抗がん剤「レンバチニブ」腎細胞がんに係る適応追加申請が米国FDAより優先審査品目に指定

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の新規抗がん剤レンバチニブメシル酸塩(一般名、以下 レンバチニブ)について、進行または転移性腎細胞がんに係る適応拡大申請が、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)に受理され、あわせて優先審査品目に指定されたことをお知らせします。

FDAの優先審査指定は、疾患の治療、予防、診断において、有効性あるいは安全性に顕著な改善をもたらす可能性のある薬剤の新薬承認審査を迅速に進める制度です。本指定により、本剤に関するPDUFA(Prescription Drug User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は、本申請提出日から6カ月後の2016年5月16日に指定されました。また、本剤は、FDAよりブレイクスルーセラピーの指定も受けています。なお、本剤は、欧州で進行または転移性腎細胞がんに係る適応に関し、2016年1月に新たな申請を行っており、加えて、日本の当局とも申請に向けての協議を行う予定です。

本申請に用いた臨床第Ⅱ相試験(205試験)1は、血管内皮細胞増殖因子を標的とした前治療歴を有する、切除不能な進行または転移性腎細胞がんの患者様を対象とした、レンバチニブ(18mg)/エベロリムス(5mg)併用投与(以下 併用投与群)、レンバチニブ単剤(24mg)投与、エベロリムス単剤(10mg)投与の3群の有効性と安全性を比較した試験です。本試験において、併用投与群は、エベロリムス単剤投与群と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長しました。また、レンバチニブ単剤投与群は、エベロリムス単剤投与群と比較して、PFSを延長しました。さらに、併用投与群およびレンバチニブ単剤投与群は、エベロリムス単剤投与群と比較して、より高い奏効率を示しました。本試験における最も一般的に見られた有害事象は、併用投与群では下痢、食欲減退、疲労であり、グレード3以上の最も一般的に見られた有害事象は、下痢、高血圧、疲労でした。

腎がんの罹患者数は米国で約5万8千人と推定されており2、腎細胞がんは腎臓におけるがんの90%以上を占めています3。手術が難しい進行または転移性腎細胞がんでは、分子標的薬による治療が標準ですが、5年生存率が低く、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病です。

現在、レンバチニブは、「レンビマ®」の商品名で、米国・日本・欧州において甲状腺がんに係る適応*で販売されています。当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

  • *
    米国・日本・欧州で承認されている適応症は参考資料1を参照

<参考資料>

1. レンバチニブメシル酸塩(一般名、以下 レンバチニブ)について

レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、韓国、カナダで承認を取得し、加えて、アジア諸国、ロシア、オーストラリア、ブラジル、メキシコなど世界各国で申請中です。具体的には、米国では「局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」の適応で、日本では「根治切除不能な甲状腺癌」の適応で、欧州では「成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)」の適応で承認を取得しました。また、腎細胞がんに係る適応で、米国と欧州において申請中です。加えて、肝細胞がん(臨床第Ⅲ相試験)や子宮内膜がん(臨床第Ⅱ相試験)、胆道がん(臨床第Ⅱ相試験)など複数のがんを対象にした臨床試験が進行中です。

2. 臨床第Ⅱ相試験(205試験)について1

205試験は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)およびその受容体を標的とする薬物による治療歴を有する進行または転移性腎細胞がんの患者様を対象とした、レンバチニブ(18mg)/エベロリムス(5mg)併用投与、レンバチニブ単剤(24mg)投与、エベロリムス単剤(10mg)投与の3群の有効性と安全性を比較する、多施設共同、無作為化、非盲検の臨床第Ⅱ相試験として欧米で実施され、153人の患者様が各群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられました。

レンバチニブ/エベロリムス併用投与群は、エベロリムス単剤投与群に比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を有意に延長しました(併用投与群14.6カ月vs エベロリムス単剤群5.5カ月(中央値)、ハザード比0.40(95%信頼区間 = 0.24-0.68)、p=0.0005)。また、レンバチニブ単剤投与群のPFS中央値は7.4カ月であり、エベロリムス単剤投与群に対する延長を示しました(ハザード比0.61(95%信頼区間 = 0.38-0.98))。

副次評価項目として奏効率(objective response rate: ORR)、全生存期間(overall survival: OS)などが評価されました。併用投与群およびレンバチニブ単剤投与群は、エベロリムス単剤投与群と比較して、より高いORRを示しました(併用投与群(43%)、レンバチニブ単剤投与群(27%)、エベロリムス単剤投与群(6%))。また、OSに関しては、2014年12月時点におけるアップデート解析で、併用投与群におけるエベロリムス単剤投与群に対する延長が示唆されました(ハザード比0.51(95%信頼区間 = 0.30-0.88))。

本試験において確認された最も一般的に見られた有害事象は、併用投与群では、下痢、食欲減退、疲労であり、グレード3以上(有害事象共通用語規準)の最も一般的に見られた有害事象は、下痢、高血圧、疲労でした。

3. 腎細胞がんについて

腎がんの罹患者数は、2012年において世界で約33万8千人、米国では約5万8千人、欧州では約11万5千人、日本では約1万7千人と推定されています2。腎細胞がんは、腎臓におけるがんの90%以上を占めており3、尿細管の細胞ががん化したものです。罹患率は50歳代後半以降に増加し、また女性より男性に多く発症するとされています。手術が難しい進行性や転移性の腎細胞がんでは、分子標的薬による治療が標準ですが、5年生存率が低く、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病です。

  • 1

    Robert Motzer, et al, “Lenvatinib, everolimus, and the combination in patients with metastatic renal cell carcinoma: a randomised, phase 2, open-label, multicentre trial.” The Lancet Oncology, 2015; 16, 1473-1482

  • 2

    GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/

  • 3

    Eble J.N, et al. Pathology and Genetics of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs, World Health Organisation classification of tumours.(International Agency for Research on Cancer, Lyon, France in 2004)