抗がん剤「ハラヴェン®」日本で新たに「悪性軟部腫瘍」に関する効能・効果の承認を取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、自社創製の抗がん剤「ハラヴェン®」(一般名 エリブリンメシル酸塩)について、日本において新たに「悪性軟部腫瘍」の効能・効果の承認を取得したことをお知らせします。「ハラヴェン」は、進行または再発の悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)を対象とした臨床第Ⅲ相試験において、全生存期間の有意な延長を示した唯一の薬剤です。本適応は、日本において「手術不能又は再発乳がん」に続き、統計学的に有意な全生存期間の延長が認められて「ハラヴェン」が取得した2つ目の適応となります。

「ハラヴェン」は、アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む少なくとも2レジメンの前治療歴を有する進行または再発の悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)を対象とした、臨床第Ⅲ相試験(309試験)において、対照薬であるダカルバジンに対して主要評価項目である全生存期間を統計学的に有意に延長しました1。本試験において、「ハラヴェン」投与群で、もっとも一般的に確認された副作用(頻度25%以上)は、好中球減少、疲労、脱毛、悪心、末梢神経障害であり、これまでの「ハラヴェン」投与で確認された安全性プロファイルと同様でした。また、化学療法歴を有する進行または再発の悪性軟部腫瘍を対象とした国内臨床第Ⅱ相試験(217試験)においても、臨床効果を示す結果を得ました2

悪性軟部腫瘍は、身体の様々な軟部組織(脂肪、筋肉、神経、線維組織、血管など)で発生する悪性腫瘍の総称で、厚生労働省の患者調査によると患者数は日本では約4,000人とされています。

「ハラヴェン」の悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に米国で「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある手術不能または転移性の脂肪肉腫」の適応で承認を取得し、欧州(EU)、スイス、ロシア、オーストラリア、ブラジルでは申請中です。また、本剤は米国および日本において、悪性軟部腫瘍治療に対する希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

「ハラヴェン」は、ハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。従来の作用機序に加えて、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること3、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移能を減少させること4など、ユニークな作用を有することが報告されています。

本剤は、これまでに乳がんに係る適応で、日本、欧州、米州、アジアなど、約60カ国で承認されています。

当社は、今回の効能・効果の承認取得により、「ハラヴェン」の臨床的価値を高めることで、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 製品概要(下線が今回の追加部分)

  • 1)

    製品名

    ハラヴェン®静注1mg

  • 2)

    一般名

    エリブリンメシル酸塩

  • 3)

    効能・効果

    手術不能又は再発乳癌、悪性軟部腫瘍

  • 4)

    用法・用量

    通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/m2(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2週連続で行い、3週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

2. 「ハラヴェン」について

「ハラヴェン」は、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出された天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物であり、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制することで、細胞分裂の停止作用を有しています。加えて、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること3、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移能を減少させる4など、ユニークな作用を有することが報告されています。

本剤は、2010年11月に米国で「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2レジメンのがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」の適応で最初の承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジアなど約60カ国で乳がんに係る適応で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月に発売しました。また、欧州やアジアなどでは「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」での適応拡大の承認を取得しています。

悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に、米国で「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある手術不能または転移性の脂肪肉腫」の適応で、2016年2月に日本で「悪性軟部腫瘍」の適応で、それぞれ承認を取得し、欧州(EU)、スイス、ロシア、オーストラリア、ブラジルでは、申請中です。本剤は米国および日本において、悪性軟部腫瘍に対する希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

3. 悪性軟部腫瘍について

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は、体の様々な軟部組織(脂肪、筋肉、神経、線維組織、血管など)で発生する悪性腫瘍の総称です。米国では約12,000人が、欧州では約29,000人が、毎年悪性軟部腫瘍と診断されています。日本では、厚生労働省の患者調査によると患者数は約4,000人とされています。発生部位の組織が様々であることから多彩な組織型が存在しますが、比較的頻度の高い組織型として平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫などが知られています。悪性軟部腫瘍の治療は根治的な外科切除術が中心で、悪性度が高い場合は、化学療法や放射線療法を組み合わせた治療がなされます。進行した場合の予後は悪く、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患のひとつです。

4. 309試験について1

欧米を中心に実施した309試験は、アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む少なくとも2レジメンの前治療後に増悪した進行または再発の悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)の患者様452人(18歳以上)を対象とした、「ハラヴェン」(以下、エリブリン)とダカルバジンの有効性および安全性を比較する、多施設共同の非盲検、無作為化第Ⅲ相試験です。

エリブリンは、21日を1クールとして、1.4mg/m2/dayを1日目と8日目に静脈内注射により投与され、ダカルバジンは、21日を1クールとして、850–1200mg/m2/dayを1日目に静脈内注射により投与されました。

本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(overall survival: OS)において、エリブリン投与群(中央値:13.5カ月)は、対照薬であるダカルバジン投与群(同:11.5カ月)に比較して統計学的に有意な延長を示しました(ハザード比0.77(95%信頼区間 = 0.62-0.95)、p=0.0169)。また、副次評価項目である無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)の中央値は、両投与群とも2.6カ月であり、12週時無増悪生存率(progression-free rate at 12 weeks: PFR12wks)では、エリブリン投与群では33%、ダカルバジン投与群ででは29%となり、PFS、PFR12wksともに統計学的な有意差はありませんでした。

本試験において、エリブリン投与群で、もっとも一般的に確認された副作用(頻度25%以上)は、好中球減少、疲労、脱毛、悪心、末梢神経障害であり、これまでのエリブリン投与で確認された安全性プロファイル同様でした。

5. 217試験について(第50回米国臨床腫瘍学会年次総会での発表)2

国内で実施した217試験は、化学療法歴を有する進行または再発の悪性軟部腫瘍の患者様51人を対象に、エリブリンの有効性および安全性を検討する多施設共同非盲検臨床第Ⅱ相試験です。エリブリンは、21日を1クールとして、1.4mg/m2/dayを1日目と8日目に静脈内注射により投与されました。主要評価項目は、12週時無増悪生存率(PFR12wks)とされました。

本試験の結果、エリブリンは化学療法歴を有する進行または再発の悪性軟部腫瘍の患者様において臨床効果を示しました。全ての組織型の悪性軟部腫瘍の患者様におけるPFR12wksは51.0%でした。また、脂肪肉腫または平滑筋肉腫を有する患者様(35人)、その他の悪性軟部腫瘍を有する患者様(16人)におけるPFR12wksはそれぞれ60.0%、31.3%でした。

本試験におけるGrade 3以上のもっとも一般的に確認された有害事象は、好中球減少(86.3%)、白血球減少(74.5%)、リンパ球減少(31.4%)、貧血(11.8%)、発熱性好中球減少症(7.8%)でした。

  • 1
    Schöffski P et al. A randomized, open-label, multicenter, phase 3 study of eribulin versus dacarbazine in previously treated patients with advanced liposarcoma or leiomyosarcoma. The Lancet. 2016.
  • 2
    Naito Y, et al. PhaseⅡ study of eribulin mesylate in patients with advanced soft tissue sarcoma(STS). ASCO Meet. Abstr. 2014, 10667.
  • 3
    Funahashi Y et al. Eribulin mesylate reduces tumor microenvironment abnormality by vascular remodeling in preclinical human breast cancer models. Cancer Sci., 2014; 105, 1334-1342
  • 4
    Yoshida T et al. Eribulin mesilate suppresses experimental metastasis of breast cancer cells by reversing phenotype from epithelial-mesenchymal transition (EMT) to mesenchymal-epithelial transition (MET) states. Br J Cancer, 2014; 110, 1497-1505