p = 0.0098)、およびEORTC QLQ-HCC18による評価では、身体イメージ(同2.8カ月/同1.9カ月、HR = 0.79(95%CI 0.675–0.933)、名目p = 0.0041)、栄養状態(同4.1カ月/同2.8カ月、HR = 0.81(95%CI 0.681–0.952)、名目p = 0.006)でした。

本試験のレンバチニブ投与群で高頻度に確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでに認められた安全性プロファイルと同様でした。

3. 肝細胞がん(hepatocellular carcinoma:HCC)について

肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で毎年約78万人が新たに肝がんと診断され、約75万人の死亡が報告されています。地域差も大きく、中国、日本を含むアジアに新規患者様の約80%が集中しています3。 肝細胞がんは、肝がんにおいて最も発生頻度が高く、肝がん全体の85~90%を占めています。肝細胞がんは慢性肝疾患、特に肝硬変と関連しており、発生原因として、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられますが、最近の調査では非B型非C型肝細胞がんの増加が報告されています。肝細胞がんの第一治療選択は外科手術ですが、肝臓移植、外科的切除、腫瘍アブレーション(ラジオ波焼灼法または凍結療法など)を含む根治的な治療介入、または肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適さない切除不能な肝細胞がんの場合は、治療薬が限られており、予後が極めて悪いことが知られています。現在、全身化学療法歴のない肝細胞がんに対して承認されている薬剤はソラフェニブのみで、アンメット・メディカル・ニーズが高い疾患の一つです。

4. EORTC QLQ-C30およびEORTC QLQ-HCC18について

欧州がん治療研究機構(EORTC:European Organization for Research and Treatment of Cancer)により開発されたQOLを評価するための質問票です。EORTC QLQ-C30は30項目で構成されており、がん領域で広く使用されています。また、EORTC QLQ-HCC18は18項目で構成されており、肝細胞がんの患者様に使用されています。

  • 1

    Cheng Aら、“全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照としたレンバチニブの臨床第Ⅲ相試験”、第53回米国臨床腫瘍学会年次総会(2017年6月)、抄録番号4001

  • 2

    Vogel A.ら “切除不能な肝細胞がん患者様を対象としたレンバチニブまたはソラフェニブによる治療における健康関連QOL解析(REFLECT/304試験)”、欧州臨床腫瘍学会年次総会(2017年9月)、抄録番号618O

  • 3

    GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/