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ニュースリリース

2015年5月27日

日本において、高用量メコバラミン製剤の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する新薬承認を申請

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、メコバラミン(開発コード:E0302)の高用量製剤について、日本において筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)に関する新薬承認申請を行いましたのでお知らせします。

 ALSは重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で進行性の難病です。国内で承認されている治療剤は進行を抑制する薬剤1剤のみであり、新たな治療選択肢が強く必要とされているアンメットメディカルニーズが極めて高い疾患です。

 メコバラミンは、末梢性神経障害等の治療薬として承認・販売されています。高用量メコバラミンのALSに対する効果については、1990年代から厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業の神経変性疾患に関する研究班により臨床研究が実施され、その有効性を示唆する結果が得られました。これを受け、当社では2004年より高用量メコバラミンの治験を開始し、2006年より臨床第II/III相試験(761試験)を実施しました。761試験は、イベント(人工呼吸器使用または死亡)が発生するまでの期間および日本語版改訂ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)の変化量を主要評価項目として、二重盲検によるプラセボ対照試験として実施しました。

 761試験において、メコバラミン投与群(25mg及び50mg投与群)では、プラセボ投与群に比較してイベント発生までの期間の延長傾向とALSFRS-Rスコアの低下抑制傾向がみられましたが、統計学的有意差は確認できませんでした。一方、追加解析の結果、ALS発症後12カ月以内に治療を開始した患者様において高用量メコバラミンによるイベント発生までの期間延長とALSFRS-Rスコアの低下抑制が認められました。また、血清脂質が低値の患者様においても同様の結果が確認されました。なお、副作用発現率に投与群間での違いはありませんでした。

 今回の試験結果を受け、当社は、ALSが日常生活に著しい支障をおよぼし、かつ予後不良な進行性の難治性疾患であり、新たな治療選択肢の必要性が極めて高い疾患であることに鑑み、高用量メコバラミンのALSにおける医療上の有用性が認められると考え、承認申請に至りました。

 なお、761試験の結果は、2015年4月18日から25日まで米国ワシントンD.C.で開催された第67回米国神経学会(American Academy of Neurology:AAN)年次総会1および2015年5月20日から23日まで新潟市で開催された第56回日本神経学会学術大会2において発表されました。

 当社は、神経領域を重点疾患領域と位置づけ、新たな薬剤の開発に注力しています。さらには、本剤のような既存の薬剤の新たな効果・価値を見出す研究など、新薬創出メーカーとしての取り組みを通じて、神経領域におけるアンメットメディカルニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1.  筋萎縮性側索硬化症(ALS)について
 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)は、運動ニューロンの障害により重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす進行性の難治性神経変性疾患です。呼吸筋の麻痺による呼吸不全が主たる死亡原因であり、人工呼吸器を装着しなければ発症後約3∼6年以内に死に至る疾患です。日本では人口10万人あたり1.1∼2.5人の発病率で50歳代からの発症が多く、患者数は9,240人です(2013年度特定疾患医療受給者証交付数による)。現在、ALSの確立された根治療法はなく、国内外で承認されている薬剤は病勢の進展を抑制する1剤のみであり、アンメットメディカルニーズが極めて高い難病です。
2.  メコバラミンについて
 メコバラミン(開発コード:E0302)は、メチコバール®注射液500µgとして末梢性神経障害およびビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の適応で承認・販売されています。また、内服錠、細粒剤が末梢性神経障害の適応を有しています。メコバラミンのALSの病態における作用機序について詳細は解明されていませんが、非臨床研究の結果から、神経保護作用、神経軸索再生作用により有効性を示す可能性が示唆されています。1990年代より厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業の神経変性疾患に関する研究班において、ALSに対する高用量メコバラミンの臨床研究が実施されました。メチコバールとしての承認用量の50倍∼100倍量である1回25mg∼50mgのメコバラミンの筋肉内投与による短期及び長期試験において、高用量メコバラミンがALSに対して臨床効果を示す可能性が示唆され、当社は2004年より臨床試験を進めてきました。なお、当社では光に極めて不安定なメコバラミンを、製剤的工夫により、使用性に優れ、高用量投与可能な凍結乾燥注射剤として新規に開発しました。
3.  国内で実施した臨床第II/III相試験(761試験)について
1)  試験概要
試験名称 E0302の筋萎縮性側索硬化症に対する臨床第II/III相試験
試験のデザイン 多施設共同、無作為化、プラセボ対照、並行群間二重盲検比較試験
用量及び投与方法 メコバラミン25 mg、50 mgまたはプラセボを週2回、182週間筋肉内投与
解析対象例数 370例(25 mg群124例、50 mg群123例、プラセボ群123例)
有効性評価項目 主要評価項目:
イベント(非侵襲的呼吸補助装置の終日装着、侵襲的呼吸補助装置の装着または死亡)発生までの期間
観察期終了時から最終時までのALSFRS-R(日本語版改訂ALS Functional Rating Scale)合計点数の変化量
2)  試験結果
  プラセボ投与群 25 mg投与群 50 mg投与群
全体結果
    イベント発生期間(中央値) 880日 1147日 954日
    ALSFRS-R合計点数の変化量(中央値) -24.0 -22.0 -21.0
ALS発症から治験開始日までの期間が12カ月以下の部分集団
    イベント発生期間(中央値) 570日 1087日 1197日
    ALSFRS-R合計点数の変化量(中央値) -26.5 -26.5 -22.0
血清トリグリセリド値130mg/dL未満の部分集団
    イベント発生期間(中央値) 767日 1099日 911日
    ALSFRS-R合計点数の変化量(中央値) -26.0 -23.1 -19.0
安全性について、副作用発現率は投与群間で同様の傾向であり(プラセボ群4.1%、25mg群7.3%、50mg群5.7%)、メコバラミン投与群合計(247例)で2例以上に認められた副作用は白血球数増加(3例)と肝機能異常(2例)のみでした。
1 R Kaji, et al. “Ultra-high dose methylcobalamin (E0302) prolongs survival of ALS: Report of 7 years' randomised double-blind, phase 3 clinical trial.” Abstract. American Academy of Neurology Meeting 2015; P7.060.
2 今井尚志ら “メコバラミン大量投与による筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する臨床第2/3相試験”日本神経学会学術大会 2015; B-03-5.