抗がん剤「レンバチニブ」が放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験において無増悪生存期間を指標とする主要評価項目を達成

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、自社創製のファーストインクラスの新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤「レンバチニブメシル酸塩(以下 レンバチニブ)」が、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がん(Radioiodine-Refractory Differentiated Thyroid Cancer: RR-DTC)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(303試験、SELECT試験)において、統計学的に顕著な有意差をもって無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)を改善し、主要評価項目を達成したことをお知らせします。

SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去12ヶ月以内に画像診断により病勢進行が確認されたRR-DTCの患者様を対象に、レンバチニブ(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験では、主要評価項目として両群のPFSについて比較が行われ、また、副次評価項目として、全奏効率(Overall Response Rate: ORR)、全生存期間(Overall Survival: OS)および安全性が評価されました。本試験は、SFJファーマシューティカルズとの提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。本試験で確認された主要な有害事象は高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、嘔気でした。

当社は、本試験結果に基づき、日本、米国、欧州の各当局に本剤の承認申請を行う予定です。本剤が承認されれば、日本の製薬企業が開発した初の低分子分子標的剤となります。

甲状腺がんは最も発生頻度が高い内分泌腺がんであり、この50年間で全世界の新規患者数が顕著に増加しています。その中でも、RR-DTCは未だアンメットニーズが高く生命を脅かす病気の一つです。レンバチニブは日本、米国、欧州の各当局より甲状腺がんに関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

当社は、レンバチニブに関して、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験、またそれ以外のがん種を対象にした複数の臨床第Ⅱ相試験を実施しています。当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、甲状腺がんを含むがん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

[参考資料として、レンバチニブ(E7080)、甲状腺がん、SFJグループの概要、
エーザイのオンコロジー領域での取り組みについて添付しています]

<参考資料>

1. レンバチニブ(E7080)について

自社創製のレンバチニブは、血管新生や腫瘍増殖に関わるKDR(VEGFR-2)、Flt-1(VEGFR-1)、RET、FGFR1、PDGFR-βやc-kitなどの受容体チロシンキナーゼを阻害する、経口投与可能な新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤であり、甲状腺がんでの開発に加え、肝細胞がん(フェーズⅢ)、非小細胞肺がん(フェーズⅡ)などの複数のがん種を対象に臨床試験が進行中です。レンバチニブは日本(2012年8月、甲状腺がん)、米国(2012年12月、局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(2013年4月、甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんに関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. 甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く、通常25歳から65歳 までの間に発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、少数の治療に反応しない患者様もいます。

3. SFJグループの概要

SFJファーマ株式会社を含むSFJファーマシューティカルグループ(以下、SFJ)は、世界のトップの製薬・バイオテク企業にユニークな共同開発提携モデルを提供しているグローバル医薬品開発会社です。SFJは、経済的強みと医薬品開発専門家によるコアチームを有しており、製薬・バイオテク企業のもっとも有望な医薬品開発プログラムに対する資金の負担や、臨床開発・薬事承認までの管理業務の提供について高度にカスタマイズされた提携モデルを提供しています。

4. エーザイのオンコロジー領域での取り組み

当社は、がん研究における意義ある革新をめざしており、前臨床探索研究ならびに臨床開発研究において、低分子有機化合物と生物学的薬剤からなる多岐にわたるがん化学療法剤、ならびに支持療法剤を創出するグローバル研究基盤を確立しています。