ここから本文です

ニュースリリース

(2006年3月16日) 印刷用(PDF 49KB)

海外における塩酸ドネペジルの脳血管性痴呆臨床試験の結果について


 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、塩酸ドネペジル(製品名:アリセプト(R))の脳血管性痴呆(以下、VaD)患者を対象とした臨床試験(E2020-A001-319以下319試験)を実施しました。
 その結果、塩酸ドネペジル投与群とプラセボ投与群との比較において、認知機能では統計的に有意な改善がみられました。全般臨床症状では、統計的に有意な改善が認められませんでした。塩酸ドネペジル投与群はプラセボ投与群に比べ、有害事象全体の発生頻度においては顕著な差は認められませんでした。死亡率ではプラセボ投与群に比して、塩酸ドネペジル投与群が高い値を示しました。当社はこれらの安全性情報を、当社の標準作業手順に従い、各国の規制当局および塩酸ドネペジルの臨床試験担当医師に報告しました。
 なお、米国、日本、EU諸国においては、塩酸ドネペジルは軽度および中等度のアルツハイマー型痴呆(認知症)治療剤としてのみ適応が認められており、VaDの適応は認められておりません。インド、ニュージーランド、フィリピン、ルーマニア、韓国、タイにおいては、VaDの適応症も認められています。

 今回の臨床試験は、事前にアルツハイマー病と診断されていない、VaD患者のみを対象とし、海外9カ国において実施されました。本試験は多施設、無作為化二重盲検試験であり、患者は塩酸ドネペジル(5mg)投与群またはプラセボ投与群に2対1の比率で割り付けられ、1日1回、24週間投与されました。これまでのVaDを対象とした臨床試験と同様、本試験参加者の大多数は脳卒中あるいは心疾患の病歴を持ち、これらの疾患の治療のため一種類以上の他の薬剤を服用していました。

 有効性に関する主要評価項目の結果においては、塩酸ドネペジル投与群はプラセボ投与群に比べ、認知機能の主要な指標であるV-ADAS-cog*において有意な改善を示しました。一方、全般臨床症状を示すCIBIC-plus*においては、統計的な有意差は認められませんでした。なお、6つの副次的な評価項目のうち、認知機能を評価する項目(ADAS-cog、MMSE)では、統計的に有意な結果が得られました。これらの結果は、既に学会などにおいて発表したVaDに関する塩酸ドネペジルの2つの臨床試験(E2020-A001-307 以下307試験、E2020-A001-308 以下308試験)の結果と概ね一致するものです。

 今回のVaDを対象とした臨床試験では、塩酸ドネペジル投与群とプラセボ投与群の間には死亡率に差がありました。塩酸ドネペジル投与群では648例中11例に死亡例が認められましたが、プラセボ投与群では326例中に死亡例はありませんでした。その概要は以下のとおりです。
  • 今回の319試験における塩酸ドネペジル投与群の死亡率(1.7%)は、過去2つのVaD患者を対象とした臨床試験(307試験と308試験)の合計における塩酸ドネペジル投与群(1.7%)と同等であり、VaD患者の死亡率に関する疫学的統計との比較においても低い値です。
  • 今回の319試験において示されたプラセボ投与群の死亡率(0.0%)は、過去実施した2つの臨床試験(307試験と308試験)におけるプラセボ投与群(2.0%)との比較においても、またVaD患者の疫学的統計との比較においても低い値であり、今回の試験の対象患者の年齢・病態を考慮すると、プラセボ群において死亡例がないというのはまれな事象です。
  • VaDの3つの臨床試験(307試験、308試験、319試験)を合計した場合も、塩酸ドネペジル投与群(1.7%)とプラセボ投与群の死亡率(1.1%)の間に統計的に有意な差はありません。
  • VaD患者は、脳卒中や心筋梗塞などの血管性有害事象を併発する危険性があることから、3つのVaD試験それぞれおよび合計に関して、こうした症状についての付加的な解析も行われました。どの解析結果においても、プラセボ投与群と塩酸ドネペジル投与群との比較で、血管性疾患発生のリスクに統計的な有意差は認められませんでした。

 今回のVaDを対象とした臨床試験(319試験)において、塩酸ドネペジル投与群とプラセボ投与群では、有害事象全体の発生頻度に差はありませんでした。有害事象については、主に塩酸ドネペジルの作用メカニズムに起因するものであり、5%以上の発現率およびプラセボに比して2倍の頻度で発生したものは、腹痛(5.1%対2.5%)、食欲不振(5.7%対2.8%)および悪心(9.9%対4.3%)でした。

 当社は、塩酸ドネペジルの脳血管性痴呆症に関する開発について、引き続き各国の規制当局と協議してまいります。

 なお、当社は各国の規制当局に対し、今回の319試験の結果は塩酸ドネペジルの安全性に対する評価を変えるものではなく、承認されている適応症における有用性は引き続き良好であるとの見解を報告しています。
以上

* V-ADAS-cog: Vascular-Alzheimer's Disease Assessment Scale - cognitive subscale
* CIBIC-plus - Clinician's Interview-Based Impression of Change with caregiver input

[参考資料:1.日本におけるVaD試験、2.アルツハイマー型痴呆を対象とした臨床試験]


<参考資料>
  1. 日本におけるVaD試験について
    日本ではVaDを対象とした塩酸ドネペジルの臨床試験は実施しておりません。

  2. アルツハイマー型痴呆(認知症)を対象とした臨床試験
    これまでにアルツハイマー型痴呆(認知症)を対象とした塩酸ドネペジルの24週間投与プラセボ対照臨床試験は、国内外で合計9試験が実施されています。これらの試験を合計した結果、死亡率は塩酸ドネペジル投与群が1.9%、プラセボ投与群が3.1%でした。