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ニュースリリース

2012年12月7日

抗がん剤「ハラヴェン®」の局所進行性・転移性乳がんにおけるカペシタビンを比較対照とした第III相臨床試験(301試験)の結果についてサンアントニオ乳癌シンポジウムで発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は抗がん剤「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について、このたび、アントラサイクリンおよびタキサン系抗がん剤が抵抗性または無効となった局所進行性・転移性乳がんに対して実施した、カペシタビンとの比較対照試験(301試験)の結果をサンアントニオ乳癌シンポジウムで発表しましたので、お知らせします。

 本試験は、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤による前治療歴を有する局所進行性・転移性乳がんの患者様1,102人を対象とした、多施設共同、無作為化、非盲検による、カペシタビンとの群間比較試験です。対象の患者様の多くは、転移性乳がんに対する1次療法または2次療法として本試験における治療を受けました。主要評価項目には、「全生存期間(Overall Survival: OS)」と「無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)」を設定しました。

 本試験の結果、ハラヴェン®投与群は、カペシタビン投与群と比較して、統計学的有意差はありませんでしたが、OSを延長する傾向を示しました(ハラヴェン®投与群OS中央値:15.9カ月、カペシタビン投与群OS中央値:14.5カ月、ハザード比:0.879、95%信頼区間:0.770-1.003、p値:0.056)。また独立審査機関の評価にもとづくPFSには両群間で差がありませんでした(ハラヴェン®投与群PFS中央値:4.1カ月、カペシタビン投与群PFS中央値:4.2カ月、ハザード比:1.079、95%信頼区間:0.932-1.250、p値:0.305)。
 本試験では解析計画に従って、試験実施計画書で設定された層別化因子であるHER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type2)の発現状況、および層別化因子には設定していなかったホルモン受容体の発現状況について探索的層別解析を実施しました。その結果、HER2陰性の患者様集団(755人)において、OS中央値はハラヴェン®投与群で15.9カ月、カペシタビン投与群で13.5カ月(ハザード比:0.838、95%信頼区間:0.715-0.983、名目p値:0.030)を示しました。また、HER2並びにエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体がすべて陰性となるアンメット・メディカル・ニーズの極めて高いトリプルネガティブ乳がんの患者様集団(284人)では、OS中央値がハラヴェン®投与群で14.4カ月、カペシタビン投与群で9.4カ月(ハザード比:0.702、95%信頼区間:0.545-0.906、名目p値:0.006)となりました。
 安全性については、両剤ともに既に報告されている副作用と同様の結果でした。主な有害事象(発現率20%以上の事象)として確認されたものは、好中球減少(ハラヴェン® vs. カペシタビン:54.2% vs. 15.9%)、手足症候群(同:0.2% vs. 45.1%) 、脱毛症(同:34.6% vs. 4.0%)、白血球減少(同:31.4% vs. 10.4%)、下痢(同:14.3% vs. 28.8%)、および悪心(同:22.2% vs. 24.4%)でした。

 これらの結果から、ハラヴェン®は、欧米ではより早期の治療法として承認を取得しているカペシタビンとの比較において、主要評価項目は統計学的基準を満たさなかったものの、OSを延長する傾向を示すとともに、HER2陰性並びにトリプルネガティブ乳がんの患者様に対しては臨床的に意味のあるOSの延長が認められました。

 乳がん治療は、新しい抗がん剤の開発により年々進歩していますが、局所再発性・転移性乳がん治療においては、依然として高いアンメット・メディカル・ニーズが存在しています。現在、ハラヴェン®は、乳がんの適応で日本、米国、欧州、シンガポール等、42カ国で承認を取得しています。当社は、今後も本剤の製品価値最大化に向けたエビデンスの創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

[参考資料として、ハラヴェン®、301試験(デザイン概要および層別解析結果)について添付しています]

<参考資料>

1. 「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について

 「ハラヴェン®」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。
 海外で実施された、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のある進行または再発乳がん患者様762人を対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)では、ハラヴェン®投与群は主治医選択治療群と比較し、全生存期間を2.7カ月間延長しました。ハラヴェン®投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、悪心、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)です。またハラヴェン®投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。また、日本で実施された臨床第II相試験でも、前治療歴を有する進行または再発乳がん患者様に対し、良好な抗腫瘍効果と忍容性プロフィールを示しました。
 本剤は、乳がんについて2010年11月に最初の承認を米国で取得し、これまでに欧州、日本、シンガポール、スイス等、42カ国で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月より発売をしています。また、本剤の製品価値最大化に向け、301試験に代表される前治療歴の少ない乳がん、また、軟部肉腫、非小細胞肺がんについても単剤での後期臨床試験が進行中です。さらに、より効率的にがん細胞に薬剤を分布させることをめざしたリポソーム製剤も臨床試験を開始しました。

2. 301試験デザイン概要

 本試験は、局所進行性・転移性乳がんの患者様1,102人を対象として、多施設共同、無作為化、非盲検による、カペシタビンとの群間比較試験として実施されました。本試験では、前治療として術前・術後補助療法を含む3種類以下かつ進行性・転移性乳がんに対する治療として2種類以下の治療歴を有すること、加えて、アントラサイクリンやタキサン系抗がん剤による前治療歴を有する患者様を対象としました。また、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type2)の発現レベル(陽性、陰性および未確認)および実施地域(東欧、北米、中南米、西欧、南アフリカ、アジア)に応じて、患者様が両群で1:1になるよう無作為化されました。ハラヴェン®投与群は、21日を1クールとして、1.4mg/m2/dayを1日目と8日目に静注により投与され、カペシタビン投与群は、21日を1クールとして、2.5g/m2/dayを1日目から14日目まで経口投与されました。

3. 301試験における層別解析の結果

 本試験では解析計画に従って、試験実施計画書で設定された層別化因子であるHER2の発現状況、および層別化因子には設定していなかったホルモン受容体の発現状況についても探索的層別解析を実施しました。今回のサンアントニオ乳癌シンポジウムにおいて発表された層別解析の結果は下表の通りです。

サブグループ ハザード比(95%信頼区間) 全生存期間(OS)中央値(months)
ハラヴェン® カペシタビン
HER2陽性 0.965 (0.688, 1.355) 14.3 17.1
HER2陰性 0.838 (0.715, 0.983) 15.9 13.5
エストロゲン受容体陽性 0.897 (0.737, 1.093) 18.2 16.8
エストロゲン受容体陰性 0.779 (0.635, 0.955) 14.4 10.5
トリプルネガティブ 0.702 (0.545, 0.906) 14.4 9.4
非トリプルネガティブ 0.927 (0.795, 1.081) 17.5 16.6