エーザイがコンパニオン診断薬開発でEpizyme, Inc.およびRoche Molecular Systems, Inc.と共同開発契約を締結

エーザイ株式会社(本社:東京、社長:内藤晴夫)は、Epizyme, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、社長:Robert Gould、以下 Epizyme社)およびRoche Molecular Systems, Inc.(本社:米国カルフォルニア州、社長:Paul Brown、以下RMS社)と、コンパニオン診断薬(Companion Diagnostics: CoDx)の共同開発契約を締結しましたので、お知らせします。本契約に基づき、エピジェネティクスに関連するEZH2の遺伝子変異を同定するCoDxの開発を進め、EZH2に変異を有するリンパ腫患者様に対する個別化医療の実現をめざします。

当社は、2011年4月に、Epizyme社とエピジェネティック酵素であるEZH2をターゲットとするがん治療剤の開発に関する戦略的提携契約を締結し、その創出に向けた研究に取り組んでいます。最近のEpizyme社の研究から、EZH2阻害剤が、遺伝子変異を有するEZH2を持ったリンパ腫細胞を死滅させたとの結果が得られ、変異したEZH2が、リンパ腫において治療標的になることが示されました。

当社並びにEpizyme社は、CoDxの開発と商業化に強みを持つRMS社と連携して、リンパ腫患者様の遺伝子変異を同定するためのCoDxを開発し、それを用いてEZH2阻害剤の効果が期待される患者様集団を選択することで、効果的な臨床開発を進めます。

近年、がん領域における遺伝子レベルの研究は著しく進歩しています。当社は、ジェネティクスおよびエピジェネティクスに基づく創薬アプローチを含め、最先端のヒューマンバイオロジーから得られる社内外の情報を最大限活用することで、がん患者様の個別化医療の実現に貢献してまいります。

以上

[参考資料としてエピジェネティクス、EZH2、エーザイの個別化医療に向けた取り組み、
Epizyme, Inc.、Rocheについて添付しています]

<参考文献>

1. エピジェネティクスについて

エピジェネティクス(epigenetics)とは、遺伝子配列の変化を伴うことなく、遺伝子への後天的な作用により選択的な遺伝子機能の活性化と不活性化を導く機構、およびそれを研究する学問領域を指します。後天的遺伝子修飾として、DNA塩基のメチル化による遺伝子の発現の変化や、ヒストンのアミノ酸化学修飾による遺伝子発現の変化(メチル化、アセチル化、リン酸化等)が挙げられます。当社が米国で販売しているDacogen®(一般名:デシタビン)は、DNA メチル化阻害薬であり、米国では骨髄異形成症候群(MDS)治療剤として承認を取得し、患者様に貢献しています。

2. EZH2 について

EZH2は遺伝子発現を調節するヒストンメチル基転換酵素を構成するタンパク質の一つです。EZH2はDNAを核内に収納するヒストンタンパク質群(H1、H2A、H2B、H3、H4)の一つであるH3タンパク質の27番目のリジンをメチル化し、その領域にある遺伝子の転写を抑制します。近年、リンパ腫などにおいて、EZH2の機能を変化させる幾つかの変異(Y641等)が報告されています。

3. エーザイの個別化医療に向けた取り組みについて

ヒューマンバイオロジーの進展に伴い、最適な治療仮説に基づいた創薬並びにコンパニオン診断薬の早期開発による個別化医療への取り組みが進んでいます。当社は、個別化医療につながる治療仮説を求め、世界最先端の科学者とのネットワークを強化し、科学技術の将来動向や社内外における発明・発見に対しての感度を高めています。その代表例として、米国ボストン地区に位置する研究子会社H3 Biomedicine Inc.では、がんに対する遺伝学的アプローチにより疾患固有のターゲットを同定することで新たな治療仮説を見出し、ファースト・イン・クラスの化合物の新規抗がん剤の創出に挑戦しています。また、バイオマーカーの探索研究からコンパニオン診断薬の開発までを可能にする機能を、バイオマーカー・パーソナライズド・メディスン機能ユニットに集約し、オンコロジー創薬ユニットをはじめとする各創薬ユニットとの連携を通じて、個別化医療に向けて取り組んでいます。

4. pizyme, Inc.について

Epizyme, Inc.は、遺伝的要因によるがん患者様に対する新規標的治療薬の新しいクラスであるヒストン・メチルトランスフェラーゼ(HMTs)に対する低分子阻害剤の創薬、開発に注力しています。HMTs活性を介した遺伝子の発現変化は、がんを含めて多くの疾患の根本原因と強く関連しています。Epizyme, Inc.の患者様主導のアプローチは、従来の手法に比べより迅速かつ効果的に、優れた治療薬を創出することを可能にし、個別化医療の将来を示しています。

5. Rocheについて

Roche(以下 ロシュ)はスイスのバーゼルに本社を置き、医薬品ならびに診断薬事業の双方に強みを持つ研究開発型の世界的ヘルスケア企業です。がん、ウイルス感染症、炎症、代謝ならびに中枢神経系領域において他社と一線を画した薬剤を保有する世界最大のバイオテクノロジー企業です。さらに、体外診断薬、がんの組織学的診断の世界的リーダーであり、糖尿病管理のパイオニアです。ロシュでは、個別化医療戦略を掲げ、患者さんの健康、QOL、延命を明確に改善する薬剤や診断薬の提供をめざしています。2011 年、世界各国に80,000 人以上の社員を擁し、研究開発費に約80 億スイスフランを投資しています。ロシュグループの2011 年の売上高は425 億スイスフランでした。ジェネンテック社(米国)は、100%子会社としてロシュグループのメンバーとなっています。また、ロシュは中外製薬(日本)の株式の過半数を保有しています。 さらに詳しい情報はhttp://www.roche.com/をご覧ください。