米国子会社 「H3 Biomedicine Inc.」 次世代のがん治療薬の創出と開発に着手がんのゲノム情報と先端創薬化学を活用する新会社設立

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに新たな研究開発機能を持つ子会社「H3 Biomedicine Inc.」(以下、H3 Biomedicine)を設立し、研究活動を開始した、と発表しました。H3 Biomedicineは、1)がん患者様の遺伝子的特徴に基づいた個別化医療を可能にする創薬標的の同定を行う、2)これら創薬標的に対して、現代創薬化学の進歩に基づく技術を活用し、安全性と有効性の高い新規化合物を創出する、という2つの研究方針に基づき、ブレイクスルーとなるがん治療薬の創出をめざします。ヒトのがんにおける近年の遺伝子レベルでの理解の進展は目覚しく、H3 Biomedicineはこれら最新の知見を活用し、個別化医療につながる新規がん治療薬の創出を行います。

H3 Biomedicineは、当社の米国事業会社であるEisai Inc.の子会社として設立されました。Eisai Inc.は、H3 Biomedicineに対して10年レンジの長期間で2億ドル程度の探索研究資金を負担し、さらにはH3 Biomedicineが創出した化合物の臨床開発に要する資金をサポートします。また、H3 Biomedicineは、その探索研究機能に加えて当社グループの創薬研究機能へのアクセスや連携を行うとともに、昨年11月にEisai Inc.が戦略的創薬研究契約を締結した、フォーマ・セラピューティックス社の技術も活用し、難易度の高い創薬標的に対してファースト・イン・クラスの化合物の創出に挑戦してまいります。

H3 Biomedicineのサイエンティフィック・アドバイザーには、著名なStuart L. Schreiber教授とTodd R. Golub教授が参画します。ハーバード大学およびマサチューセッツ工科大学の共同施設であるBroad Instituteの設立メンバーであるSchreiber教授とGolub教授は、医学研究の方法論の変革に携わってきました。

Schreiber教授による研究は、化学、生物学、医学に多大なインパクトを与えてきました。その成果の一つとして、Schreiber教授の研究よって発見されたがん創薬標的をターゲットとする3種類の抗がん剤がすでに多くの国で承認されています。また、Golub教授は、がん関連遺伝子解析研究の世界的リーダーであり、がんの医学が直面する生物学的・臨床的課題を解明するためにヒトゲノム情報を用いることに焦点を当てて研究を行っています。Golub教授は、がんの生物学および抗がん剤研究にヒトゲノム情報を活用したアプローチを行った先駆者です。

H3 Biomedicineは、次世代のブレイクスルーとなるがん治療薬を創出するために、ワールド・クラスのチームを早急に組織する予定です。

がんのゲノム情報に対する理解の向上と低分子科学の進歩は、次世代のがん治療薬を創出するための基盤として機能することが期待されます。H3 Biomedicineは、特定のがんが有する遺伝的特徴をもとに創薬を行うというディシプリンド・アプローチにより、特定のがんに高い有効性が期待できるターゲットに対する薬剤の開発をめざします。あわせて、バイオマーカーを使用した臨床開発を追求し、がん患者様の治療における個別化医療を志向します。また、このバイオマーカーを用いた創薬研究によって、臨床開発の期間短縮とコスト削減がもたらされることが期待されます。

当社は、オンコロジー領域を最重点領域と位置付け、低分子抗がん剤、抗体医薬、標的医薬、ワクチン療法や支持療法など可能性のある治療法の開発を加速させていきます。H3 Biomedicineの設立を通して、がん関連遺伝子の解明と有機生物化学の手法から生み出される新しい技術により創製される治療薬をがん治療の選択肢の1つに加えることで、患者様とそのご家族に貢献してまいります。

以上

[参考資料として、H3 Biomedicine Inc.の概要を添付しています]

<参考資料>

1. H3 Biomedicine Inc. について

H3 Biomedicine Inc.は、がん治療薬の創出と開発に特化したバイオファーマです。最新の合成化学、ケミカルバイオロジー、ヒト遺伝子情報を活用して、患者様の生活の質の改善を目標とした次世代のがん治療薬を創出することをめざします。当社の米国子会社Eisai Inc.の子会社として、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置きます。

【会社概要】

会社名: H3 Biomedicine Inc.
所在地: 米国マサチューセッツ州ケンブリッジ
社長: 吉松賢太郎
事業内容: 医薬品の研究開発
資本金: 100万米国ドル
設立日: 2010年12月13日(現地時間)