早期アルツハイマー病を対象としたBACE阻害剤「E2609」の開発について米国FDAよりファストトラック指定を受領

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の経口BACE(βサイト切断酵素)阻害剤「E2609」の開発について、米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定(Fast Track designation)を受領しましたのでお知らせします。当社は、E2609をバイオジェン・インク(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:George A. Scangos、以下 バイオジェン)と共同開発しており、現在、早期アルツハイマー病(AD)を対象とした臨床第Ⅲ相試験を実施しています。

ファストトラックは、重篤な疾患に対する新たな治療法やアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性のある薬剤について、FDAとの協議機会の増加などにより、開発から審査までの迅速化を目的としています。臨床試験結果によっては、新薬承認申請時に優先審査に指定される可能性もあります。

E2609は、次世代経口アルツハイマー病治療剤として開発している自社創製のBACE阻害剤です。BACEはアミロイド前駆体タンパク質のβサイトを切断するAβ産生の律速酵素です。E2609はBACEを阻害することで、毒性種と考えられる脳内のAβ凝集体を減少させ、病態の進行を抑制する疾患修飾作用が期待されています。E2609の臨床第Ⅲ相試験プログラム(MISSION AD)について、バイオマーカーで早期ADと判定した1,330人の患者様を対象とした最初の臨床第Ⅲ相試験を2016年10月より開始しています。

エーザイ・ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「私たちは、E2609がFDAのファストトラック指定を受けたことを喜ばしく思います。今回のファストトラック指定を機に、FDAとより一層連携を密にし、早期AD患者様に一日も早く新たな治療選択肢を提供できるよう、E2609の開発を加速していきます」と述べています。

以上

<参考資料>

1. 米国食品医薬品局におけるファストトラック指定について

ファストトラック(Fast Track)とは、重篤な疾患に対する新たな治療法やアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性のある薬剤について、開発から審査の迅速化を目的としたものです。既存薬がない場合だけでなく、既存薬の有効性・安全性を上回ることが期待される場合も指定対象となります。ファストトラックに指定されるとFDAとの協議などを持つ機会が増え、また、臨床試験結果によっては、新薬承認申請時に迅速承認(Accelerated Approval)や優先審査(Priority Review)の適用などの指定を受ける可能性もあります。

2. E2609の臨床第Ⅲ相試験プログラム(MISSION AD)について

E2609の臨床第Ⅲ相試験プログラム(MISSION AD)は、MISSION AD1(301試験)およびMISSION AD2(302試験)の2つのグローバルな臨床第Ⅲ相試験から構成されます。

MISSION ADプログラムの最初の試験となるMISSION AD1(301試験)は、バイオマーカーで早期ADと判定した患者様を対象にE2609の有効性と安全性を検証する、多施設共同、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験です。投与期間を24カ月、実薬群は50mg/日の1用量とし、1,330人の患者様を実薬群とプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けます。また、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)を主要評価項目として用います。

3. エーザイとバイオジェンによる共同開発契約について

本契約は、両社がBACE阻害剤E2609と抗Aβプロトフィブリル抗体BAN2401について、エーザイ主導のもとでグローバルでの承認取得に向けた開発を進め、承認取得後は日米欧などの主要な地域において共同販促を行うものです。両社はE2609とBAN2401に係る研究開発費等の費用を折半し、共同販促に基づく売上高はエーザイに計上され、利益は両社で等しく分配します。また、エーザイは、バイオジェンより契約一時金を取得したほか、今後共同開発の進捗、承認取得および売上高達成に応じたマイルストンペイメントを受け取ります。また、エーザイは、バイオジェンがAD治療剤として開発している抗Aβ抗体「aducanumab」および抗tau抗体に対して、共同開発および共同販促に係わるオプション権を保有しています。