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ニュースリリース

2012年10月25日

エーザイとオズワルドクルス財団(FIOCRUZ)がマラリアと顧みられない熱帯病に対する治療薬およびワクチン開発に向けて提携

 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、マラリアと顧みられない熱帯病(NTDs: Neglected Tropical Diseases)をターゲットとした治療薬およびワクチン開発を目的として、ブラジルのオズワルドクルス財団 (本部:リオデジャネイロ、プレジデント:Paulo Ernani Gadelha Vieira、以下FIOCRUZ)と包括的な共同研究に向けた提携に合意しました。

 本提携のもと、両者は、当社が創製した化合物について、マラリアやNTDsの治療薬の開発プロジェクトを選定し、共同研究開発を行います。最初のプロジェクトとして、活性型TLR9アンタゴニストである「E6446」およびその類縁化合物を、脳マラリアの治療薬として共同研究開発することとなります。

 FIOCRUZは、ブラジル健康省所管の国立研究機関であり、健康福祉と社会の発展を促進し、科学技術を普及することをミッションとし、ワクチン、医薬品、試薬、診断薬の開発、製造を行うとともに、南米地域のNTDsに対する新薬開発を最も推進している公的機関です。今回の提携は、FIOCRUZの南米地域におけるNTDsの研究開発における強みと、新薬開発型の製薬企業として当社が保有する化合物やナレッジとを融合する新たなパートナーシップモデルであり、マラリアやNTDsの治療薬の早期かつ効率的な開発を実現します。

 当社は、世界の医薬品アクセス改善に向け、政府や国際機関、非営利民間団体などと積極的なパートナーシップを実施しています。その一環として、過去最大の国際官民パートナーシップとして、2020年までにNTD10疾患の制圧をめざす「ロンドン宣言」に参画しています。本宣言のもと、当社は、今回のFIOCRUZとの提携のほか、世界的に供給不足となっているリンパ系フィラリア症治療薬の一つである「DEC(ジエチルカルバマジン)」22億錠を当社インド・バイザッグ工場で生産し、2013年からWHOに無償で提供することを決定しています。

 当社は、新興国や開発途上国に事業が拡大される大グローバリゼーション時代において、これらの国々の健康福祉の向上に貢献し、経済発展や中間所得層の拡大に寄与することは将来に向けた長期投資と位置づけています。今後もNTDsを含む医薬品のアクセス問題に継続的に取り組み、世界の患者様とそのご家族のベネフィット向上に貢献してまいります。

以上

[参考資料として、用語解説、顧みられない熱帯病、脳マラリア、ロンドン宣言、
当社の医薬品アクセスへの取り組みについて、を添付しています]

<参考資料>

1. 用語解説

1) TLR9 (Toll-like receptor 9)

TLRは免疫機構を担う受容体で、細菌などの病原体成分などを認識します。現在10種類以上のTLRが報告されており、TLR9はウイルス由来の非メチル化CpG DNAを認識する受容体であり、細菌、ウイルスからの防御で働く自然免疫系の一つとして知られています。

2. 顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)について

 WHOによると、世界に27億人いるといわれている貧困層のうちの10億人を超える人々がNTDsにより健康を害していると推定されています。NTDsは世界149の国と地域で蔓延しているとされており、このうち、100カ国・地域が、2種類以上のNTDsの蔓延地域となっており、さらに30カ国・地域では6種類以上のNTDsが蔓延しているとされています。NTDsは貧困により蔓延していく一方、多くの国・地域で貧困の原因ともなっています。(NTDs: ブルーリ潰瘍、シャーガス病、嚢尾虫症、デング熱、ギニア虫感染症、包虫症、肝蛭症、睡眠病、リーシュマニア症、ハンセン病、リンパ系フィラリア症、河盲症、狂犬病、住血吸虫症、土壌伝播寄生虫症、トラコーマ、トレポネーマ感染症)

3. 脳マラリアについて

 マラリアは、蚊を媒介とした原虫感染症であり、世界で毎年100万人近くがマラリアで死亡していると推定され、その多くは5歳以下の子供です。脳マラリアは、原虫が寄生した赤血球が脳内の血管などに詰まり血流を阻害することにより発生するもので、マラリア症例の約10%を占め、24~48時間以内の死亡率は25~50%にも達します。既存のマラリア治療薬には耐性が認められており、新薬の開発が切望されています。

4. 顧みられない熱帯病に対するロンドン宣言(London Declaration on Neglected Tropical Diseases)について

 2012年1月30日、世界大手製薬企業13社*1 のCEO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、USAID、DFID、世界銀行、NTDの蔓延国政府がロンドンに一堂に会し、今後10年間で顧みられない熱帯病10疾患*2 を制圧すべく共闘することを表明しました。また、この宣言において、各企業・団体は新たな取り組みをそれぞれ発表しました。これは、今日最大のパートナーシップであり、これまでの組織単位、疾患ごとのアプローチとは異なり、この新しい連携により、制圧に向けて網羅的に、医薬品供給、物流、開発、インフラなどにおける課題に取り組み、より効果的にNTD制圧を成し遂げることを目指しています。

*1  アボット、アストラゼネカ、バイエル、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、エーザイ、グラクソスミスクライン、ギリアド、ジョンソンアンドジョンソン、メルク(Merck KGaA:ドイツ)、MSD、ノバルティス、ファイザー、サノフィ
*2  ギニア虫感染症、リンパ系フィラリア症、失明に至るトラコーマ、睡眠病、ハンセン病、土壌伝播寄生虫症、住血吸虫症、河盲症、シャーガス病、内臓リーシュマニア症

5. 当社の医薬品アクセスへの取り組みについて

 世界には一日2米ドル以下で生活する人が約27億人いると推定され、これらの人々の多くは有効な治療法があるにもかかわらず、必要な治療を受けたり、薬剤を入手したりできない状況にあります。こうした医薬品アクセス問題は、各国の政府、WHOなどの国際機関、NGO、製薬企業などが連携し、解決すべき国際的な課題となっています。当社は、ヒューマン・ヘルスケア理念に基づき、各国政府や国際機関、民間企業や非営利団体(NPO)などとの協力のもと、世界における医薬品アクセス改善に向けて中長期的視点に立った取り組みを展開しています。その一環として、WHOが取り組むリンパ系フィラリア症制圧に向けて、治療薬「DEC(ジエチルカルバマジン)」の無償提供に合意しています。また、シャーガス病に対する新薬開発に貢献すべく、国際的非営利団体との「E1224(ラブコナゾールのプロドラッグ)」の共同開発プログラムを推進しています。詳細は、当社サイトの「医薬品アクセス」をご覧ください(http://www.eisai.co.jp/company/atm/index.html)。