抗てんかん剤「ルフィナミド」日本においてレノックス・ガストー症候群に関する承認申請を提出

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、本日、日本で開発を進めてきた抗てんかん剤「ルフィナミド」(一般名)について、希少疾患であるレノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut syndrome:LGS)に対する抗てんかん薬との併用療法に関する製造販売承認を申請しました。

LGSは小児から発症する重篤な難治性のてんかん症候群のひとつであり、日本における患者数は約3600人と推定されています。また、LGSは複数のてんかん発作型を示すため、発作の制御が極めて困難であり、通常、患者様は数種類の抗てんかん剤を服用しています。LGSに特徴的な強直発作や脱力発作は突然の意識消失を伴うため、患者様はしばしば転倒することがあります。また、発達遅延や行動障害を伴う場合もあることから、患者様とそのご家族のQOLにも影響を及ぼす疾患です。

本剤は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の前身である「未承認薬使用問題検討会議」において、2009年10月に未承認薬開発支援品目に採択され、当社は日本における開発に取り組んでまいりました。日本で実施したLGS患者様を対象とした臨床試験において、本剤は発作の発生頻度を、プラセボと比較して統計学的に有意に低下させ、欧米申請に用いられた海外臨床第Ⅲ相試験と同様の有効性・安全性が確認されました。本剤は、欧州で「Inovelon®」として2007年1月に、米国で「Banzel®」として2008年11月に、「4歳以上の小児および成人におけるLGSに伴うてんかん発作に対する併用療法」の適応で承認を取得し、販売しています。

当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、日本においてもルフィナミドに加え、AMPA受容体拮抗剤「ペランパネル」の開発を進め、製品ラインナップの拡充に取り組んでいます。当社は、難治性てんかんで苦しむ患者様とそのご家族、さらには医療関係者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に貢献することをめざしてまいります。

以上

[参考資料として、レノックス・ガストー症候群、ルフィナミド、海外臨床第Ⅲ相試験、エーザイのてんかん領域での
取り組みについて添付しています]

<参考文献>

1. レノックス・ガストー症候群(LGS)について

LGSは希少かつ重篤なてんかん症候群のひとつであり、その多くは脳症など何らかの脳の器質障害を有し、通常は就学前の小児で発症します。複数のてんかん発作型を示し、発作が頻回に発生することに加え、知的発達の遅れやパーソナリティ障害を伴うことがこの疾患の特徴です。ほとんどの症例で強直発作(筋肉の攣縮)、脱力発作(突然の筋緊張の弛緩)および欠神発作(短時間の意識消失)が認められます。強直間代発作(大発作)やミオクロニー発作(突発的な筋肉の攣縮)などを発現する場合もあります。その中でも強直発作や脱力発作は、転倒発作と呼ばれるLGSに特徴的な発作のひとつで、突然激しく倒れ、しばしば外傷を負います。LGSの患者様は外傷予防のために顔面保護機能付きのヘルメットを装着することもあります。LGSの治療は抗てんかん薬による薬物治療が主体となりますが、薬物治療で発作の抑制が困難な重症例には外科的手術が行われる場合もあります。

2. ルフィナミドについて

ルフィナミドは、新規構造のトリアゾール誘導体であり、てんかん発作の原因となる過剰電荷を帯びている脳内ナトリウムチャネルの活動を調節することでナトリウムチャンネルの不活性状態を延長し、抗てんかん作用を示すと考えられています。当社は、全世界における本剤の独占的開発、使用、製造および販売に関するライセンス契約を2004年2月にノバルティス社と締結しました。本剤は「Inovelon®」として欧州で2007年1月、米国では「Banzel®」として2008年11月に、「4歳以上の小児および成人におけるLGSに伴うてんかん発作に対する併用療法」の効能効果で承認を得ており、現在ではアジア地域も含め発売中です。日本では2011年6月に希少疾病用医薬品に指定されました。

3. 海外臨床第Ⅲ相試験について

4歳~30歳のLGS患者様138人を対象にルフィナミドまたはプラセボを12週間投与する二重盲検比較試験(他の抗てんかん薬との併用療法)が実施されました。維持用量は45mg/kg/日を目安として体重別に1000mg、1800mg、2400mg、3200mgと設定されました。その結果、ルフィナミド投与群では、強直・脱力発作頻度(発作頻度変化率、ルフィナミド群:-42.5%、プラセボ群:1.4%、p=<0.0001)および総発作頻度(発作頻度変化率、ルフィナミド群:-32.7%、プラセボ群:-11.7%、p=0.0015)がプラセボ群と比較して有意に減少しました。

また、発現頻度の高かった有害事象は、傾眠、嘔吐、発熱および下痢でした。

4. エーザイのてんかん領域での取り組みについて

当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、レノックス・ガストー症候群の治療剤である「Inovelon®/Banzel®」に加え、部分てんかん治療剤として「Zonegran®」(創製・ライセンス元:大日本住友製薬、Na/Caチャネル阻害等に基づく抗てんかん剤:欧州、米国、アジア)および「Zebinix®」(同:BIAL-Portela&Ca社、電位依存性Naチャネル阻害に基づく抗てんかん剤:欧州)、てんかん重積状態などの治療に用いる「ホストイン®」(販売提携:ノーベルファーマ、フェニトインの水溶性プロドラッグ:日本)を販売しています。

また、自社創製のAMPA受容体拮抗剤「Fycompa®(一般名:ペランパネル)」について、新規作用機序を有する部分てんかんの治療剤として欧米で新薬承認申請を行い、2012年7月に欧州で承認を取得しました。「Fycompa®」は、日本では部分てんかんを対象とした臨床第Ⅲ相試験の段階にあり、さらなる適応の拡大をめざし、全般てんかんについても国際共同治験として臨床第Ⅲ相試験を実施しています。当社は、てんかん領域に豊富な製品ラインナップを持ち、複数の治療オプションを提供することで、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に貢献してまいります。