「アリセプト®」 日本でレビー小体型認知症に関する効能・効果の承認を取得世界で初のアルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤に

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト®」(一般名:ドネペジル塩酸塩)について、日本において新たにレビー小体型認知症に関する効能・効果の承認を取得しました。これにより、「アリセプト」はレビー小体型認知症の効能・効果を有する世界で初めての薬剤となります。

レビー小体型認知症は、横浜市立大学の小阪憲司名誉教授が発見した疾患です。日本では、アルツハイマー型認知症、血管性認知症と並んで3大認知症に位置づけられ、有病率については、認知症高齢者の4.3%(疫学)1~41.4%(剖検)2にわたり複数の報告があり、高齢化の進展に伴って患者数は増加する傾向にあります。レビー小体型認知症では、進行性の認知機能障害に加えて、認知機能の変動や幻視、パーキンソニズム(体のこわばりなど)など特有の症状を示すため、認知症と気づかれにくいといった課題が指摘されています。その上、レビー小体型認知症に効能を有する薬剤はなく、医療現場においては新たな治療法へのニーズが高まっていました。

本効能・効果の追加承認は、日本人のレビー小体型認知症患者様を対象として当社が実施した臨床第Ⅱ相試験(431試験)、臨床第Ⅲ相試験(341試験)などに基づくものです。なお、承認条件に従い、製造販売後臨床試験を実施し、本効能・効果に対する有効性の検証を行います。また、長期投与時の安全性等の検討のため特定使用成績調査を行うとともに、本効能・効果追加における適正使用を推進します。なお、本効能・効果に対する本剤の再審査期間は4年です。

当社は、今回のレビー小体型認知症に関する効能・効果追加を機に、同疾患の診断・治療・ケアに対する情報提供を徹底し、レビー小体型認知症の患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上への貢献を果たしてまいります。当社は「アリセプト」の創製者として、引き続き、より良い治療とケア、疾患啓発など認知症への包括的な貢献に向けて取り組んでまいります。

以上

<参考資料>

1. レビー小体型認知症について

レビー小体型認知症は、日本で発見された疾患であり、病理学的には大脳と脳幹の神経細胞脱落とレビー小体の多数の出現を特徴とする変性性認知症です。神経化学的には、アルツハイマー型認知症(AD)と同様に脳内コリン作動性神経障害を特徴としており、中心的特徴(必須症状)である進行性の認知機能障害に加えて、精神症状・行動障害、運動障害、自律神経障害が発現します。中でも、変動する認知機能、幻視、特発性パーキンソニズムが中核的特徴です3。日本においては、アルツハイマー型認知症、血管性認知症と並んで3大認知症と位置づけられ、有病率は、認知症高齢者の4.3%(疫学)~41.4%(剖検)にわたり複数の報告があります1, 2

2. 「アリセプト」製品概要(下線部が今回の追加部分)

  • 1)
    効能・効果

    アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制

  • 2)
    用法・用量

    アリセプト錠、同D錠、同細粒、同内服ゼリー:

    アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
    レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。

    アリセプトドライシロップ:

    アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mg(本剤0.3g)から開始し、1~2週間後に5mg(本剤0.5g)に増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mg(本剤0.5g)で4週間以上経過後、10mg(本剤1.0g)に増量する。なお、症状により適宜減量する。
    レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mg(本剤0.3g)から開始し、1~2週間後に5mg(本剤0.5g)に増量し、経口投与する。5mg(本剤0.5g)で4週間以上経過後、10mg(本剤1.0g)に増量する。なお、症状により5mg(本剤0.5g)まで減量できる。

  • 3)
    承認条件

    レビー小体型認知症を対象に、本剤の有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること。

3. 日本で実施したレビー小体型認知症に対するアリセプトの主な臨床試験について

日本人のレビー小体型認知症患者様を対象として実施した探索的試験である臨床第Ⅱ相試験(431試験)において、アリセプト投与群はプラセボ投与群に対して認知機能障害、精神症状・行動障害、全般臨床症状に関する有効性評価項目について有意な改善を示しました。

431試験の良好な結果を受け、臨床第Ⅲ相試験(341試験)において、認知機能障害および精神症状・行動障害を主要評価項目としてアリセプトの12週間投与におけるプラセボに対する優越性を検証するとともに、長期(52週間)投与の安全性および有効性を検討しました。その結果、認知機能と精神症状・行動障害の両方を同時に改善するという所期の目的は達成されませんでした。認知機能障害について、アリセプト10mg投与群は、12週間投与の最終評価時において、プラセボ投与群に比べて統計学的に有意な改善効果を示すとともに、52週間にわたり認知機能を投与開始時の水準よりも高いレベルに維持することが確認されました。精神症状・行動障害については、アリセプト投与群とともにプラセボ投与群でも改善がみられ、12週間投与最終評価時においては、両群に統計学的な有意差は認められませんでした。

431試験と341試験の12週間投与後の統合解析において、アリセプト投与群で観察された有害事象(発現率が3%以上)のうち、発現率がプラセボ群に比較して高かった主な副作用は、パーキンソニズム、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、血圧上昇、下痢、食欲減退などでしたが、これらの事象は、AD患者様への投与で見られたものと同様の安全性プロファイルでした。パーキンソニズムはAD患者様への投与と比較して発現率が高かったものの、投与群間に大きな違いは認められず、いずれの事象も重篤なものはありませんでした。また、継続長期投与において、有害事象の発現に投与期間による大きな違いは認められず、長期投与による遅発性の有害事象が発現する可能性は小さいことが確認されました。

431試験4及び341試験5の結果は論文発表または学会発表がされています。

  • 1
    厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成23年度~平成24年度)総合研究報告書.
  • 2
    Wakisaka Y, Furuta A, Tanizaki Y, Kiyohara Y, Iida M, Iwaki T. Age-associated prevalence and risk factors of Lewy body pathology in a general population: the Hisayama study. Acta Neuropathol 2003; 106:374-382
  • 3
    McKeith IG, Dickson DW, Lowe J, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Third report of the DLB consortium. Neurology 2005; 65:1863-72.
  • 4
    Mori E, Ikeda M, Kosaka K. Donepezil for dementia with Lewy bodies: a randomized, placebo-controlled trial. Ann Neurol 2012; 72: 41-52.
  • 5
    Ikeda M, Mori E, Kosaka K. ドネペジル塩酸塩のレビー小体型認知症(DLB)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(速報);プラセボ対照二重盲検試験と長期投与を統合した試験からの考察. 第29回老年精神医学会 2014.