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ニュースリリース

2017年9月6日

「ハラヴェン®」(エリブリン)と抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法によるトリプルネガティブ乳がんに対する良好な中間解析データに基づく症例数拡大について Merck & Co., Inc., Kenilworth, NJ, USAと調印

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の微小管ダイナミクス阻害剤エリブリンメシル酸塩(製品名:「ハラヴェン®」、以下 エリブリン)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(製品名:「キイトルーダ®」)との併用療法に関する臨床第Ib/II相試験において、トリプルネガティブ乳がんの目標症例登録数を拡大することについて、Merck & Co., Inc., Kenilworth, NJ, USAと調印したことをお知らせします。

 今回の目標症例登録数の拡大は、現在両社提携のもと実施しているエリブリンとペムブロリズマブの併用療法の転移性トリプルネガティブ乳がんを対象とした臨床第Ib/II相試験(218試験)における良好な中間解析結果に基づくものです。本中間解析結果(n=39)1において、併用療法による奏効率*は33.3%(完全奏効1人および部分奏効12人)でした。また、本併用療法にはPD-L1の発現の有無にかかわらず同程度の抗腫瘍活性があることが示唆されました。本試験において高頻度で確認された有害事象(上位5つ)は、疲労、悪心、末梢神経障害、好中球減少、脱毛でした。本中間解析結果に基づき、約150症例まで拡大する予定です。

 トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン療法の対象となるエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体、および分子標的薬であるヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)阻害剤の標的となるHER2受容体の発現がいずれも陰性であるタイプの乳がんです。難治性の疾病であり、新しい治療法が期待されています。

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社はトリプルネガティブ乳がんのようなアンメット・メディカル・ニーズの高いがんへの新規治療法の創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。


*奏効率とは、治療の実施後に腫瘍が消滅した「完全奏効」または腫瘍の大きさの和が30%以上縮小した「部分奏効」の合計の割合です。

キイトルーダ®は Merck & Co., Inc. Kenilworth, NJ, USAの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。


以上


<参考資料>

1.  エリブリンメシル酸塩(製品名:「ハラヴェン」、以下 エリブリン)について

 エリブリンは、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出された天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物であり、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制することで、細胞分裂の停止作用を有しています。また、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること2、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移・浸潤能を減少させる3など、ユニークな作用を有することが報告されています。
 本剤は、2010年11月に米国で「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2レジメンのがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」の適応で最初の承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジアなど60カ国以上で乳がんに係る適応で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月に発売しました。また、欧州やアジアなどでは「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」での適応拡大の承認を取得しています。
 悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に、米国で「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある手術不能または転移性の脂肪肉腫」の適応で、2016年2月に日本で「悪性軟部腫瘍」の適応で、2016年5月に欧州で「進行または転移性で、アントラサイクリン系抗がん剤治療(不適な場合を除く)を含む化学療法の前治療歴のある手術不能な成人の脂肪肉腫」の適応で、それぞれ承認を取得しています。

2.  エリブリンのペムブロリズマブ併用の臨床第Ib/II相試験(218試験)について

 本試験は、エリブリンとペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、単群、非盲検の臨床第Ib/II試験です。がん化学療法による2レジメン以下の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がんの患者様95人(臨床第Ib相試験 12人、臨床第II相試験 83人)を対象に、21日を1サイクルとして、エリブリン1.4mg/m2を1日目と8日目に静脈投与、ペムブロリズマブ200mgを1日目に静脈投与します。主要評価項目として、第Ib相パートでは安全性と忍容性を、第II相パートでは奏効率(objective response rate: ORR)を評価します。副次評価項目としては、無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を評価します。
 本中間解析における39症例中22人の患者様については、転移後に1ないし2レジメンのがん化学療法の治療歴を有しています。また、PD-L1陽性群(17人)とPD-L1陰性群(18人)との間では、ORRに大きな違いは認められませんでした(陽性群:29.4%、陰性群:33.3%、PD-L1発現未判定群:50.0%)。ペムブロリズマブ単剤では、PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳がんにおいて、より高い抗腫瘍活性が認められる傾向が報告されています(KEYNOTE-012試験)4。一方、本試験では、ペムブロリズマブにエリブリンを併用することにより、PD-L1発現によらず同程度の抗腫瘍活性が発現することが示唆されました。

3.  エリブリンとペムブロリズマブの併用の作用機序に関連する非臨床研究について

 エリブリンは、免疫抑制作用を有する制御性T細胞およびM2型マクロファージを減少させる作用により、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)の活性の維持あるいは増強に寄与すると考えられています5。抗PD-1抗体ペムブロリズマブは、免疫チェックポイントの阻害作用により、CTLの活性を維持あるいは増強することが知られています。両者の併用により、がん免疫療法における相乗効果が期待されています。


1 Tolaney S, et al. Phase 1b/2 study to evaluate eribulin mesylate in combination with pembrolizumab in patients with metastatic triple-negative breast cancer. SABCS Abstract, 2016; P5-15-02
2 Funahashi Y et al. Eribulin mesylate reduces tumor microenvironment abnormality by vascular remodeling in preclinical human breast cancer models. Cancer Sci., 2014; 105, 1334-1342
3 Yoshida T et al. Eribulin mesilate suppresses experimental metastasis of breast cancer cells by reversing phenotype from epithelial-mesenchymal transition (EMT) to mesenchymal-epithelial transition (MET) states. Br J Cancer, 2014; 110, 1497-1505
4 Nanda R et al. Pembrolizumab in Patients With Advanced Triple-Negative Breast Cancer: Phase Ib KEYNOTE-012 Study. J Clin Oncol, 2016; 34, 2460-2467.
5 Albu D I et al. Eribulin mesylate alters immune homeostasis in mice bearing syngeneic tumors. AACR, 2012; Abstract #271603_1