抗がん剤「レンバチニブ」が放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験において無増悪生存期間を顕著に改善臨床第Ⅲ相試験結果をASCO年次総会頭頸部がんセッションにて口頭発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、本日、自社創製の新規抗がん剤「レンバチニブメシル酸塩(以下 レンバチニブ)」の、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がん患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(SELECT試験)の結果を発表することをお知らせします。本試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(progression free survival: PFS)において、レンバチニブ投与群(中央値:18.3カ月)がプラセボ投与群(中央値:3.6カ月)に比較して統計学的に有意な延長を示しました(ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31、p<0.0001))。

本試験結果は、第50回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO)年次総会において、本日開催されるASCOオフィシャルプレスカンファレンスならびに6月2日(月)の頭頸部がんセッションにて口頭発表されます。また、この発表は、ASCO年次総会のあと、7月5~6日に神戸で開催される「Best of ASCO® 2014 in Japan」*の発表演題に選出されました。

レンバチニブは、血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGF受容体などの受容体チロシンキナーゼを阻害する経口投与可能な新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤です。SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験では、事前に設定した各部分集団においても、レンバチニブ投与によるPFSの延長を認めました。また、副次評価項目として、奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)、全生存期間(Overall Survival: OS)および安全性を評価しました。完全奏効率は、レンバチニブ投与群が1.5%(4例)、プラセボ投与群が0%(0例)、部分奏効率は、レンバチニブ投与群が63.2%(165例)、プラセボ投与群が1.5%(2例)でした。投与期間の中央値はレンバチニブ投与群で13.8カ月、プラセボ投与群で3.9カ月であり、レンバチニブ投与群の奏効までの期間の中央値は2.0カ月でした。OSについては、両投与群ともに中央値に達していません。

本試験において報告された主な有害事象は高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、嘔気(41.0%)でした。また、Grade3以上(有害事象共通用語規準)の主な有害事象は、高血圧(41.8%)、タンパク尿(10.0%)、体重減少(9.6%)、下痢(8.0%)、食欲減退(5.4%)でした。

分化型甲状腺がんは甲状腺がんの中で最も発生頻度が高く、およそ95%を占めています。その中でも、手術および放射性ヨウ素療法での治療が難しい放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんは、治療薬が限られておりアンメットニーズが高い疾患です。

治験責任医師の代表者であるフランス・パリ第11大学ギュスタヴ・ルシー研究所のマルティン シュルンベルジェ教授は、「本臨床第Ⅲ相試験結果は限られた治療法しかない難治性の甲状腺がんに対するレンバチニブの有効性を示唆するものです。」と述べています。

当社は、本試験結果に基づきレンバチニブの日本、米国、欧州における承認申請を準備中です。レンバチニブは日本、米国、欧州の各当局より甲状腺がんに関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

また、当社はレンバチニブに関して、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験、またそれ以外のがん腫を対象にした複数の臨床第Ⅱ相試験を実施しています。当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、甲状腺がんを含むがん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

  • Best of ASCO®は米国腫瘍学会の登録商標です。

[参考資料として、レンバチニブ(E7080)、SELECT試験、甲状腺がんについて添付しています]

<参考資料>

1. レンバチニブ(E7080)について

自社創製のレンバチニブは、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)をはじめ、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤であり、甲状腺がんでの開発に加え、肝細胞がん(フェーズⅢ)、非小細胞肺がん(フェーズⅡ)などの複数のがん腫を対象に臨床試験が進行中です。レンバチニブは日本(2012年8月、甲状腺がん)、米国(2012年12月、局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(2013年4月、甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんの治療に関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. SELECT試験について

SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGF受容体を標的とする治療歴が1レジメン以内である患者様を対象に、レンバチニブ(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する(レンバチニブ投与:プラセボ投与 = 2:1)、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験では、主要評価項目として両群の無増悪生存期間について比較が行われ、また、副次評価項目として、奏効率(完全奏効率と部分奏効率の合計)、全生存期間および安全性が評価されました。本試験は、SFJファーマシューティカルズとの提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。

3. 甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、少数の治療に反応しない患者様もいます。