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ニュースリリース

2016年12月12日

エリブリンとペムブロリズマブ併用による転移性トリプルネガティブ乳がんを対象とした臨床第Ⅰb/II相試験の中間解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウムにて発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製のエリブリンメシル酸塩(ハリコンドリン系微小管ダイナミクス阻害剤、製品名:「ハラヴェン®」、以下 エリブリン)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法による転移性トリプルネガティブ乳がんを対象とした臨床第Ⅰb/II相試験(218試験)の中間解析結果について、第39回サンアントニオ乳がんシンポジウム(39th Annual San Antonio Breast Cancer Symposium、SABCS、12月6日~10日)において発表したことをお知らせします。本併用療法の開発は、両社提携の下で実施しています。

 218試験は、がん化学療法による2レジメン以下の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がんの患者様95人を対象として、エリブリンとペムブロリズマブ併用における有効性と安全性を評価する、多施設共同、単群、非盲検の臨床第Ⅰb/II相試験です。主要評価項目として第Ⅰb相パートにおいては安全性と忍容性を、第II相パートにおいては奏効率(objective response rate:ORR)を評価します。

 本発表では、2016年7月時点において臨床試験に登録された89人中39人の患者様に対する中間解析に関して報告しました。21日を1サイクルとした、エリブリン(1日目と8日目に1.4mg/m2を静脈内投与)およびペムブロリズマブ(1日目に200mgを静脈内投与)の併用療法において、ORRは33.3%(完全奏効1人および部分奏効12人)でした。また、PD-L1陽性と陰性との間で、ORRの違いは認められませんでした。
 本試験の併用投与群において高頻度で確認された有害事象(頻度35%以上)は、疲労、悪心、末梢神経障害、好中球減少、脱毛でした。グレード3以上(有害事象共通用語規準)の有害事象は66.7%で観察され、高頻度(7%以上)に確認されたものは、好中球減少(30.8%)、疲労(7.7%)でした。

 エリブリンは、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。従来の作用機序に加えて、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること1、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移・浸潤能を減少させること2など、ユニークな作用を有することが知られています。本剤は、乳がんに係る適応について、2010年11月に米国で最初の承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジア等、60カ国以上で承認を取得しています。

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社は、本試験で示した併用療法を含め、エリブリンのさらなるエビデンスの創出に注力し、本剤の製品価値最大化を通じて、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1.  エリブリンメシル酸塩(製品名:「ハラヴェン」、以下 エリブリン)について

 エリブリンは、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出された天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物であり、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制することで、細胞分裂の停止作用を有しています。また、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること1、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移・浸潤能を減少させる2など、ユニークな作用を有することが報告されています。
 本剤は、2010年11月に米国で「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2レジメンのがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」の適応で最初の承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジアなど60カ国以上で乳がんに係る適応で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月に発売しました。また、欧州やアジアなどでは「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」での適応拡大の承認を取得しています。
 悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に、米国で「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある手術不能または転移性の脂肪肉腫」の適応で、2016年2月に日本で「悪性軟部腫瘍」の適応で、2016年5月に欧州で「進行または転移性で、アントラサイクリン系抗がん剤治療(不適な場合を除く)を含む化学療法の前治療歴のある手術不能な成人の脂肪肉腫」の適応で、それぞれ承認を取得しています。

2.  臨床第Ib/II相試験(218試験)について

 本試験は、エリブリンとペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、単群、非盲検の臨床第Ib/II試験です。がん化学療法による2レジメン以下の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がんの患者様95人(臨床第Ib相試験 12人、臨床第II相試験 83人)を対象に、21日を1サイクルとして、エリブリン1.4mg/m2を1日目と8日目に静脈投与、ペムブロリズマブ200mgを1日目に静脈投与します。主要評価項目として、第Ib相パートでは安全性と忍容性を、第II相パートでは奏効率(objective response rate:ORR)を評価します。副次評価項目としては、無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を評価します。
 本中間解析における39症例中22人の患者様については、転移後に1ないし2レジメンのがん化学療法の治療歴を有しています。また、PD-L1陽性群(17人)とPD-L1陰性群(18人)との間では、ORRに大きな違いは認められませんでした(陽性群:29.4%、陰性群:33.3%、PD-L1発現未判定群:50.0%)。ペムブロリズマブ単剤では、PD-L1陽性スコアの高い転移性トリプルネガティブ乳がんにおいて、より高い抗腫瘍活性が認められる傾向が報告されています(KEYNOTE-012試験)3。一方、本試験では、ペムブロリズマブにエリブリンを併用することにより、PD-L1発現の有無によらず同等の抗腫瘍活性が発現することが示唆されました。

3.  トリプルネガティブ乳がんについて

 トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2受容体が陰性である(がん細胞に発現していない)タイプの乳がんです。ホルモン療法およびHER2を標的とする分子標的薬が効き難く、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病であり、新しい治療薬が期待されています。

4.  エリブリンとペムブロリズマブの併用の作用機序に関連する非臨床研究について

 エリブリンは、免疫抑制作用を有する制御性T細胞およびM2型マクロファージを減少させる作用により、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)の活性の維持・増強に寄与すると考えられています4。ペムブロリズマブにおいても免疫チェックポイント阻害作用により、CTLの活性を維持・増強することが知られています。両者の併用により、がん免疫作用における相乗効果が期待されます。


1 Funahashi Y et al. Eribulin mesylate reduces tumor microenvironment abnormality by vascular remodeling in preclinical human breast cancer models. Cancer Sci., 2014; 105, 1334-1342
2 Yoshida T et al. Eribulin mesilate suppresses experimental metastasis of breast cancer cells by reversing phenotype from epithelial-mesenchymal transition (EMT) to mesenchymal-epithelial transition (MET) states. Br J Cancer, 2014; 110, 1497-1505
3 Nanda R et al. Pembrolizumab in Patients With Advanced Triple-Negative Breast Cancer: Phase Ib KEYNOTE-012 Study. J Clin Oncol, 2016; 34, 2460-2467
4 Albu D I et al. Eribulin mesylate alters immune homeostasis in mice bearing syngeneic tumors. AACR, 2012; Abstract #271603_1