抗がん剤「ハラヴェン®」がより早期の転移性乳がんへの適応拡大に関して欧州委員会より承認を取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗がん剤「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)に関して、転移性乳がんに対するより早期からの治療貢献を可能とする「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」への適応拡大について、欧州委員会(European Commission)より承認を取得しましたのでお知らせします。

本剤は、EUでは現在、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む2レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がんの適応で承認を取得し、販売されています。今回の承認により、前治療歴が2レジメン以上に限られた現在の適応から、より前治療歴の少ない転移性乳がん患者様へ適応が拡大され、EU各国の転移性乳がん患者様に対して、より早期から本剤が貢献できるようになります。

本承認は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む2~5レジメンの前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん患者様を対象とした主治医選択薬との比較臨床第Ⅲ相試験(305試験:EMBRACE試験)と、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤による前治療歴を有する局所進行性・転移性乳がんの患者様を対象としたカペシタビンとの比較臨床第Ⅲ相試験(301試験)の合計1,800症例を超える、乳がんを対象とした臨床試験では最大規模となるエビデンスに基づくものです。

欧州では、毎年30万人以上の女性が乳がんと診断され、3分の1の患者様が転移性乳がんに進行しています。1,2 乳がんの診断・治療は、新しい技術や薬剤の開発により年々進歩していますが、転移性乳がん治療においては、依然として高いアンメット・メディカル・ニーズが存在しています。当社は、引き続き本剤が患者様価値増大に結びつくべくエビデンスの創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 「ハラヴェン」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について

「ハラヴェン」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。本剤は、乳がんについて2010年11月に最初の承認を米国で取得し、これまでに欧州、日本、シンガポール、スイス等、50カ国以上で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月より発売をしています。また、本剤の製品価値最大化に向け、前治療歴の少ない乳がん、また、軟部肉腫、非小細胞肺がんについても開発を進めています。

2. 305試験(EMBRACE試験)について

海外で実施された、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のある進行または再発乳がん患者様762人を対象とした臨床第Ⅲ相試験(EMBRACE試験)では、ハラヴェン投与群は主治医選択治療群と比較し、全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月 対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データは、ハラヴェン投与群では主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。ハラヴェン投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、悪心、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少です。またハラヴェン投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

3. 301試験について

本試験は、局所進行性・転移性乳がんの患者様1,102人を対象として、多施設共同、無作為化、非盲検による、カペシタビンとの群間比較試験として実施されました。本試験では、前治療として術前・術後補助療法を含む3種類以下かつ進行性・転移性乳がんに対する治療として2種類以下の治療歴を有すること、加えて、アントラサイクリンやタキサン系抗がん剤による前治療歴を有する患者様を対象としました。本試験の主要評価項目としていた「全生存期間(OS)」と「無増悪生存期間(PFS)」について、ハラヴェン投与群は、カペシタビン投与群と比較して、統計学的有意差はありませんでしたが、OSを延長する傾向を示しました(ハラヴェン投与群OS中央値:15.9カ月、カペシタビン投与群OS中央値:14.5カ月、ハザード比:0.879、95%信頼区間:0.770-1.003、p値:0.056)。また独立審査機関の評価にもとづくPFSには両群間で差がありませんでした(ハラヴェン投与群PFS中央値:4.1カ月、カペシタビン投与群PFS中央値:4.2カ月、ハザード比:1.079、95%信頼区間:0.932-1.250、p値:0.305)。安全性については、両剤ともに既に報告されている副作用と同様の結果でした。主な有害事象(発現率20%以上の事象)として確認されたものは、好中球減少(ハラヴェン vs. カペシタビン:54.2% vs. 15.9%)、手足症候群(同:0.2% vs. 45.1%)、脱毛症(同:34.6% vs. 4.0%)、白血球減少(同:31.4% vs. 10.4%)、下痢(同:14.3% vs. 28.8%)、および悪心(同:22.2% vs. 24.4%)でした。

References