新規抗がん剤E7389、スイスで局所進行・転移性乳がんを適応として承認申請

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)のスイス子会社であるエーザイ・ファルマ・アーゲー(本社:スイス チューリッヒ、取締役:フォルカー・キンドル)は、新規抗がん剤 E7389(一般名:eribulin mesylate)について、211試験(フェーズⅡ試験)等の試験結果に基づき局所進行・転移性乳がんの適応で、スイスSwissmedicに承認申請を行いました。

E7389は、当社が創製した新規化合物であり、細胞分裂を含む様々な細胞内プロセスに関与する微小管の伸長を阻害することで細胞周期を停止させる、微小管ダイナミクス阻害剤です。E7389は、クロイソカイメンから初めて単離された天然由来化合物ハリコンドリンBの合成誘導体です。

当社は、がん領域を重点領域と位置づけ研究開発・販売に積極的な事業活動を推進しています。今回のE7389の承認申請は、当社が創製した抗がん剤としては初めての申請となります。現在、乳がんを対象とした臨床試験は、欧米でフェーズⅢ試験、日本でフェーズⅡ試験が進行中であり、2009年度中に日本、米国、欧州での同時申請をめざしています。

乳がんのほか、非小細胞肺がん(米国)、前立腺がん(欧米)、肉腫(欧州)を対象としたフェーズⅡ試験が進められています。

今回の申請時に提出した211試験は、アントラサイクリン、タキサン、およびカペシタビンを含む前治療歴を有する局所進行・転移性乳がんを対象として実施されました。

有効性に関しては、E7389の投与を受けた291例のうち、第三者評価による奏効率(Overall Response Rate、以下ORR)は9.3%であり、全て部分奏効(Partial Response、以下PR)でした。また、病勢安定(Stable Disease、以下SD)は45.7%とほぼ半数の症例で認められ、臨床的有用性(CR+PR+6ヵ月以上のSD)は17.2%でした。治験責任医師による評価ではORRは14.1%であり、2例で完全奏効(Complete Response、以下CR)を認めました。

安全性に関しては、E7389の投与を受けた291例のうち、高い頻度で報告されたグレード3(高度)またはグレード4(生命を脅かす、または活動不能)の有害事象は、好中球減少症(54%)、白血球減少症(14%)、および脱力感/疲労感(10%、グレード4は認めず)、発熱性好中球減少症(5.5%)でした。

また、抗がん剤治療において多くの患者様のQOLを低下させると言われる末梢神経障害については、グレード3が5.5%で、グレード4は認めず、良好な忍容性プロファイルが示唆されています。

乳がんは、女性におけるがん疾患の中でも患者様の数が多いと言われており、乳がんの罹患率は、スイスでは人口10万人あたり約137人と推定されています。乳がんの治療法は年々進歩していますが、まだ十分に満足いくものではなく、有用な治療法や抗がん剤の開発が期待されています。

当社は、がん患者様のアンメット・メディカル・ニーズを満たすために、がん関連疾患領域において、E7389をはじめとした新規抗がん剤やがん患者様のQOLを向上させるための支持療法となる治療剤の開発に注力しています。これらの取り組みにより、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

[参考資料としてE7389の概要の説明を添付しております]

<参考資料>

■「E7389」(一般名:eribulin mesylate)について

E7389は、当社が創製した新規化合物であり、細胞分裂を含む様々な細胞内プロセスに関与する微小管の伸長を阻害することで細胞周期を停止させる、微小管ダイナミクス阻害剤です。E7389は、クロイソカイメンから初めて単離された天然由来化合物ハリコンドリンBの合成誘導体です。

ハリコンドリンBは、1986年にクロイソカイメンから初めて単離され、優れた抗腫瘍効果を示すものの、複雑な化学構造を有するため量的供給が困難でした。しかし、1992年のハリコンドリンBの全合成を機に、1992年より米国ボストン研究所で新規抗がん剤開発へのアプローチが開始されました。その結果、ハリコンドリンBの活性構造部分が同定され、化学的・生物学的に最適化されたハリコンドリンBの誘導体であるE7389が合成されました。