DNAメチル化阻害剤 「DACOGEN®」注射剤の急性骨髄性白血病に対する第Ⅲ相臨床試験結果がASCOで発表される

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、DNAメチル化阻害剤「Dacogen®」(一般名:decitabine) 注射剤の急性骨髄性白血病(AML)に対する第Ⅲ相臨床試験(DACO-016試験)結果が、2011年米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会で口頭発表されたことを、公表しました。AMLは、治療選択肢が限られている重篤な血液がんの一種です。

この試験は、485名の患者様を対象とした多施設、非盲検試験で、新たに診断された原発性および二次性AML高齢患者様における「Dacogen®」と、患者様選択療法(支持療法もしくは低用量cytarabine)を比較対照し、全生存期間(Overall Survival)を主要評価項目としました。

試験の解析の結果、プロトコールで定義された臨床的意義のあるカットオフ値(死亡数が396名、81.6%) に達した時点において、「Dacogen®」は対照群との比較で全生存期間を延長する結果を示しましたが、統計学的な解析では有意の判定とはなりませんでした。具体的には、「Dacogen®」投与群では、生存期間中央値が7.7カ月(95%信頼区間(CI):6.2、9.2)であったのに対して、患者様選択療法群では、生存期間中央値が5.0カ月(95%CI:4.3、6.3)でした(ハザード比(HR):0.85、p値:0.108)。

さらに、1年間の患者様フォローアップに基づいて実施された最新解析結果において、「Dacogen®」投与群は上記と同等の全生存期間を延長するベネフィットを実証しました。このフォローアップ解析は、死亡者数が446名(92%)となった時点で実施され、「Dacogen®」投与群では、生存期間中央値が7.7カ月(95%CI:6.2、9.2)であったのに対して、患者様選択療法群では、生存期間中央値が5.0カ月(95%CI:4.3、6.3)でした(HR:0.82、名目p値:0.037)。

本試験で観察された有害事象は、すでに確立されている「Dacogen®」の安全性プロファイルと同等であり、両群の間に大きな差異は認められませんでした。最も多く報告されたグレード3またはグレード4の有害事象は、血小板減少症(「Dacogen®」投与群:40%、患者様選択療法群:32%、cytarabine投与患者様:35%、支持療法患者様:14%)、貧血(34%、25%、27%、14%)、好中球減少(32%、42%、20%、3%)、発熱性好中球減少(32%、22%、25%、0%)でした。

この結果に基づき、「Dacogen®」は、高齢者AML患者様に対して一般に認められた標準療法と比較して、安全性に差異はなく、特に治療手段が限定的である当該患者様群にとって臨床的に重要な全生存期間を延長する傾向が認められた旨が、本年度ASCO年次総会にて発表されました。

以上

[参考資料として、DACO-016試験及び「Dacogen®」について添付しています]

<参考資料>

1. DACO-016試験について

DACO-016試験は、新たに原発性および二次性急性骨髄性白血病(AML)と診断された65歳以上の患者様で細胞遺伝的に中間リスクおよび予後不良と判定された方を対象に、「Dacogen®」と医師助言による患者様選択療法(支持療法もしくは低用量cytarabine) を比較対照した多施設、無作為化、非盲検第Ⅲ相臨床試験です。試験参加患者様485名のうち、242名が「Dacogen®」投与群に、243名が患者様選択療法(支持療法もしくは低用量cytarabine)投与群に割りつけられ、前者に対しては4週間を1クールとし、各クールで「Dacogen®」として20mg/m2を1日1回1時間かけて行う静脈内注射投与を5日間連続で行いました。投与は患者様にベネフィットが見られる限り繰り返されました。cytarabine投与群に対しては、20mg/m2を1日1回10日間連続皮下注射投与、4週間を1クールとし繰り返されました。投与期間中央値は、「Dacogen®」投与群が4.4カ月、cytarabine投与群が2.4カ月でした。

2. 「Dacogen®」について

「Dacogen®」 は、前治療歴の有無を問わず、FAB(French-American-British)分類(不応性貧血、鉄芽球性不応性貧血、芽球増加型不応性貧血、移行期の芽球増加型不応性貧血、および慢性骨髄単球性白血病)のいずれかに分類され、国際予後判定システム(International Prognostic Scoring System :IPSS)による重症度分類が中間リスク1群、中間リスク2群、 ハイリスク群の原発性および二次性骨髄異形成症候群(MDS)の適応で、米国で承認を取得しています。